海の生き物を守ろう!アクアリストと展示デザイナーとは?
アクアリストは、水族館の魚やイルカたちの健康を守り、命を育む飼育のプロフェッショナル。展示デザイナーは、その生き物たちが最も輝いて見えるように、美しい水槽や幻想的な空間を創り出すアーティストです。この二つの力が合わさり、私たちの心を奪う水族館の感動体験が生まれます。
この仕事の最大の魅力は、神秘的な海の生き物の美しさや不思議さを、自らの手で多くの人々に届けられることです。アクアリストとして担当の生き物と心を通わせ、新しい命の誕生に立ち会えた時の喜びは格別です。展示デザイナーとして、自分が思い描いた海の世界が目の前に広がり、来館者が「わぁっ!」と歓声を上げる瞬間は、最高のやりがいを感じるでしょう。海の命を守り育て、その大切さを伝え、人々の心に忘れられない思い出を刻む、夢とロマンあふれる仕事です。
アクアリストと展示デザイナーの仕事とは?
水族館の裏側では、二人のプロフェッショナルが協力し合っています。
アクアリスト(飼育員)
海の生き物たちの「命」に最も近い場所で働く、飼育の専門家です。
- 健康管理 生き物のお医者さん 毎朝、すべての水槽を巡回し、生き物たちの様子を細かく観察。「あのカクレクマノミ、少し元気がなさそうだな」と感じたら、すぐに別の水槽に移して特別な餌をあげたり、病気の治療をしたりします。
- 環境維持 海を再現する科学者 生き物たちが故郷の海と同じように快適に過ごせるよう、水温や塩分濃度、水質を毎日厳しくチェックします。巨大なアクリルガラスを磨いたり、大量の水を入れ替えたりするのも大切な仕事です。
- 餌の準備 専門シェフ アジやイカを捌いてペンギンのご飯を用意したり、小さなプランクトンを培養してサンゴの餌にしたり。巨大なジンベエザメから、指先ほどの小さなエビまで、それぞれの生き物に合わせた最高の食事を準備します。
展示デザイナー
海の魅力を最大限に引き出し、物語を伝える空間の演出家です。
- コンセプト作り 物語の脚本家 「日本の深海」というテーマで新しい展示を企画する場合、どんな生き物を主役にし、どんな驚きを来館者に届けたいか、館長やアクアリストと熱く議論します。
- 空間デザイン 舞台美術家 コンセプトに基づき、水槽の形や内部の岩の配置、照明の色や強さ、流れる音楽まで、空間全体をデザインします。来館者が「まるで竜宮城に迷い込んだみたい!」と感じるような、没入感のある世界を創り出します。
- 解説の作成 言葉の魔法使い 生き物の生態や面白さが一目でわかるように、解説パネルの文章を考えたり、イラストや映像を選んだりします。「へぇ!タコには心臓が3つもあるんだ!」というような、子供たちの知的好奇心をくすぐる「魔法の言葉」を考えます。
アクアリストと展示デザイナーの魅力!
- 大好きな生き物と家族のようになれる! 何よりも、海の生き物が好きな人にとっては夢のような仕事。毎日顔を合わせるうちに、イルカが声で甘えてきたり、ペンギンが後をついてきたり…言葉は通じなくても、深い信頼関係が築けた時の喜びは計り知れません。
- 自分の手で「命」をつなぐ感動! 病気で弱っていた生き物を元気にしたり、絶滅の危機にある珍しいサンゴの繁殖に世界で初めて成功したり。「種の保存」という、地球の未来にとって非常に重要な役割を担うことができます。
- 「すごい!」という歓声がエネルギーになる! 自分がデザインした水槽の前で、子供たちが目を輝かせたり、カップルがロマンチックな時間を過ごしたり…。人々の笑顔や「きれい!」「すごい!」という歓声を直接見聞きできるのは、何物にも代えがたい喜びです。
- 海の美しさと危機を伝える「メッセンジャー」になれる! 水族館は、海の楽しさだけでなく、地球温暖化やプラスチックごみ問題など、海が直面している危機を人々に伝える大切な場所です。感動的な展示を通じて、海を守る仲間を増やすという、大きな社会貢献ができます。
- 好きを極める専門職! 生物学、化学、デザイン、建築など、幅広い知識と技術が求められるプロフェッショナルな仕事です。経験を積むことでキャリアアップも目指せます。平均年収は300万円~600万円程度が一般的ですが、世界的に有名な展示デザイナーや水族館の館長クラスになると、それ以上の収入を得ることも可能です。 (注:年収は、施設の規模や経験、役職によって大きく異なります)
アクアリストと展示デザイナーになるには?
- STEP1 とにかく「好き」を深掘りしよう! まずは、たくさんの海の生き物に興味を持ちましょう。水族館や博物館に足を運び、図鑑やドキュメンタリー番組で「なぜ?」「どうして?」をたくさん見つけることがスタートです。君が一番心を奪われる生き物は何かな?
