教育制度の特徴
モーリタニアの教育の大きな特徴は、イスラムの教えを深く学ぶ伝統的な教育と、私たちが知っているような近代的な教育の二つの流れがあることです。
多くの子供たちは、物心がつく2歳頃から「マハドラ」と呼ばれる伝統的なイスラム学校に通い始めます。ここでは、イスラム教の聖典「コーラン」の言葉を暗唱し、イスラムの教えやアラビア文字の読み書きを学びます。これは、モーリタニアの人々の生活や文化の土台となる、とても大切な学びです。
そして6歳になると、政府が定めた近代的な小学校に入学します。ここでは国語(アラビア語)や算数、理科などに加えて、マハドラと同じようにイスラム教の授業も義務付けられています。かつてはフランスの植民地だった影響でフランス語も広く使われてきましたが、近年は国の公用語であるアラビア語での教育に力を入れる「アラビア語化」が進んでいます。
このように、モーリタニアの子供たちはイスラムの伝統的な価値観と、世界で活躍するための近代的な知識の両方を学んでいるのです。
教育方法
マハドラでの勉強はとてもユニークです。先生が読み上げるコーランの一節を、子供たちが木の板に書かれたお手本を見ながら、声を合わせて何度も何度も繰り返し唱えます。美しいアラビア文字を覚え、その響きと意味を体に染み込ませていく、古くから伝わる学びのスタイルです。
一方、近代的な小学校の教室では、先生が黒板にチョークで文字を書き、子供たちがノートに書き写すという、日本の学校と似た光景が見られます。しかし、都市部から離れた地域では、一つの教室にたくさんの子供たちがぎゅうぎゅう詰めで勉強していたり、教科書やノートが足りなかったりすることも少なくありません。厳しい環境の中でも、子供たちは真剣な眼差しで先生の話を聞いています。
教育への取り組みや支援
モーリタニア政府は、すべての子供たちが教育を受けられるように力を入れていますが、国の力だけでは学校や先生を十分に増やすのは大変です。そこで、世界中の国々や団体がモーリタニアの子供たちを応援しています。
例えば、日本(JICA)は、首都ヌアクショットにたくさんの小学校の教室を建設する支援をしました。これにより、藁でできた教室や、一つの教室に100人以上もの生徒がいるような状況が改善され、子供たちがより良い環境で学べるようになりました。
また、ユニセフは、お隣の国マリから逃れてきた難民の子供たちのためにテントの学校を建てたり、貧しさから路上で物乞いをしなければならないマハドラの子供たちを保護したりする活動をしています。他にも、世界中のNGOが里親制度を通じて貧しい家庭の学費を支援するなど、たくさんの「応援団」がモーリタニアの子供たちの未来を支えています。
子供達の1日の過ごし方
モーリタニアの子供たちの生活は、住んでいる場所によって大きく異なります。
【砂漠の遊牧民、ファティマさん(8歳)の一日】 夜明け前、お祈りの声と共に一日が始まります。朝ごはんを食べると、ヤギやラクダの世話をするのがファティマさんの仕事です。日中は、動物たちが食べる草を探して、広大な土地を何時間も歩き回ります。また、生活に欠かせない水を汲むために、遠くの井戸まで何往復もします。彼女にとって、学校に通うことはまだ遠い夢です。
【首都の小学生、アハマドくん(10歳)の一日】 朝、学校へ行き、アラビア語や算数の授業を受けます。放課後は、友達とサッカーをして遊んだり、家に帰って宿題をしたりします。日が暮れると、家族と一緒に夕食をとり、テレビを見たりおしゃべりをしたりして過ごします。しかし、彼が通う学校も生徒数が多く、十分な教育を受けるのは簡単ではありません。
教育と社会の関係
モーリタニアでは、良い教育を受けることが、より良い仕事に就き、安定した生活を送るための「未来への切符」だと考えられています。特に、貧困から抜け出すためには教育が不可欠です。
