世界の教育｜困難を乗り越え、未来を紡ぐエリトリアの教育が育む強い心と共同体の文化

INDEX

教育制度の特徴

エリトリアの教育制度は、5-3-4制が基本ですが、その最大の特徴は、国家建設と人材育成に重きを置いている点です。小学校は、基本的な読み書き、算数、母語、英語、科学などを学び、ユニセフの支援を受けたプログラムも展開されています。しかし、高校卒業後（18歳）には、多くの若者が約6か月間の軍事訓練（兵役）を受けます。大学に進学できるか、どの専門分野に進むかは、訓練中の試験結果と政府の割り振りによって決まります。これは、国として必要な人材を育成するという強い意図の表れです。海外留学は非常に優秀な若者に限られ、政府にとっては「賭け」とも言われるほど、人材の重要性が強調されています。

教育方法

エリトリアの学校では、読み書きや算数といった基礎学力に加え、母語や英語、科学といった科目が教えられています。内戦の影響で教育インフラが十分に整備されていない地域も多いですが、ユニセフなどの支援を受けて、学校の設置や教科書、椅子の提供が進められており、子どもたちが基本的な学習機会を得られるよう努められています。

教育現場では、限られたリソースの中で教員が工夫を凝らし、子どもたちが学びを楽しめるような指導が行われています。また、近年はICT（情報通信技術）を活用した教育の導入も試みられていますが、専門家の不足が課題となっています。一方で、社会復帰を目指す元兵士への職業訓練として、美容師養成コースのような実践的な技能教育も行われており、社会のニーズに応じた多様な教育が模索されています。

教育への取り組みや支援

ユニセフの支援　ユニセフは、子どもたちが学校に通えるよう、学校の設置や教材の提供、教員の育成など、基礎教育の改善に継続的に取り組んでいます。特に「コミュニティ・エンパワメント・エデュケーション（CEE）」プログラムを通じて、読み書き、算数、母語、英語、科学を学ぶ機会を提供し、男女の差別なくすべての子どもたちが学校に通える環境づくりを支援しています。
日本政府（JICA、外務省）の支援　日本は、エリトリアの国家再建努力を支援するため、教育分野を含む基礎生活分野の改善にODA（政府開発援助）を通じて貢献しています。特に、長年の内戦による「教育の空白」を埋めるための高等教育分野での中核人材育成の必要性を認識し、日本の知見の導入をエリトリア政府が強く望んでいます。また、世界銀行と協力して、兵士の社会復帰のための職業訓練プログラムなども支援しています。
NGOなどによる支援「わかちあいプロジェクト」のように、職業訓練校でのコンピュータ訓練コース開設を支援するなど、特定の分野に特化した支援も行われています。また、「世界こども財団」は、東京オリンピック・パラリンピックに向けたエリトリアの参加支援を通じて、子どもや若者の健全育成に寄与しています。

子供達の1日の過ごし方

エリトリアの子どもたちの具体的な一日の過ごし方に関する詳細な情報は見つかりにくいですが、一般的な開発途上国の子どもたちと同様に、学校での学習の他に、家庭での手伝いや地域での活動が日課の一部となっていると考えられます。

学校では、前述の通り基礎的な科目を学び、読み書きや算数といった基礎学力の習得に努めています。ユニセフの支援を受けた学校に通うハリマさんのように、「学校で学んだことを家族にも教えてあげたい」「将来はお医者さんになりたい」と夢を語る子どもたちの姿も見られます。放課後や週末は、友達と遊んだり、家族と一緒に過ごしたり、地域活動に参加したりする中で、社会性や協調性を育んでいるでしょう。都市部と地方では、生活環境や教育へのアクセスに違いがある可能性も考えられます。

教育と社会の関係

エリトリアにおける教育は、国家の安定と発展に深く結びついています。独立戦争による長期的な混乱の後、国は人的資源の育成を最重要課題の一つと捉えており、教育はそのための基盤と位置づけられています。

兵役と教育　高校卒業後の兵役は、国民全員が国防に貢献するという思想の現れであり、その後の大学進学や職業選択に深く関わっています。個人の自由な選択よりも、国が求める人材の育成が優先される傾向にあります。
人材不足の解消　30年にも及ぶ戦争の影響で、国家の発展に必要な人材が質・量ともに不足しており、教育はその人材不足を解消するための重要な手段とされています。大学卒業後の仕事が政府によって割り振られる仕組みも、この人材育成戦略の一環です。
社会復帰支援　長年の紛争で兵士となった人々の社会復帰を円滑に進めるため、職業訓練などの教育的支援が実施されており、社会全体の安定に貢献しています。
国民の意識向上　ユニセフの支援記事に見られるように、教育は子どもたちに希望を与え、将来の夢を育む場であり、地域コミュニティの活性化にも繋がっています。

