今回のテーマ
「異なる水道水・ミネラルウォーター・海水などで差が出るか実験してみよう」
この自由研究のテーマは、水の種類によって氷が溶ける速さ(融解速度)に違いが出るのかを実験で確かめることです。使う水は、身近な水道水、ミネラルウォーター、そして海水など、含まれる成分が異なるものを準備します。同じ大きさ・重さの氷を作り、同じ環境(室温など)に置いて、どの水の氷が一番速く溶けるか、または一番ゆっくり溶けるかを比較します。一見同じに見える「氷」でも、その溶け方には科学的な秘密が隠されています。
自由研究の目的
科学の基本「不純物と凝固点」を学ぶ
この実験で学べる最も重要な科学的原理は、「凝固点降下(ぎょうこてんこうか)」です。純粋な水は0℃で凍りますが、水の中に塩分やミネラルなどの不純物が溶けていると、0℃よりも低い温度でなければ凍らなくなります。これが「凝固点降下」です。
融解速度との関係
この原理は、氷が溶ける速さにも影響します。不純物(塩やミネラル)が多い水でできた氷は、純粋な水の氷よりも少しだけ溶け始める温度が低くなります。また、溶けて水になったときも、水中の不純物が熱の伝わり方や水自身の構造に影響を与えるため、氷が溶ける速さが変わってくる可能性があるのです。この実験を通じて、私たちが普段意識しない水の成分が、自然現象にどれほど影響を与えているかを、体感して学ぶことができます。
自由研究のゴール
- レベル1 水道水とミネラルウォーターの氷を作り、完全に溶けきるまでの時間を測定し、結果をグラフにまとめる。
- レベル2 海水や砂糖水など、成分が大きく違う水も加えて実験する。また、溶けきるまでの時間だけでなく、溶け始めてから5分後、10分後などの氷の「残りの重さ」を測り、融解のスピードが一定なのか変化するのかを詳しく分析する。
- レベル3 実験で差が出た場合、なぜ差が出たのかを「凝固点降下」や「熱の伝わり方」などの専門用語を使って科学的に考察する。さらに、その水の硬度(ミネラル成分の多さ)や塩分濃度と、融解速度の関係を突き止める。
具体的な事例
事例1 凍らない海の秘密
地球上で最も塩分濃度の高い水といえば「海」ですね。海水が真水と同じ0℃で凍ってしまうと、北極や南極の生物は生きていけません。でも、実際の海水は、大量の塩分が溶けているおかげでマイナス1.8℃くらいになるまで凍りません。これはまさに凝固点降下の働きです。この実験で海水を使うことで、「塩分が多い氷は溶けやすいのか、それとも溶けにくいのか?」という、海の研究にもつながる発見があるかもしれません。
事例2 冬の道路の融雪剤
冬、凍った道路に塩化カルシウム(塩)がまかれるのを見たことはありますか?これも凝固点降下の原理を利用しています。塩をまくと、雪や氷が溶けた水に塩分が溶け込み、水の凝固点が下がるため、氷が溶けて再び凍りにくくなるのです。もし塩水の氷が真水の氷より溶けやすい(または溶けにくい)という結果が出たら、それはこの現象の裏側にある科学を証明することになります。
研究を進めるうえで、以下のポイントに注目しよう!
- 氷の大きさ・重さ 必ず同じ容器を使い、同じ量の水を入れ、同じ時間凍らせて、できるだけ同じ大きさ・重さの氷を作ります。
- 実験環境 実験を始める前に、それぞれの氷を冷蔵庫から同時に取り出し、同じテーブルの隣同士に並べます。風が当たらないか、日が当たらないかなど、室温が一定になる場所を選びましょう。
- 観察のタイミング ストップウォッチを使い、5分ごとや10分ごとなど、決まった時間に氷の状態を記録します。溶けきるまでの時間も正確に測りましょう。
自由研究の進め方
準備するもの
- 水道水、ミネラルウォーター(2〜3種類)、海水(または食塩を溶かした塩水)、砂糖水など
- 製氷皿(すべて同じ型のもの)、または同じ大きさのプリンカップなど
- 温度計、ストップウォッチ、はかり(0.1g単位で測れるものがあると理想的)
実験手順
- 氷の準備 種類の違う水をすべて同じ量のカップや製氷皿に入れ、冷凍庫で一晩以上凍らせます。
- 実験環境の設定 実験する場所の室温を測り、記録します。
- 実験開始
- それぞれの氷の最初の重さを測って記録します。
- すべての氷を同時に(同じテーブルに)並べ、ストップウォッチを開始します。
- 記録と観察
- 5分、10分、15分…と決まった時間間隔で、氷の残りの重さを測り、記録します。
- 氷の見た目(溶け方、表面の状態など)も細かく観察し、気づいた点をメモします。
- データ整理 すべての氷が完全に溶けきるまでの時間を測って記録します。
- 分析と考察 記録したデータから、水の成分と融解速度の関係をグラフ化し、なぜ差が出たのか、科学的な視点から考察をまとめます。
自由研究から発見したアイデア
アイスクリームが溶けにくい水を探せ!
この実験で最もゆっくり溶けることがわかった水を使って、アイスキャンディやシャーベットを作ってみましょう。そのアイスキャンディが、他の水(水道水など)で作ったものと比べて、本当に溶けにくいのかを検証します。この研究は、暑い夏でも溶けにくいアイスクリームを作るためのヒントになるかもしれません。
氷のコーティング実験
水以外の液体(例えば、水あめを薄めたもの、オリーブオイルなど)で氷の表面をコーティングすると、氷は溶けにくくなるでしょうか?氷を溶けにくくする「秘密のバリア」を探る実験をしてみるのも面白いでしょう。これは、冷凍食品を新鮮に保つための新しい技術開発につながるかもしれません。
この自由研究に関連する仕事
- 食品開発研究者 アイスクリームや冷凍食品など、温度変化に敏感な製品の品質を保ち、最適な食感を実現するための研究を行います。氷の溶け方をコントロールする技術は、この分野で非常に重要です。
- 気象学者・海洋学者 海水の凍結や氷の融解速度は、地球の気候変動や海流に大きな影響を与えます。北極や南極の氷が溶けるスピードを予測し、地球の未来を研究する上で、水の成分と融解速度の関係は基礎知識となります。
- 化学者 水溶液中の不純物(溶けているもの)が、その物質の性質(凝固点や融点)にどう影響するかを研究する仕事です。この実験の根本的な原理を解明するプロフェッショナルです。
まとめ
今回の「氷の融解速度」の実験は、私たちの生活に欠かせない「水」に秘められた、奥深い科学のルールを発見する旅です。水道水、ミネラルウォーター、海水といった一見同じに見える水でも、たった少し溶けている成分が違うだけで、氷になったときの性質が変わり、溶けるスピードに影響を与えるかもしれないという発見は、科学の面白さを教えてくれます。実験の「条件を揃える」という大切な科学のステップを学びながら、ぜひ、あなただけの「溶け方の秘密」突き止めて、大きな発見につなげてください。
関連書籍
身近な仕事について考えてみよう!
- 仕事のことを通じて学んだこと、楽しかったこと、難しかったことを書いてみましょう。
- テーマについての新しい発見や、自分が感じたことをまとめます。
- 今後、さらに調べてみたいことや、他の人に教えたいことがあれば、それも書いてみましょう。





