EtoC – Experience to Consumer
Experience to Consumer(EtoC)の概念
EtoCは、株式会社SHISEILABOが提案する概念です。Experience to Consumerの略称、「体験」を顧客に提供する概念です。「体験」を販売するのではなく、「体験」の提供で認知と差別化を図ることが最大の狙いです。「体験を通じてお客さんに商品やサービスを知ってもらうこと」を意味しています。
EtoC (Experience to Consumer) の価値を示す例題
ここでは、車屋さんが車以外の体験イベントを提供することで新しいお客さんを獲得する流れを説明します。
車屋さんの体験イベント
ストーリー
車屋さんと体験イベント
ある日のこと、街の車屋さん「(仮)かっこいいカーショップ」は、もっと多くの人にお店のことを知ってもらいたいと考えました。そこで、車を売るだけでなく、お客さんに楽しい体験をしてもらうために、特別な焼きそばイベントを開くことにしました。
体験イベント
車屋さんの焼きそば祭り
イベントの準備
車屋さんは、お店の駐車場に大きなテントを設置し、美味しい焼きそばを作るための大きな鉄板や材料を用意しました。お祭りのような雰囲気を出すために、飾り付けや音楽も準備しました。
- 参加者の募集 – 車屋さんは、近所の学校や商店街で「焼きそば祭り」のチラシを配り、InstagramなどのSNSや会社のホームページでイベント情報を発信しました。「おいしい焼きそばを食べに来てください!車の試乗もできます!」と書かれた内容に、多くの家族が興味を持ちました。
イベント当日
- 体験の提供 – イベントの日には、たくさんの家族が車屋さんに集まりました。子どもたちは焼きそばを食べながら、お店の中を見て回ったり、親たちは車を見たりして楽しみました。美味しい焼きそばを食べながら、みんなで楽しい時間を過ごしました。
イベントの効果
お客さんが興味を持つ
焼きそばを食べた後、車屋さんのスタッフは参加した家族にお店の車を紹介しました。「こんな素敵な車がありますよ。試乗もどうぞ!」と、試乗体験を勧めました。
新しいお客さんの獲得
イベントに参加した人たちは、「(仮)かっこいいカーショップ」はただ車を売っているだけじゃなく、美味しい体験も提供してくれる「地域に根差したホスピタリティのあるお店」なんだと感じました。「こんなお店なら、次に車を買うときにまた来たいな」と思った人たちも多くいました。
体験を通じたつながり
このイベントをきっかけに、何組もの家族が実際に車を購入したり、車のメンテナンスを頼むようになりました。さらに、イベントで焼きそばを楽しんだ人たちは、友達や家族に「楽しかったから行ってみて!」と口コミを広げてくれました。
このように、車屋さんが車以外の焼きそばイベントを開催することで、ただ「車を売る」だけでなく「お客さんとのつながり」を深めることができました。お客さんにとって「美味しい時間」を提供することが、結果として新しいお客さんを増やす大切な方法になる例です。
EtoC(Experience to Consumer)は、お客さんが体験を通じて商品やお店をもっと好きになる仕組みと理解しましょう。
EtoC導入の背景
「新規顧客獲得」を目標に掲げている企業は数多くある一方で、実際にどのように新規顧客を獲得するのかを戦略的に計画している企業は少ないのが現状です。新規顧客獲得は多くの場合に、広告予算の増加、新たな広告媒体の追加、新規チャネルの開始と運用、新サービスの構築など直接的なコンバージョンに寄与するであろう自社視点の施策を検討してしまいます。
- 新規顧客は既存顧客ではないため、自社ブランドの市場カテゴリ以外の興味や関心から自社との関係性を構築する必要があります。
- 自社ブランドの製品やサービスで提供できる体験は、生活者視点では「購買」を連想させてしまいます。
- 自社ブランドの製品やサービスを連想させない、別カテゴリの「体験」を提供することで、新規の顧客接点を生み出す考え方がEtoCです。
- 生活者は企業との中長期的な関係性の構築のために製品やサービス、製品やサービスの購入や利用の過程だけではなく、企業やブランドの接点での「体験」を重要視するようになっています。
