コミュニケーションや食事を助ける言語聴覚士とは?
言語聴覚士(げんごちょうかくし、ST:Speech-Language-Hearing Therapist)は、ことばの発達に遅れがある子どもから、病気や事故でことばや飲み込みに困難を抱えた大人まで、幅広い年齢の人々をサポートする専門家です。コミュニケーションや食事を助けることで、その人らしい生活を送れるように支援します。
言語聴覚士の最大の魅力は、人の人生を大きく変えることができる点です。例えば、これまで言葉を話すのが難しかった子が、自分の気持ちを言葉で伝えられるようになった時。事故で飲み込みが難しくなり、大好きな食事を楽しめなくなっていた人が、再び安全に食事ができるようになった時。その瞬間に立ち会える喜びは、何物にも代えがたいものです。人と深く関わり、その人の人生の目標を一緒に見つけ、達成に向けて伴走する仕事です。病院、学校、介護施設など、さまざまな場所で活躍でき、人々の生活に寄り添い、笑顔を引き出すことができる、とてもやりがいのある仕事と言えるでしょう。
言語聴覚士の仕事とは?
言語聴覚士の仕事は、大きく分けて「ことば」と「食べる力」をサポートすることです。
ことばのサポート
- 子どものことばの発達支援 発達に遅れのある子どもが、自分の気持ちを言葉で伝えられるように、遊びを通して言葉を引き出す訓練をします。
- 大人の失語症リハビリ 脳卒中などで言葉を忘れてしまった人に対し、絵カードを使ったり、音読をしたりして、再び言葉を取り戻すための訓練をします。
食べる力のサポート
- 嚥下(えんげ)リハビリ 病気や高齢で食べ物や飲み物をうまく飲み込めなくなった人に対し、口や舌の動きをスムーズにする訓練をします。ゼリーやとろみをつけた飲み物から始めて、安全に食事ができるようにサポートします。
言語聴覚士の魅力!
- 人の人生を豊かにできる 「ありがとう」と感謝されることが多く、人の役に立っていることを直接感じられます。言葉を話せるようになったり、食事ができるようになったりする姿を見るのは最高の喜びです。
- 専門的な知識とスキルを活かせる 医学、心理学、言語学など、幅広い知識を使って問題を解決する専門性の高い仕事です。
- 多様な働き方がある 病院、福祉施設、学校、保健所など、さまざまな場所で働くことができます。
- チームで働く 医師や看護師、理学療法士など、他の専門家と協力して患者さんをサポートします。みんなで目標を共有しながら進めるので、達成感も大きいです。
- 平均的な年収 日本での平均年収は約400万円〜500万円とされています。経験や勤務先によって変わりますが、専門職として安定した収入を得られる魅力があります。
言語聴覚士になるには?
- ステップ1 中学校・高校で、生物や化学などの理科系科目をしっかり勉強しましょう。人の体のしくみや脳の働きを学ぶ上で、とても役に立ちます。
- ステップ2 言語聴覚士の養成校(大学、短期大学、専門学校)に進学します。どんな学校があるか、インターネットで調べてみましょう。
- ステップ3 学校で、言語や聴覚、嚥下について専門的に学びます。病院などで実習も行います。
- ステップ4 卒業後、言語聴覚士の国家試験に合格する必要があります。合格率は毎年60%〜70%ほどです。
- ステップ5 国家試験に合格すれば、晴れて言語聴覚士として働くことができます。
この分野で有名なプロフェッショナル
スーザン・クライン
アメリカの言語聴覚士であるスーザン・クラインは、特に自閉症の子どもたちのコミュニケーション支援において世界的に知られています。彼女が開発した「絵文字交換式コミュニケーションシステム(PECS:Picture Exchange Communication System)」は、言葉を話すことが難しい子どもたちが、絵カードを使って自分の要求や気持ちを伝えられるようにする画期的な方法です。このシステムは、世界中の特別支援学校や療育施設で導入され、多くの子どもたちがコミュニケーションの喜びを体験するきっかけとなりました。彼女の研究と実践は、言語聴覚士の役割を広げ、コミュニケーションに困難を抱える人々の可能性を大きく広げたのです。
マーケィングの観点から見ると?
言語聴覚士は、将来、ますますグローバルに活躍する仕事になるでしょう。世界中で高齢化が進み、脳卒中や認知症などによる嚥下障害や失語症を抱える人が増えています。また、発展途上国では、生まれつきことばや聞こえに困難を抱える子どもたちへの支援がまだ十分ではありません。
遠隔地の人々をサポートするオンラインリハビリや、AIを活用して個々の状態に合わせた訓練プログラムを開発するなど、テクノロジーの進化と共に仕事の可能性はさらに広がります。将来的には、国境を越えて専門知識を共有したり、国際的な支援活動に参加したりする機会も増えていくでしょう。
自由研究の例
テーマ 「家族や友達に、言葉を使わずに気持ちを伝えよう!」
「もし、言葉が話せなくなったら、どんな工夫をして気持ちを伝えますか?」
- 実験 家族や友達に、言葉を使わずに「お腹が空いた」「寒い」「嬉しい」などの気持ちを伝えてみましょう。
- ジェスチャー
- 絵を描く
- 文字を書く
- 表情を変える
- 声を出さずに音を出す
- 記録
- どの方法が一番伝わりやすかったですか?
- なぜ、その方法が伝わりやすかったのでしょうか?
- 相手は、どんな反応をしましたか?
- 考察 言葉を使わないコミュニケーションの難しさや、工夫することで伝わる面白さについて考えてみましょう。
まとめ
言語聴覚士は、ことばや食べる力を通して、人の人生に深く関わる素晴らしい仕事です。 誰かと話したり、美味しいものを食べたりすることは、私たちの毎日の生活に欠かせない喜びです。この喜びを、病気や障害で失ってしまった人々に、再び届けるのが言語聴覚士の役割です。 人と関わるのが好き、誰かの役に立ちたい、そんな気持ちがあるなら、言語聴覚士という仕事について、もっと調べてみてください。きっと、あなたの未来の選択肢が広がるはずです。
関連書籍
身近な仕事について考えてみよう!
- 仕事のことを通じて学んだこと、楽しかったこと、難しかったことを書いてみましょう。
- テーマについての新しい発見や、自分が感じたことをまとめます。
- 今後、さらに調べてみたいことや、他の人に教えたいことがあれば、それも書いてみましょう。