今回のテーマ
「設置角度・影の影響を測って発電量を比較してみよう」
今回の自由研究では、ミニ太陽光パネル(ソーラーパネル)を使って、パネルを設置する「角度」や、パネルに「影」がかかった場合に、発電する電気の量がどのように変化するのかを調べる実験をします。太陽光発電は、私たちの生活を支える大切な「再生可能エネルギー」の一つです。この実験を通して、太陽の光を最も効率よく電気に変えるための条件を探り、地球にやさしいエネルギーの仕組みを体験的に学んでいきましょう。
自由研究の目的
地球温暖化が世界的な問題となる中、二酸化炭素を出さないクリーンなエネルギーへの注目が高まっています。太陽光発電は、その代表的な存在です。
この研究を通じて、「どうすれば太陽光から最も多くのエネルギーを取り出せるのか?」という疑問に、自分自身で答えを見つけ出すことができます。太陽の高さは季節や時間によって変わります。それに合わせてパネルの角度を調整することの重要性や、建物や雲の影が発電量にどれだけ影響を与えるのかを具体的に知ることは、エネルギーを無駄なく使うことの大切さを理解することにつながります。
また、「こうなるはずだ」という仮説を立て、実験で確かめ、結果を考察するというプロセスは、科学的なものの見方や考え方を養う素晴らしいトレーニングになります。
自由研究のゴール
- 基本ゴール
- 太陽光パネルの角度(傾き)を0度(水平)、30度、45度、60度、90度(垂直)と変えていき、どの角度が一番発電量が多くなるかを見つける。
- パネルの一部を手などで隠し、影ができたときに発電量がどれくらい減るのかを調べる。
- レベルアップゴール
- 時間帯による変化を調べる 朝・昼・夕方で、それぞれ最適な角度が違うのかを比較してみる。
- 季節による変化を調べる 夏休みと冬休みなど、違う季節で同じ実験を行い、太陽の高さと最適な角度の関係を考察する。
- 方角による違いを調べる パネルを南向きだけでなく、東向きや西向きに設置した場合の発電量を比較する。
- 発電した電気を使ってみる 電子メロディーを鳴らしたり、モーターを回したりして、発電量を「音」や「動き」で体感する。
具体的実験例
多くの小中学生が、太陽光パネルを使った自由研究に取り組んでいます。例えば、ある小学生は、夏休みの1ヶ月間、毎日同じ時間にパネルの角度を変えながら発電量を記録しました。そして、「太陽の高さが高い夏は、パネルの角度を地面に近づけた方が発電量が多く、逆に冬は角度を立てた方が多くなるのではないか」という仮説を立て、見事にグラフで証明しました。
また、別の中学生は、パネルを直列つなぎにする場合と、並列つなぎにする場合で、電圧と電流がどう変わるのかを実験しました。その結果から、少ない光でもモーターを力強く回すためのつなぎ方を考察するなど、より専門的な内容に発展させていました。
【実験のイメージ】
- 分度器を使って正確に角度を測り、段ボールなどで作った台にパネルを固定する。
- マルチメーター(テスター)をつないで、電圧(V)と電流(A)を測定する。
- 発電量である電力(W)は、「電力(W) = 電圧(V) × 電流(A)」の式で計算できる。
- 測定した数値は、日時や天気と一緒に必ず記録用紙にメモする。
研究を進めるうえで、以下のポイントに注目しよう!
