Issue18｜食料安全保障とは？食糧危機を防ぐ鍵？安定的な食料へのアクセスの実現｜社会問題

INDEX

食料安全保障とは？食糧危機を防ぐ鍵？安定的な食料へのアクセスの実現｜社会問題

食料安全保障（Food Security）とは、すべての人がいつでも十分な食料を得られる状態のことを指します。これは単に食料があるだけでなく、「経済的に手に入れやすい」「栄養価が高い」「安定して供給される」といった要素を含みます。国際連合食糧農業機関（FAO）では、食料安全保障を以下の4つの要素で定義しています。

食料の供給（Availability）：十分な量の食料が生産・輸入されていること
食料へのアクセス（Access）：経済的・社会的にすべての人が食料を入手できること
利用可能性（Utilization）：安全で栄養価のある食料が適切に摂取されること
安定性（Stability）：食料の供給が長期的に維持されること

これらの要素が揃って初めて、食料安全保障が達成されるとされています。

世界の食糧危機の現状と数値

現在、世界では約8億人（世界人口の約10%）が慢性的な飢餓に苦しんでいます。

また、国連世界食糧計画（WFP）によると、2023年には2億5,000万人以上が深刻な食糧不安に直面していると報告されています。食料不足の主な原因としては以下が挙げられます。

気候変動｜異常気象による農作物の減少
戦争・紛争｜農地や物流が破壊され、食料供給が途絶える
経済格差｜食料価格の高騰により貧困層が食料を買えない
人口増加｜食料の需要が供給を上回る

それぞれ具体的に触れてみましょう。

1. 気候変動｜異常気象による農作物の減少

気候変動は食料生産に深刻な影響を与えています。地球温暖化が進むことで、気温上昇・異常気象・水不足・土壌劣化といった問題が発生し、農作物の収穫量が大幅に減少することがあります。

干ばつ：降水量の減少により、トウモロコシ・小麦・米などの主要作物が育たなくなる。例えば、アフリカのサハラ以南では干ばつが頻発し、農業が困難に。
豪雨・洪水：異常気象による集中豪雨や洪水で農地が浸水し、作物が枯死。2022年のパキスタン大洪水では、国の農地の約30%が被害を受けた。
高温による収穫量の低下：トウモロコシや小麦は適切な温度で成長するが、気温が高すぎると開花や実の形成が阻害され、収穫量が激減する。特に熱帯地域での影響が大きい。
害虫・病害の増加：温暖化により害虫が繁殖しやすくなり、農作物が食い荒らされる。例えば、近年アフリカで大量発生した「サバクトビバッタ」による農作物被害が深刻化。

2. 戦争・紛争｜農地や物流が破壊され、食料供給が途絶える

戦争や内戦が起こると、農業活動が停止し、食料の生産や供給が難しくなります。また、食料の輸送ルートが断たれることで、市場に食料が届かなくなります。

農地の破壊：戦闘による爆撃や地雷設置で農地が使用不能になる。例えば、シリア内戦では多くの農地が破壊され、食料生産量が大幅に減少。
物流の混乱：港や道路、鉄道が破壊され、食料が都市部に運ばれなくなる。ウクライナ戦争では、小麦輸出が滞り、アフリカ・中東の国々で食料不足が深刻化。
難民の増加：戦争により農村から人々が逃げ出し、農作業をする人が減少。これにより、農地が放置され、さらに食料不足が加速。
経済制裁の影響：戦争当事国への経済制裁が行われると、国際的な食料供給に影響。例えば、ロシアのウクライナ侵攻による制裁で、肥料の価格が高騰し、世界中の農業に影響を及ぼした。

3. 経済格差｜食料価格の高騰により貧困層が食料を買えない

食料の価格が高騰すると、貧困層は十分な食料を購入できなくなり、飢餓や栄養失調に陥るリスクが高まります。特に発展途上国では食料支出の割合が高く、価格上昇が直ちに生活の危機につながります。