- 競争が激化する中で、顧客とのエモーショナルなつながりを強化することが自社ブランドの差別化に繋がります。
- 競合が激化する中では、自社ブランドカテゴリ以外のパートナーが新規開拓には重要なポイントになります。シナジーを生み出すパートナーを選定することで両社にとっても顧客にとっても有益な「体験」が無限に提供できる可能性があります。
- ARやVR、AIなどの技術進化により、より豊かでパーソナライズドな体験の提供が可能になっています。
- データ分析技術の進歩により、顧客行動の理解とその体験への反映がより精緻になっています。
2. 目的
EtoCを考えるポイントと目的は、大きく2つあります。
-
潜在層の「体験」を通じた認知
-
比較検討層や試用検討層の「体験」を通じた他社との差別化
自社ブランドを認知しておらず、生活者自身の課題も未だ特定できていない自社ブランドの「潜在層」に対しては、その潜在層が興味や関心を抱く「体験」を提供することで新たな認知と自社ブランドに対する新たな「認識」を獲得することが可能です。また、自社ブランドを他社や他の代替手段と比較検討していたり、自社ブランドを試用するタイミングを探している生活者に対しては「体験」自体が差別化につながります。
- ブランド価値の向上 – 顧客に忘れられない体験を提供することで、ブランドの価値を高める。
- 顧客満足度の向上 – 単なる商品・サービスの提供にとどまらず、感動や驚きを提供することで、顧客満足度を高める。
- リピーターの獲得 – 素晴らしい体験を提供することで、顧客が再度利用したいと思う動機を高める。
- ポジティブな顧客サイクル – 体験を共有した顧客が新規顧客を引き寄せる効果を期待する。
3. 期待する効果
顧客ロイヤルティの向上
- 特別な体験を提供することで、顧客がブランドに対して強いロイヤルティを抱きます。ブランドに対する愛着や信頼感を深めます。
エンゲージメントの強化
- 体験を通じて顧客との関係が深まり、SNSや口コミでのブランドエンゲージメントが強化されます。積極的なエンゲージメントを促し、製品やサービス自体が競合他社と似ている場合でも、ユニークな体験を提供することで差別化を図ることができます。
新規顧客の獲得
- 顧客が体験を共有することで、新規顧客の獲得が促進されます。
売上の向上
- パーソナライズドな体験を通じて顧客満足度が高まり、結果として売上が向上します。
ブランドイメージの向上
- ユニークで感動的な体験を提供することで、ブランドのイメージが向上し、競合との差別化が図られます。特別な体験は顧客にとって共有したくなるものであり、SNSや口伝えを通じて広がりやすいです。口コミとバイラル効果を期待することができます。
4. EtoC構築ステップ
ステップ1:ターゲット顧客の理解
- 顧客のニーズや期待を深く理解するために市場調査やデータ分析を行います。
- ペルソナを作成し、ターゲット顧客の具体的な行動や嗜好を明確にします。
ステップ2:ブランドストーリーの構築
- ブランドの核心メッセージやミッションを明確にし、それに基づいたストーリーを構築します。
- このストーリーが体験全体を通じて一貫して伝わるようにします。
ステップ3:体験デザイン・アイディアの開発
- 顧客がブランドとどのように関わるかの各タッチポイントを設計します。
- 物理的な店舗体験、デジタル体験、イベントなどを包括的にデザインします。
ステップ4:パーソナライズドな体験の提供
- 顧客データを活用し、一人ひとりに合わせたパーソナライズドな体験を提供します。
- テクノロジーを活用して、リアルタイムでのパーソナライゼーションを実現します。
- 顧客からのフィードバックを積極的に収集し、体験の質を継続的に改善します。
- 定期的に評価と見直しを行い、新しいアイデアや改善点を反映させます。
レッドブルの「体験」ケーススタディ
レッドブルは、エナジードリンクの枠を超え、アクションスポーツや音楽、文化イベントなどの体験を通じてブランド認知度とエンゲージメントを高める戦略を実行しています。以下に、レッドブルが潜在層および試用検討層向けに「体験」を提供するケーススタディを提案します。
1. 潜在層向けの認知獲得を目的とした、「無料」体験提供
