世界の教育｜すべての子供に学びの翼を！アルバニアのインクルーシブ教育が描く、多様性を力に変える未来

INDEX

教育制度の特徴

アルバニアの教育制度は、日本と少し似ているところと、違うところがあります。
まず、子供たちは保育園や幼稚園（0歳〜6歳）に通った後、6歳から15歳までの9年間が義務教育となります。この9年間の基礎教育は、国が特に力を入れている部分です。
義務教育を終えた後は、高校に進学します。高校には、大学進学を目指す普通科と、仕事に就くための専門的な技術を学ぶ職業科があり、生徒は自分の将来に合わせて道を選びます。その後、さらに学びたい人は大学へと進学します。
国全体で教育を大切にしており、公立の学校だけでなく、私立の学校も増えています。

教育方法

アルバニアの教室も、変化の真っ最中です。

これまでは、先生が前に立って話をし、生徒が静かに聞くという伝統的な授業が中心でした。しかし最近では、もっと子供たちが主役になるような、新しい教育方法が積極的に取り入れられています。

グループワーク　生徒同士で話し合いながら課題を解決します。
ゲームや遊びを取り入れた学び　授業がまるでゲームのように感じられ、子供たちが楽しみながら学べる工夫がされています。
プロジェクト型学習　ひとつのテーマについて、生徒が自分たちで調べたり、作品を作ったりします。

このように、先生が一方的に教えるのではなく、生徒一人ひとりの「なぜ？」「どうして？」という気持ちを大切にし、自分で考える力を育てる授業へと変わってきています。

教育への取り組みや支援

デジタル教育の推進　パソコンやタブレットを使った授業を増やし、子供たちが将来必要となるデジタルスキルを身につけられるようにしています。
先生のスキルアップ　先生たちが新しい教育方法を学べるような研修プログラムを全国で実施しています。
インクルーシブ教育　ロマ民族の子供たちや、障害のある子供たちなど、これまで学校に通うのが難しかった子供たちも、みんなと一緒に学べる環境づくりに力を入れています。ユニセフなどの国際機関もこの活動を強く支援しています。
心のケア　学校に専門のカウンセラーを配置し、いじめや悩み事など、子供たちの心の健康をサポートする体制を整えています。

子供達の1日の過ごし方

アルバニアの子供たちは、どんな一日を過ごしているのでしょうか？

朝、学校に行くと、一日中同じ教室で、同じクラスメートと過ごします。先生が教科ごとに入れ替わりで教室にやってくるスタイルは、日本の小学校と似ていますね。

お昼ごはんの時間は、お家から持ってきたお弁当を食べるのが一般的です。友達と自分のお弁当のおかずを分け合うこともよくあり、これは「食べ物を持っていない人の前で、自分だけ食べるのは失礼」というアルバニアの文化から来ているそうです。

放課後は、スポーツやアートなどのクラブ活動もありますが、日本ほど盛んではありません。多くの子供たちは家に帰り、宿題をしたり、家族や友達と過ごしたりします。都市部では塾に通う子もいますが、地方では自然の中で遊ぶことも多いようです。

教育と社会の関係

アルバニア社会では、教育は「より良い生活を送るためのパスポート」だと考えられています。国民の識字率（文字の読み書きができる人の割合）は98%以上と非常に高く、人々が教育をいかに大切にしているかがわかります。

かつての共産主義時代が終わり、国が民主化してからは、教育は社会を豊かにし、ヨーロッパの一員として発展していくための重要なカギとされています。しかし、都市部と地方では学校の設備や教育の質に差があるなど、社会的な課題も教育に影響を与えています。

国が抱える教育の課題と未来

多くの進歩を遂げているアルバニアの教育ですが、いくつかの課題も抱えています。

教育予算の問題　国の教育に使うお金が、他のヨーロッパの国々と比べるとまだ少ないのが現状です。特に地方の学校では、校舎が古かったり、教材が不足したりしています。
格差の問題　家庭の経済状況や、住んでいる場所によって、受けられる教育に差が生まれてしまっています。
頭脳流出（ブレイン・ドレイン）　教育を受けた若い人たちが、より良い仕事や機会を求めて国外へ出て行ってしまうという深刻な問題もあります。

しかし、アルバニアは未来に向かって進んでいます。EU（欧州連合）への加盟を目指し、その基準に合うように教育制度をさらに良くしようと努力を続けています。デジタル教育や職業訓練に力を入れ、若者たちが国内で夢をかなえられるような国づくりを進めているのです。

教育と文化や価値観の関係

家族と共同体への強い絆

「分け合う」文化 アルバニアの子供たちが学校でお弁当を分け合う習慣は、単なる優しさだけではありません。これは、歴史的に多くの困難を経験してきた中で培われた、「困った時はお互い様」という共同体の精神が教育の場にも根付いている例です。家庭では、年長者を敬い、家族の結びつきを何よりも大切にするよう教えられます。この価値観が学校生活にも自然と反映され、友達を「家族」のように大切にし、助け合う文化に繋がっています。

おもてなしの心「ベサ（Besa）」

約束と信頼の文化 アルバニアには「ベサ」という、「約束は命をかけて守る」「客人を手厚くもてなす」という古くからの行動規範があります。これは、学校の道徳教育や歴史の授業の中でも、国の誇るべき伝統として教えられます。例えば、かつてユダヤ人が迫害から逃れてきた際に、多くのアルバニア人が危険を顧みずに彼らをかくまった歴史は、この「ベサ」の精神を象徴する物語として語り継がれています。この教えが、見知らぬ人にも親切で、一度結んだ約束を非常に重んじる、誠実な国民性を育んでいます。

逆境に負けない強さと向上心

努力を尊ぶ文化 アルバニアは、長年の鎖国政策や共産主義体制の崩壊といった、厳しい時代を乗り越えてきました。教育の場では、こうした国の歴史を学び、困難を乗り越えてきた先人たちの努力を尊ぶことが教えられます。これにより、「教育こそが、自分と国の未来を切り開くための最も重要な手段である」という強い価値観が国民に共有されています。親が子供の教育に非常に熱心なのも、自分たちが経験した苦労を子供にさせたくない、教育によってより良い人生を歩んでほしいという強い願いの表れです。このハングリー精神が、高い識字率や学習意欲に繋がっています。

宗教的な寛容さ

多様性を受け入れる文化 アルバニアは、イスラム教、キリスト教（カトリック、正教会）など、様々な宗教が共存している珍しい国です。学校教育では、特定の宗教を押し付けることはなく、お互いの文化や宗教の違いを尊重することの重要性が教えられます。これにより、宗教的な対立が少なく、異なる背景を持つ人々が平和に共存できる社会の基盤が作られています。これは、アルバ.ニアが世界に誇るべき文化的な特徴の一つです。

まとめ

アルバニアは、過去の歴史を乗り越え、教育の力で新しい国づくりを進めている、活気あふれる国です。伝統的な学びを大切にしながらも、子供たちが主役となる新しい教育へと大きく舵を切っています。

まだ解決すべき課題はありますが、「すべての子供たちに明るい未来を」という強い意志のもと、国や人々が一体となって努力を続けています。アルバニアの子供たちの笑顔と未来は、この国の希望そのものなのです。

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