世界の教育|「とりあえずやってみる」が合言葉。アイスランドのイノベーション教育が育む、失敗を恐れない子どもたち

INDEX

教育制度の特徴

アイスランドの教育は、「すべての子どもに平等の機会を」という理念に貫かれています。教育システムは、就学前教育、10年間の義務教育(6~16歳)、3年間の高校、そして大学という構成です。

大きな特徴は、ほとんどの学校が公立で、地方自治体が運営している点です。これにより、家庭の経済状況に関わらず、質の高い教育が保証されています。驚くべきことに、国立大学の授業料は無料。誰もが望めば高等教育までアクセスできる環境が整っています。

また、地方分権が進んでおり、各学校が独自のカリキュラムを編成する裁量権を持っています。これにより、地域の実情や子どもたちの興味に合わせた、きめ細やかな教育が可能です。

教育方法

アイスランドの教育方法で特に重視されているのが「イノベーション教育」です。これは、子どもたちが日常生活の中から課題を見つけ、解決策を創造する能力を養うことを目的としています。単なる知識の詰め込みではなく、実践的な「ものづくり」や、アイデアを形にするプロセスを大切にしています。

小学校の教室や廊下には、子どもたちの作品が誇らしげに飾られ、学校全体が創造性を刺激する空間となっています。年に一度開催される「全国イノベーション・コンペティション」では、多くの子どもたちが身の回りの問題を解決するユニークな発明を発表し、国を挙げてその才能を称えています。

教育への取り組みや支援

アイスランドでは、国全体で子どもたちの学びと成長を支える体制が整っています。6歳から16歳までの義務教育は無償で、障がいや学習困難を抱える子どもたちへの追加支援も手厚く行われます。

また、子どもの医療費(歯科治療を含む)は18歳まで原則無料です。

特筆すべきは、世界最高水準のジェンダー平等を支える制度です。父親も母親もそれぞれ5ヶ月間の育児休暇を取得する権利があり、給与の約8割が保障されます。これにより、父親が育児へ積極的に参加することが社会の当たり前となっており、女性の社会進出を力強く後押ししています。

子供達の1日の過ごし方

アイスランドの子どもたちは、自然と共にのびのびと育ちます。学校は全日制で、授業の合間には十分な休み時間があります。

放課後や休日は、家族で地熱プールに出かけたり、博物館や図書館を訪れたりすることが一般的です。特に地熱プールは、世代を超えた市民の憩いの場となっています。

また、雨や風の強い日でも、子どもたちはレインウェアで完全防備して外で遊びます。厳しい自然環境の中でも、たくましく遊びを見つけ出す力は、アイスランドならではの光景と言えるでしょう。

教育と社会の関係

アイスランドでは、教育が社会のあり方と密接に結びついています。特に「男女平等」は、教育の現場で最も重要な価値観の一つとして教えられています。

企業や政治の世界では、女性の比率を一定以上に保つ「クオータ制」が導入され、女性リーダーが活躍することが珍しくありません。こうした社会の姿が、子どもたちに「性別に関わらず、どんな可能性にも挑戦できる」という意識を育んでいます。

また、生涯にわたって学び続ける「リカレント教育」も盛んで、誰もがいつでもスキルアップできる機会が提供されており、変化の激しい社会に対応する力を養っています。

国が抱える教育の課題と未来

    2008年の金融危機を乗り越えた経験から、アイスランドは未来を担う子どもたちの「創造性」と「問題解決能力」を育むことの重要性を再認識しました。現在の「イノベーション教育」は、まさにその経験から生まれたものです。

    今後の課題は、この独創的な教育をさらに発展させ、グローバル化やテクノロジーの進化といった未来の社会変化に対応できる人材を育成し続けることです。子どもたちが自信を持ってアイデアを形にし、新しい価値を創造できる環境を社会全体で支えていくことが、アイスランドの未来への投資だと考えられています。

    教育と文化や価値観の関係

    フラットな人間関係と非権威主義

    アイスランドでは、教育現場で教師と生徒がファーストネームで呼び合うなど、非常にフラットな関係が築かれています。この文化は社会全体に浸透しており、職場でも上司と部下が対等な立場で議論を交わすことが当たり前です。肩書きや権威を振りかざすことを嫌い、誰もが自由に意見を言えるオープンな国民性は、個人の意見を尊重する教育の賜物と言えるでしょう。

    失敗を恐れない「とりあえずやってみる」精神(Þetta reddast)

    アイスランドには「Þetta reddast(セッタ・レッダスト)」という有名な言葉があります。これは「なんとかなるさ」「きっとうまくいく」という意味で、アイスランド人の楽観的で前向きな国民性を象徴しています。イノベーション教育などを通して、子ども時代から失敗を恐れずにアイデアを試し、挑戦することが奨励されているため、困難な状況でも「とりあえずやってみよう」と行動に移せる力が社会全体に根付いています。

    高いレベルでの男女平等が「常識」である社会

    世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数で長年1位を維持しているアイスランドの男女平等は、強力な法律や制度だけでなく、教育によって支えられています。学校でジェンダー平等を体系的に学ぶことで、性別による役割分担という考え方自体が希薄になります。その結果、男性が育児に参加することはもちろん、女性が政治や経済のリーダーになることもごく自然なこととして受け入れられており、それが社会の「常識」となっています。

    文学と音楽を愛する文化

    アイスランドは人口約39万人と小国ながら、国民一人当たりの作家や音楽家の数が世界で最も多いと言われています。これは、教育において個人の創造性や表現活動が奨励されていることと無関係ではありません。誰もが自由に創作活動に挑戦できる雰囲気があり、クリスマスに本を贈り合う「ヨルカボカフロッド(クリスマスの本の洪水)」という習慣が定着しているなど、文学や芸術が生活の一部となっている文化が育まれています。

    強い連帯感と民主主義への意識

    公教育が中心で、誰もが等しい教育の機会を与えられるため、社会階層による分断が起こりにくいとされています。これにより、国民の間に強い連帯感が生まれます。2008年の金融危機の際には、市民が鍋やフライパンを叩いて抗議し、政府を退陣に追い込んだ「鍋とフライパン革命」が起こりました。これは、教育を通じて育まれた民主主義への高い意識と、自分たちの手で社会を変えられるという当事者意識の表れです。

    まとめ

    アイスランドの教育は、単に知識を教える場ではありません。それは、「平等」「創造性」「ジェンダーバランス」という社会の根幹をなす価値観を、次世代へと受け継いでいくための重要な営みです。

    手厚い公的支援のもと、すべての子どもが尊重され、自らの可能性を自由に追求できる。そして、社会全体がその成長を温かく見守る。この揺るぎない土台こそが、アイスランドの子どもたちの明るい未来を築き、国の活力の源となっているのです。

    感想を温めよう!

    • 世界の教育の内容を通じて学んだこと、楽しかったこと、難しかったことを書いてみましょう。
    • テーマについての新しい発見や、自分が感じたことをまとめます。
    • 今後、さらに調べてみたいことや、他の人に教えたいことがあれば、それも書いてみましょう。

    If you would like to publish your experience in our media, please contact us at the email address below, we publish for $300 per article.
    mailto: hello@s-labo.earth

    foodots.

    foodots.

    食文化動画メディア

    空庭のテーマ

    感想窓口

    マーケティングを学ぼう!

    あわせて読みたい

    この記事が気に入ったら
    フォローしてね!

    空庭をみんなで活用してね!
    • URLをコピーしました!
    INDEX