しかし、その大切な切符を手に入れるのは簡単ではありません。地方では、学校が遠すぎたり、女の子は家の手伝いを優先されたりして、学校に通えない子供たちがまだたくさんいます。また、近年の干ばつの影響で、多くの人々が仕事を求めて砂漠地帯から首都に集まり、都市の人口が急増。学校や病院の整備が追いつかず、新たな問題も生まれています。教育の機会の格差が、社会全体の格差につながっているのです。
国が抱える教育の課題と未来
モーリタニアの教育は、たくさんの課題を抱えながらも、未来に向かって進んでいます。
- 地域格差 都市部と、砂漠や農村地帯との教育環境の差が非常に大きいのが現状です。地方に学校を増やし、誰もが学べる環境を整えることが急務です。
- 貧困 貧しさのために、勉強をあきらめて働かなければならない子供たちがいます。教育の機会を守るためには、貧困問題そのものに取り組む必要があります。
- 教育の質 先生の数や専門知識が不足していたり、教科書や教材が足りなかったりします。子供たちの「学びたい」という気持ちに応えられる、質の高い教育が求められています。
これらの課題に対し、モーリタニア政府は国際社会と協力しながら、学校建設や教員養成を進めています。教育によって国を発展させ、平和で安定した社会を築くこと。それが、モーリタニアが描く未来像です。
教育と文化や価値観の関係
驚異的な記憶力と「言葉」を重んじる文化
モーリタニアでは、聖典コーランを一字一句間違えずに暗記することが、非常に徳の高いこととされています。マハドラでは、木の板に書かれたお手本を、ひたすら声に出して読み、体に染み込ませるようにして覚えていきます。この教育によって、モーリタニアの人々は驚異的な記憶力を養います。 この影響で、モーリタニアには文字に書かれた記録以上に、人が記憶し、口で伝える「言葉(口承)」そのものを重んじる文化が根付いています。人の家系や歴史的な出来事を、何世代にもわたって正確に記憶している人が尊敬され、約束事も「言った言葉」が何よりの証拠となるのです。
旅人を温かく迎える「おもてなしの心(ホスピタリティ)」
イスラムの教えには、旅人や困っている人を助けることは善い行いであるという考えが深く根付いています。マハドラの教育を通じて、子供たちはこの助け合いの精神を学びます。 これが、見知らぬ旅人にさえ自分の家のように食事や寝床を惜しみなく提供する、モーリタニアの有名なおもてなしの文化につながっています。特に、甘く煮出したミントティーを何度も振る舞うのは、歓迎の最大の証です。これは、厳しい砂漠の環境で、人々が互いに助け合わなければ生きていけなかった歴史的な知恵が、教育によって文化として定着した美しい例と言えるでしょう。
「百万人の詩人の国」を育む豊かな言語感覚
モーリタニアは「百万人の詩人の国」という異名を持つほど、人々は詩を愛し、楽しむ文化を持っています。その背景にもマハドラの教育があります。コーランは非常にリズミカルで美しいアラビア語で書かれており、子供たちは幼い頃からその詩的な響きに親しみます。 そのため、日常会話でもことわざや詩的な表現が豊かに使われ、即興で詩を詠んで知性や教養を表現することは、人々にとって最高の娯しみの一つです。高度な記憶力と言語能力が求められるこの文化は、まさにモーリタニアならではの教育の賜物です。
まとめ
サハラ砂漠の厳しい自然環境や、貧しさという大きな壁に直面しながらも、モーリタニアの子供たちは目を輝かせて「学びたい」と願っています。木の板に文字を書き、声を張り上げてコーランを学ぶ姿。ぎゅうぎゅうの教室で、必死に先生の言葉を聞く姿。その姿は、私たちに「学べること」の本当の価値を教えてくれます。
この記事を読んでくれた君が、当たり前のように学校に行き、教科書を開き、友達と勉強できることが、どれだけ恵まれていて幸せなことか、少しだけ感じてもらえたら嬉しいです。そして、遠い砂漠の国で頑張る子供たちの未来を、心の中でそっと応援してあげてください。その気持ちが、世界をより良くする小さな一歩になるはずです。
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