ケーススタディ:大学キャンパスツアーでのエナジードリンク無料配布
目的:若年層(特に大学生)の認知獲得(潜在層の新規認知獲得)
- レッドブルが大学キャンパスでイベントを開催し、学生にエナジードリンクを無料配布。
- スポーツや音楽イベントと連動し、参加者にエナジードリンクを提供。
- キャンパス内でエキサイティングなアクティビティ(例:バーチャルリアリティ体験、エクストリームスポーツのデモンストレーション)を行い、学生がエナジーを感じる瞬間を演出。
結果:ブランド認知度の向上とポジティブな体験を通じて、学生がレッドブルに親しみを持つ。
2. 潜在層向けの認知獲得を目的とした、「有料」体験提供
ケーススタディ:音楽フェスティバルのスポンサーシップとVIPエリア提供
目的:新規顧客の認知獲得とエンゲージメントの向上
- 人気の音楽フェスティバルにスポンサーとして参加し、レッドブルVIPエリアを設置。
- VIPチケット購入者には、限定体験(例:アーティストとのミート&グリート、特別な視聴エリア、レッドブルのカクテルバー)を提供。
- フェスティバル全体でレッドブルのブランディングを強化し、エナジードリンクの販売も行う。
結果:有料の特別体験を通じて、新規顧客の関心を引き、ブランドのプレミアム感を強化。
3. 試用検討層向けの差別化を目的とした、「無料」体験提供
ケーススタディ:都市マラソンのサポートと無料サンプル提供
目的:試用検討層に対する製品の差別化とエンゲージメントの強化
- 大規模な都市マラソンのスポンサーとなり、参加者全員にレッドブルの無料サンプルを提供。
- マラソン完走後に専用のリカバリーゾーンを設置し、参加者がリラックスできるスペースを提供。ここでレッドブルを飲むことで、エナジードリンクの効果を体感してもらう。
- アスリートやフィットネスインフルエンサーと連携し、マラソン前後のエナジー補給の重要性を啓蒙。
結果:マラソン参加者が実際にレッドブルを試用し、その効果を体感することで、製品の優位性を実感。
4. 試用検討層向けの差別化を目的とした、「有料」体験提供
ケーススタディ:アドベンチャートリップの開催と参加費用
目的:エナジードリンク市場での差別化と強力なブランドエンゲージメント
- レッドブルが主催するアドベンチャートリップ(例:山岳トレッキング、サーフィンキャンプ、スカイダイビング体験などの自社ブランド以外のカテゴリ)を有料で提供。
- 参加者には、レッドブルのエナジードリンクを体験できる特別な場面を設け、アドベンチャーの各ステージでエナジー補給。
- 有名アスリートやインフルエンサーをゲストとして招待し、参加者と共にアドベンチャーを楽しむことで、ブランド体験を強化。
結果:有料の特別体験を通じて、エナジードリンクの効果を実感し、ブランドへの高いエンゲージメントを形成。
EtoCをすべてのタッチポイントのベースに
レッドブルを例に、潜在層および試用検討層向けに多様な体験を提供することで、ブランド認知度を高め、顧客との強力なエンゲージメントを築いています。無料体験と有料体験を巧みに組み合わせることで、ブランド価値を最大化し、顧客ロイヤルティを向上させることができます。このような体験を提供することで、レッドブルは競争の激しいエナジードリンク市場での差別化を図り、成功を収めています。
EtoC(Experience to Consumer)戦略は、製品やサービスの提供を超えて、顧客に特別な体験を提案することを重視します。この戦略を適用することで、顧客ロイヤルティの向上、エンゲージメントの強化、新規顧客の獲得、売上の向上、ブランドイメージの向上といった多くの効果を期待することができます。これからのマーケティングにおいて、EtoCは重要な位置を占めるでしょう。
アプリ設計、マーケティング、ブランディング、戦略立案のご相談
株式会社SHISEILABOでは、新規事業開発や既存事業のマーケティング戦略立案、ブランディング、アプリ開発などの事業を行っています。また1on1などで実施するトレーニングの機会を提供しています。個別に対応しています。まずは下記のフォームよりお問い合わせください。
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