国が抱える教育の課題と未来

エリトリアの教育は、国家再建と発展のための重要な柱である一方で、依然として多くの課題を抱えています。

教育の空白と人材不足　30年間にわたる内戦の影響で教育機会が失われた世代がおり、国家の発展に必要な人材が様々な分野で不足しています。特に、高等教育における中核人材の育成は喫緊の課題です。
低い就学率　2007年時点の小学校就学率は41.2%と非常に低く、すべての子どもたちが教育を受けられる環境が十分に整っているとは言えません。教育の欠如は、子どもたちから未来への「希望のあかりを奪う」と指摘されています。
インフラとリソースの不足　学校設備や教材、教員の不足は、教育の質の向上を妨げる大きな要因となっています。特にICTを活用した教育の推進においては、専門家の育成が急務です。
政治的・社会的情勢の影響　憲法が未施行で国政選挙も行われていないなど、政治的安定性が教育制度にも影響を与えている可能性があります。若者の国外脱出も課題となっており、教育を受けた優秀な人材が国外に出てしまうことも懸念されます。

しかし、エリトリア政府は高等教育の充実に向けて日本の知見の導入を強く望むなど、教育改善への意欲を示しています。国際社会からの支援と国内の努力が結びつくことで、エリトリアの教育は、子どもたちに希望を与え、国の明るい未来を築くための重要な役割を果たすことが期待されています。

教育と文化や価値観の関係

国家と共同体への強い帰属意識

高校卒業後の兵役は、エリトリアの教育と社会を特徴づける大きな要素です。若者たちが一定期間、国のために奉仕することは、単なる義務に留まらず、国家への強い忠誠心と共同体意識を育みます。この経験を通じて、彼らは「自分たちは国の再建を担う一員である」という自覚を持ち、集団の中で協調し、助け合う精神を身につけます。これは、内戦後の国家建設において、国民が一体となって困難に立ち向かうための基盤となっています。

困難に屈しない「レジリエンス（回復力）」の精神

長年の紛争や教育インフラの不足という困難な状況の中で学んできた経験は、エリトリアの人々に強いレジリエンス（回復力）を育んでいます。限られたリソースの中でも学び続け、将来への希望を抱く子どもたちの姿は、逆境に負けずに前向きに進む精神の象徴です。ユニセフなどの支援を受けて、学びの機会を粘り強く追求する姿勢は、国民全体の粘り強さと適応能力という文化的な特性に繋がっています。

多様性を受け入れる多言語社会

エリトリアには多様な民族と言語が存在します。教育の中で母語が尊重されつつ、英語教育が取り入れられていることは、子どもたちが幼い頃から複数の言語に触れ、多文化を理解し、受け入れる土壌を形成しています。これは、異なる背景を持つ人々が共存する社会において、相互理解と寛容性を育む上で不可欠な要素であり、エリトリアならではの多様性を尊重する文化に繋がっています。

医療や社会貢献への強い意欲

ユニセフの支援を受けて学ぶ子どもたちの中に、「将来はお医者さんになりたい」「学校で学んだことを家族にも教えてあげたい」と語る声があるように、エリトリアの教育は、子どもたちに社会貢献への強い意欲を育んでいます。これは、長年の紛争で傷つき、多くの支援を必要としてきた社会状況を背景に、将来自分たちがこの国を支え、より良くしていくという責任感や使命感が培われていることを示しています。医療従事者や教育者といった分野への関心は、国民全体の福祉向上を目指す、エリトリア独自の奉仕の精神の表れと言えるでしょう。

まとめ

今回は、東アフリカの国、エリトリアの教育制度について深く探求しました。長年の紛争による困難を乗り越え、国が教育を通じて未来を築こうと努力している姿が見えてきました。兵役と教育の密接な関係、国家が必要とする人材を育成するための仕組み、そしてユニセフや日本など国際社会からの温かい支援は、エリトリアの子どもたちに学びの機会と希望を与えています。

高い就学率や十分な教育インフラがまだ整っているとは言えない現状もありますが、子どもたちの学ぶ意欲や、教育が社会を変える力を持つという信念は、この国の未来を照らす光となるでしょう。エリトリアの教育の進展は、国際社会にとっても重要な意味を持ちます。この自由研究が、皆さんがエリトリアという国、そして教育の力について深く考えるきっかけとなれば幸いです。

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