世界の教育|「好き」を仕事にする力を育む!IT先進国エストニアの教育が教えてくれる、AI時代を生き抜くヒント

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教育制度の特徴

エストニアの教育制度の大きな特徴は、「平等」と「自由」です。
まず、7歳から始まる9年間の義務教育はもちろん、その前の就学前教育から大学まで、原則として授業料が無料です。家庭の経済状況にかかわらず、誰もが質の高い教育を受けられるチャンスがあります。さらに、国が「これを教えなさい」と細かく決めるのではなく、教育の大きな目標を示すだけ。それぞれの学校や先生が、自分たちの地域や生徒に合わせて、自由にカリキュラムを組むことができます。これにより、子どもたちの興味や好奇心を引き出す、創造的な授業が生まれやすくなっています。

教育方法

エストニアの教育方法で最も特徴的なのは、徹底したITの活用です。
なんと、小学1年生からプログラミングが必修科目となっており、ロボット工学やアプリ開発なども学びます。これは、ITスキルを身につけることだけが目的ではありません。「物事を順序立てて考える力(論理的思考力)」や、「ITを使って社会の問題を解決する力」を育むことを重視しているのです。また、デジタル教科書が普及しており、重いカバンを持って通学する必要もありません。授業では、グループで協力して課題に取り組む「プロジェクト学習」が多く取り入れられ、子どもたちの自主性やコミュニケーション能力を育んでいます。

教育への取り組みや支援

エストニアが教育先進国になった背景には、国の強力なサポートがあります。その象徴が「e-kool(電子学校)」というオンラインシステムです。

これは、生徒の成績、宿題、授業の予定、先生からの連絡などを、すべてインターネット上で管理する仕組みです。生徒はもちろん、保護者も先生も、いつでもどこでも情報を確認できます。これにより、先生の事務作業が減り、子どもたちと向き合う時間が増えました。保護者も子どもの学習状況をリアルタイムで把握できるため、家庭でのサポートがしやすくなっています。

このようなデジタル化は、国が1990年代後半から進めてきた「タイガーリープ・プログラム」という、国内の学校すべてにパソコンとインターネットを整備する計画から始まりました。国を挙げて、未来への投資として教育に力を入れているのです。

子供達の1日の過ごし方

エストニアの子どもたちの一般的な一日を見てみましょう。

午前中は、学校で授業を受けます。授業が終わるのは午後2時ごろと、日本より少し早めです。そして、放課後は多くの生徒が「ホビースクール」と呼ばれる場所に向かいます。これは、日本の学童保育と習い事を合わせたようなもので、月額数千円ほどで様々な活動に参加できます。プログラムはとても多様で、プログラミングやロボット工学といったIT系のものから、音楽、ダンス、アート、乗馬、セーリングなど、自分の興味に合わせて好きなことをとことん追求できる環境が整っています。

勉強だけでなく、自分の「好き」を伸ばす時間も大切にしているのが、エストニア流の過ごし方です。

教育と社会の関係

エストニアでは、教育が社会の発展と深く結びついています。

子どもの頃からIT教育を受けて育った世代が、社会に出て新しいサービスや産業を生み出しています。例えば、世界中で使われている無料通話アプリ「Skype(スカイプ)」や、海外送金サービスの「Wise(ワイズ)」は、エストニアで生まれました。

また、エストニアは「電子政府」としても有名で、選挙の投票や会社の設立など、行政手続きのほとんどがオンラインで完結します。このような社会だからこそ、子どもの頃からデジタルツールを使いこなす能力を身につけることが不可欠なのです。教育が国のIT化を支え、国のIT化がさらに新しい教育を生むという、素晴らしいサイクルが生まれています。

国が抱える教育の課題と未来

    世界トップレベルの教育を誇るエストニアですが、課題も抱えています。

    一つは、「教師不足」と「教師の高齢化」です。IT企業などの給料が高い職業に人気が集まり、若い世代の教師が少なくなっているのです。また、国内にはエストニア語で学ぶ学校と、ロシア語で学ぶ学校があり、両者の間に学力や将来の選択肢で差が生まれてしまう「教育格差」も問題となっています。

    しかし、エストニアはこれらの課題にもITを使って立ち向かおうとしています。AI(人工知能)を活用して、一人ひとりの生徒に最適な学習プランを提案するシステムの開発や、教師の給与を引き上げるなどの改革を進めています。未来を見据えて、常に変化し続けているのです。

    教育と文化や価値観の関係

    「失敗はデータ」と捉えるチャレンジ精神旺盛な文化

    小学校からプログラミングを学び、試行錯誤を繰り返すことが当たり前の教育を受けて育ったエストニアの人々は、失敗を「次に活かすための貴重なデータ」と捉える傾向があります。この価値観が、SkypeやWiseといった世界的な企業を生み出す「スタートアップ文化」の土台となっています。新しいアイデアがあれば、若くてもどんどん挑戦し、起業することが特別なことではない、という空気が社会全体にあります。

    「無駄をとことん嫌う」効率性を重視する価値観

    行政手続きから学校の連絡まで、あらゆるものがデジタル化された社会で育つため、「紙でのやり取り」や「行列に並ぶこと」を非効率で無駄なことだと感じるようになります。どうすればもっと速く、もっと楽にできるかを常に考えるのが当たり前。この徹底した効率性へのこだわりが、国のデジタル化をさらに加速させる原動力にもなっています。

    「個人」を尊重し、信頼で成り立つ社会文化

    エストニアの教育は、先生が生徒一人ひとりの進捗をデータで把握し、個性に合わせた学びをサポートします。このように、子どもの頃から「個人」として尊重される経験を通じて、他者を尊重し、同時に自分自身の行動に責任を持つという価値観が育まれます。オンライン投票が成り立つ背景にも、「国が国民を信頼し、国民も国(のシステム)を信頼する」という、教育によって育まれた相互の信頼関係があります。

    「歌」で独立を勝ち取った、文化とアイデンティティへの誇り

    エストニアは、1991年にソ連から独立する際、武器ではなく、人々が歌を歌うことで独立を成し遂げた「歌う革命」で知られています。この歴史から、国語(エストニア語)や自国の文化、芸術を学ぶことを非常に大切にしています。最先端のIT教育と並行して、伝統的な合唱や民族舞踊などの文化活動も盛んなのは、「自分たちのアイデンティティを大切にしながら、未来を切り拓く」という強い意志が教育の根底にあるからです。

    まとめ

    エストニアの教育の秘密は、単にIT技術が進んでいることだけではありませんでした。その根底には、「すべての子どもに平等な機会を与え、未来社会を生き抜くために必要な力を育む」という、国の強い意志がありました。

    ITを文房具のように当たり前に使いこなし、自分の「好き」を自由に追求する。そして、教育で身につけた力で、社会をより良くしていく。エストニアの教育は、私たちに「これからの時代、本当に大切な学びとは何か」を教えてくれます。この記事を読んだ君も、自分の未来、そして日本の未来のために、どんな力が必要になるのかを考えてみる、良いきっかけになったのではないでしょうか。

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