教育制度の特徴
ポルトガルの教育の大きな特徴は、6歳から18歳までの12年間が義務教育であることです。これは、小学校から高校卒業まで、すべての子どもたちが学校で学ぶことが法律で決められていることを意味します。日本の義務教育は9年間なので、それより3年も長いですね。
教育は、大きく分けて以下のようになっています。
- 就学前教育(3~5歳) 幼稚園。義務ではありませんが、多くの子供たちが通います。
- 基礎教育(6~15歳、1~9年生) 3つのサイクルに分かれていて、日本の小中学校にあたります。
- 中等教育(15~18歳、10~12年生) 日本の高校にあたり、大学進学を目指すコースや、職業技術を学ぶコースなどに分かれます。
ほとんどの子どもたちが授業料無料の公立学校に通っています。
教育方法
かつてのポルトガルは、先生が話すことをひたすら覚える「暗記中心」の授業が多かったと言われています。しかし、最近では大きく変化しています。
大切にされているのは、生徒たちが自分で課題を見つけ、調べ、発表する「探究型」の学習です。グループで話し合ったり、プロジェクトを完成させたりする授業が増えています。また、「市民性(Cidadania)」という授業では、社会の問題について考え、自分に何ができるかを討論するなど、ただ知識を学ぶだけでなく、社会の一員としてどう生きるかを学ぶことに力を入れています。
教育への取り組みや支援
ポルトガルでは、「すべての子どもに教育の機会を」という考え方がとても大切にされています。
- 経済的な支援 家庭の経済状況が厳しい子どもたちのために、教科書代や給食費、学用品などを補助する制度が整っています。
- インクルーシブ教育 障がいのある子もない子も、同じ教室で一緒に学ぶ「インクルーシブ教育」が進んでいます。特別な支援が必要な生徒一人ひとりに合わせて、専門の先生がサポートします。
- 放課後プログラム 「Escola a Tempo Inteiro(フルタイムの学校)」という取り組みにより、多くの学校で放課後に宿題のサポートや、スポーツ、アートなどの活動が行われており、共働きの家庭を支えています。
子供達の1日の過ごし方
- 登校 朝9時ごろに授業が始まります。
- お昼休み なんと1時間半から2時間もの長いお昼休みがあります。学校の食堂で食べる子もいれば、一度家に帰って家族と昼食をとる子もたくさんいます。家族との時間を大切にする文化が表れていますね。
- 下校 授業が終わるのは午後4時〜5時ごろ。
- 放課後 宿題を終えた後は、サッカーや水泳、音楽やダンスなど、様々な習い事をして過ごす子が多いようです。
教育と社会の関係
かつてポルトガルは、ヨーロッパの中でも識字率(文字の読み書きができる人の割合)が低い国の一つでした。しかし、国全体で教育に力を入れたことで、経済が大きく発展しました。教育が、国を豊かにし、人々の生活を向上させる力になることを証明しています。
一方で、大学を卒業しても希望する仕事に就くのが難しいという課題もあり、教育で学んだことを社会でどう活かしていくかが、重要なテーマとなっています。
国が抱える教育の課題と未来
ポルトガルの教育は、世界の様々な国々と比較する学力調査(PISA)で年々成績を上げています。しかし、まだ課題も残っています。
- 教育格差 都市部と地方での教育環境の差が課題です。すべての子どもたちが、住んでいる場所に関係なく質の高い教育を受けられるように、国は特別な支援が必要な地域の学校(TEIP)に多くの予算を配分するなどの努力を続けています。
- 中退率 義務教育が12年に延長されたことで、高校を中退してしまう生徒をどう減らしていくかが大きな挑戦です。
未来に向けて、ポルトガルはデジタル技術の活用や、英語教育、そして社会の問題を自分ごととして考える「市民性教育」にさらに力を入れ、世界で活躍できる人材を育てることを目指しています。
教育と文化や価値観の関係
「家族が一番」という価値観と長い昼休み
ポルトガルの学校にある1時間半から2時間もの長い昼休みは、多くの子どもたちが一度家に帰り、家族と昼食をとるための大切な時間です。この毎日の習慣が、幼い頃から「家族との時間や対話を最優先する」という価値観を自然に育んでいます。多世代が近くに住み、頻繁に集まるポルトガルの強い家族主義は、このような教育システムの背景と深く結びついています。
歴史教育が育む「サウダーデ(郷愁)」と国民的アイデンティティ
ポルトガルの歴史教育では、15世紀から16世紀にかけての世界的な大航海時代の栄光が詳しく教えられます。先人たちが未知の海へ乗り出し、世界を切り開いたという歴史は、ポルトガル人の誇りです。この誇りと、失われた過去の栄光を想う切ない感情「サウダーデ」は、国民的なアイデンティティの一部となっています。これは、国の歴史を深く学ぶ教育が、人々の心に共通の感覚を根付かせている良い例です。
インクルーシブ教育と多様性への寛容さ
ポルトガルは、障がいの有無や国籍に関わらず、すべての子どもが同じ教室で学ぶ「インクルーシブ教育」の先進国です。また、歴史的にアフリカやブラジルなど多くの国と交流があり、様々な文化的背景を持つ人々が共に暮らしています。子どもの頃から多様な友人と共に学ぶ環境が、異なる文化や価値観を受け入れる寛容な精神を育み、ポルトガル社会の持つオープンな雰囲気につながっています。
「市民性教育」と社会への当事者意識
近年導入された「市民性(Cidadania e Desenvolvimento)」という必修科目は、人権、環境、メディアリテラシーといった社会問題を自分ごととして考え、行動することを促します。この教育は、若者たちが社会や政治に対して無関心になるのではなく、「自分たちの手でより良い社会を創る」という当事者意識を持つきっかけとなり、ボランティア活動や社会活動への参加意欲を高めています。
まとめ
ポルトガルの教育は、長い義務教育期間や、家族との時間を大切にするお昼休みの習慣など、ユニークな特徴がたくさんありました。そして、過去の課題を乗り越え、すべての子どもたちが未来を切り開くための力を身につけられるように、今も変化し続けています。
日本の教育と比べてみて、どんなところが似ていて、どんなところが違うと感じましたか?世界の国々の教育を知ることは、私たちの学びのあり方を考える、とても良いきっかけになるはずです。
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