食料価格の高騰：原油価格の上昇や物流コストの増加、異常気象による不作などで食料の価格が上がる。2022年にはウクライナ戦争の影響で小麦の価格が急騰し、パンの値段が世界的に上昇。
為替レートの影響：発展途上国の通貨が下落すると、輸入食料の価格が高騰し、手に入れにくくなる。例えば、スリランカの経済危機では、食料価格が急騰し、多くの人が十分な食料を確保できなくなった。
低所得層の影響：先進国でも、物価上昇により低所得層が影響を受ける。特に物価の高い都市部では、食費を削らざるを得ず、栄養バランスの悪化が問題となる。
投機の影響：一部の投資家が食料を「投機商品」として扱い、価格を人為的に釣り上げることで、食料価格の乱高下が起こることもある。

4. 人口増加｜食料の需要が供給を上回る

世界の人口は増加を続けており、それに伴い食料の需要も急増しています。しかし、供給が追いつかないため、特に発展途上国では深刻な食料不足が発生しています。

世界人口の増加：2022年に世界人口は80億人を突破し、今後も増加が予想される。特にアフリカや南アジアでは人口増加率が高く、食料需要の増大が懸念される。
農地の不足：都市開発や森林破壊により、農地が減少。例えば、アマゾンの森林伐採により農業用地が拡大されているが、持続可能性が問題視されている。
水資源の不足：人口増加に伴い、農業用水の確保が困難になっている。特に乾燥地帯では水資源の奪い合いが発生し、農業生産が停滞する要因に。
食習慣の変化：発展途上国の経済成長により、肉や乳製品の消費量が増加。畜産業には大量の穀物と水が必要なため、食料供給にさらなる圧力がかかる。例えば、中国の経済発展により肉の消費量が増え、世界的な穀物需要が上昇。

食料安全保障を脅かす主な要因には、「気候変動」「戦争・紛争」「経済格差」「人口増加」があります。これらの問題は単独で発生するのではなく、複雑に絡み合っています。例えば、戦争による食料不足が食料価格の高騰を引き起こし、貧困層の食料入手をさらに困難にすることもあります。

解決策として、持続可能な農業の推進や食品ロス削減、技術革新などが求められています。今後、より多くの人が食料問題について理解し、行動を起こすことが重要です。

食糧危機の深刻さ – 具体例

アフリカのサハラ以南では、干ばつや洪水の影響で食料不足が深刻化しています。

2022年には、ソマリア、エチオピア、ケニアの約3,700万人が飢餓に苦しみました。また、ウクライナ戦争によって小麦やトウモロコシの供給が不安定になり、アフリカや中東の国々で食料価格が急上昇しました。

食料安全保障に取り組む企業や著名人

ビル・ゲイツ：自身の財団を通じてアフリカの農業支援を推進
国際機関（FAO・WFP）：食料支援や持続可能な農業の普及
企業（バイオテクノロジー企業）：遺伝子組み換え作物や垂直農法の開発

食糧危機を防ぐための鍵

持続可能な農業の推進：環境に優しい農法やスマート農業の導入
食品ロスの削減：世界の食料生産量の約30%が廃棄されているため、これを削減
技術革新：人工肉や昆虫食などの新たな食料資源の開発
国際協力：食料を安定供給するための貿易政策や援助の強化

未来を担う高校生へメッセージ

食料安全保障の問題は遠い世界の話ではなく、日本でも関係があります。例えば、日本の食料自給率は約38%と低く、輸入に依存しています。気候変動や国際紛争が続けば、私たちの食卓にも影響が出るかもしれません。

今からできることとして、食品ロスを減らす努力や、地産地消を意識することが大切です。また、将来的に農業や食品技術の分野で活躍することも、食料安全保障の確保に貢献する方法の一つです。

まとめ

食料安全保障とは、「すべての人が安定して安全な食料を得られる状態」のことです。しかし、気候変動、紛争、経済格差などによって世界的な食糧危機が深刻化しています。企業や国際機関の取り組みが進んでいる一方で、私たち一人ひとりも食品ロス削減などの行動を起こすことが重要です。未来の食卓を守るために、今日からできることを始めてみませんか？

感想を温めよう！

世界の問題の内容を通じて学んだこと、楽しかったこと、難しかったことを書いてみましょう。
テーマについての新しい発見や、自分が感じたことをまとめます。
今後、さらに調べてみたいことや、他の人に教えたいことがあれば、それも書いてみましょう。

If you would like to publish your experience in our media, please contact us at the email address below, we publish for $300 per article.
mailto: hello@s-labo.earth