実験を成功させるためには、準備といくつかのポイントが大切です。
準備するもの
- ミニ太陽光パネル
- マルチメーター(電圧と電流を測るため)
- 分度器、方位磁針
- パネルを固定するための台(段ボールや木材で工作)
- 記録用紙、筆記用具
- (あれば)電子メロディー、プロペラ付きモーターなど電気で動くもの
実験のポイント
- 条件をそろえる 角度による比較をするときは、同じ日の同じ時間帯に行うのが基本です。天気が変わると発電量が変わってしまうため、できるだけ連続で測定しましょう。
- 安全第一 太陽光パネルは発電します。濡れた手で触ったり、プラスとマイナスをショートさせたりしないように注意しましょう。
- 正確な記録 測定した数値は、単位(V, A, W)を間違えないように正確に記録しましょう。天候(快晴、晴れ、うす曇りなど)もメモしておくと、考察の際に役立ちます。
- 南向きが基本 日本では、太陽は東からのぼり、南の空を通って西に沈みます。効率よく発電させるためには、パネルを南向きに設置するのが基本です。
自由研究の進め方
Step1 計画を立てる(何を調べたいか決める)
- 仮説を立てる 「太陽の光が直角に当たる角度が、一番発電量が多くなるはずだ」「パネルの半分に影ができると、発電量は半分になるだろう」など、自分なりの予想を立てます。
- 実験計画 いつ、どこで、どの角度を、何回測定するのか、具体的な計画を立てます。
Step2 準備と実験
- 必要なものをそろえ、マルチメーターの使い方を大人に確認しましょう。
- 計画に沿って、安全に注意しながら実験を行い、データを正確に記録します。様々な角度で測定し、影の影響も調べてみましょう。
Step3 結果をまとめる
- 記録したデータを、表に整理します。
- 結果がひと目でわかるように、「横軸:角度、縦軸:発電量(電力)」のような棒グラフを作成します。グラフにすると、どの角度が一番発電量が多かったかが分かりやすくなります。
Step4 考察する
- グラフを見て、何がわかったかを考えます。
- 「なぜその角度が一番発電したのか?」「仮説は合っていたか?」を考え、太陽の動きと関連付けて説明します。日本では一般的に、年間を通して見ると約30度の角度が最も効率が良いと言われていますが、自分の実験結果はどうだったでしょうか。
- 実験で難しかったこと、もっと調べてみたいと思ったことなども書きましょう。
Step5 発表する
- 画用紙や模造紙に、研究の動機、仮説、実験方法、結果、考察を分かりやすくまとめて、発表資料を作成します。
自由研究から発見したアイデア
- 自動追尾型・太陽光パネル ひまわりのように、常に太陽の方向を自動で追いかけて、最も効率の良い角度を保つ装置の仕組みを考えてみましょう。センサーとモーターを組み合わせたらどうなるでしょうか。
- 自分だけのポータブル充電器 発電した電気をバッテリーに貯めることができれば、スマートフォンの充電や災害時の小さな明かりとして使えるかもしれません。自分だけのオリジナル充電器を設計してみましょう。
- 地域のエネルギーマップ作り 家の周りを歩いて、「あのお店の屋根は南向きで角度も良いから、太陽光パネルを置くのに最適だ!」「この公園の街灯は太陽光で光っているな」など、地域の太陽エネルギー活用場所を探してマップにしてみるのも面白いでしょう。
この自由研究に関連する仕事
- 電気技術者、電子回路設計技術者 太陽光パネルや、発電した電気を家庭で使えるように変換する装置(パワーコンディショナー)などを開発・設計する仕事です。
- 再生可能エネルギーの研究者 より効率よく発電できる新しい太陽電池の材料を探したり、未来のエネルギーシステムを研究したりする仕事です。
- エネルギーコンサルタント 企業や家庭に対して、太陽光発電などの導入を提案し、省エネのアドバイスをする専門家です。
- 建築士 家を設計する際に、太陽光パネルを設置するのに最適な屋根の形や角度を考えるなど、自然エネルギーを活かす家づくりをします。
- 電力会社の社員 発電所を管理し、私たちの家庭に安定して電気を届ける仕事です。近年は、再生可能エネルギーの導入を推進する役割も大きくなっています。
まとめ
ミニ太陽光パネルを使った発電量の比較実験は、再生可能エネルギーの仕組みと、自然の力を最大限に活かす工夫を楽しく学べる絶好の自由研究テーマです。
「なぜだろう?」という好奇心から仮説を立て、自分の手で実験し、結果を考察する経験は、科学的な思考力を大きく育ててくれます。この小さな実験が、地球の未来を支えるエネルギー問題や、それに関連する様々な仕事への興味を持つきっかけになるかもしれません。ぜひ、太陽の力をその手で電気に変える面白さを体験してみてください。
関連書籍
身近な仕事について考えてみよう!
- 仕事のことを通じて学んだこと、楽しかったこと、難しかったことを書いてみましょう。
- テーマについての新しい発見や、自分が感じたことをまとめます。
- 今後、さらに調べてみたいことや、他の人に教えたいことがあれば、それも書いてみましょう。