- STEP2 小さな命を「育てる」経験をしよう! メダカや熱帯魚など、自分でお世話をする経験は大きな一歩。毎日観察し、水質を管理し、餌を工夫する。小さな命と真剣に向き合う経験が、アクアリストの仕事の基礎体力になります。
- STEP3 専門知識を大学や専門学校で学ぼう! アクアリストを目指すなら、大学や専門学校で水産学や海洋生物学を学ぶのが近道。展示デザイナーを目指すなら、美術系の大学や専門学校で空間デザインや建築を学ぶのがおすすめです。どんな勉強が必要か調べてみよう。
- STEP4 水族館の「現場」に飛び込もう! 水族館でのアルバイトやボランティアは、夢への最高のジャンプ台です。プロの飼育員さんたちの働く姿を間近で見たり、展示の裏側を手伝ったりすることで、仕事への理解がぐっと深まります。
- STEP5 自分だけの「武器」を磨こう! 「潜水士の資格を持っている」「魚の絵を描くのが得意」「英語が話せるから海外の論文が読める」など、君だけの「得意技」を磨きましょう。水族館は、多様な才能が集まってできているチームです。君の得意技で、水族館をどう面白くできるかな?
この分野で有名なプロフェッショナル
タオ・ニシノ氏
この世界には、水族館の歴史を変えたプロフェッショナルがいます。その一人が、アメリカのモントレーベイ水族館で活躍した展示デザイナー、タオ・ニシノ氏です。
彼は、単に生き物を見せるだけでなく、アートと科学を融合させ、まるで一本の映画のように海の世界の物語を伝える「没入型展示」を確立しました。特に、彼が手がけた「くらげの展示(Jellies: Living Art)」は、芸術作品のように美しい照明と音楽の中でクラゲを優雅に泳がせ、世界中の水族館に衝撃を与えました。彼の仕事は、水族館の展示が「教育」の場であると同時に、人々の心に深く響く「アート」にもなりうることを証明したのです。
マーケィングの観点から見ると?
地球温暖化や海洋汚染が進む未来において、アクアリストと展示デザイナーの仕事は、国境を越えてますます重要になります。
水族館は、海の環境問題を人々に伝える「生きたメディア」として、さらに大きな役割を担うでしょう。また、VR(仮想現実)などの最新技術を使えば、アマゾンの川や深海など、誰も行けないような世界中の水辺の環境を、臨場感たっぷりに体験できる展示を創り出すことができます。
さらに、世界中の水族館が協力し、絶滅危惧種の繁殖プロジェクトを行う「地球規模のノアの箱舟」としての機能も強まります。アクアリストは、国境を越えて希少な命をつなぐキーパーソンになるのです。海の美しさと危機を伝える感動的な展示は、言葉の壁を越えて人々の心を動かし、地球を守るための世界的なアクションを起こすきっかけを創り出します。
自由研究の例
この仕事に興味がわいたら、君も未来のプランナーになってみよう!
- STEP1 「推し」の水族館を一つ決めよう! 君が一番好きな水族館や、行ってみたい水族館はどこかな?その水族館の「一番のウリ」は何だろう?
- STEP2 最高の水槽をじっくり観察しよう! その水族館で一番心惹かれる水槽を観察!どんな生き物がいる?岩やサンゴはどう配置されている?照明や音楽はどんな感じかな?
- STEP3 君が展示デザイナーになってみよう! その水槽の生き物の魅力を、もっと引き出すアイデアはないかな?「照明を夕焼け色にしたらロマンチックかも」「解説にクイズを入れたら楽しそう」など、自由に考えてみよう。
- STEP4 「夢の展示」をデザインしよう! 君が好きな生き物だけを集めた、特別な展示コーナーを企画してみよう。テーマは何にする?どんな水槽にする?絵や粘土で「夢の展示」のデザイン画や模型を作ってみよう!
- STEP5 企画書をまとめて発表しよう! なぜその展示を考えたのか、どんな工夫をしたのか、誰に何を感じてほしいのかを「企画書」にまとめて、家族や友達にプレゼンしてみよう!
まとめ
アクアリストと展示デザイナーは、海の生き物の命を守り育て、その輝きを最大限に引き出して私たちに届けてくれる、二人三脚の最高のパートナーです。彼らの仕事は、生き物への深い愛情と科学的な知識、そして人の心を動かす創造力があって初めて成り立ちます。
水族館は、ただ楽しいだけの場所ではありません。その水槽の一つひとつに、生き物と真剣に向き合う人々の情熱と、海の未来への強いメッセージが込められています。この記事をきっかけに、水族館の裏側で働くプロフェッショナルたちの存在に思いを馳せ、海の生き物たちへの興味をさらに深めてくれたら嬉しいです。君が創り出す未来の水族館に、いつか出会える日を楽しみにしています。
関連書籍
身近な仕事について考えてみよう!
- 仕事のことを通じて学んだこと、楽しかったこと、難しかったことを書いてみましょう。
- テーマについての新しい発見や、自分が感じたことをまとめます。
- 今後、さらに調べてみたいことや、他の人に教えたいことがあれば、それも書いてみましょう。