世界の教育｜豊かな教育が育むブルネイの心と絆、無償教育が織りなす文化と価値観

INDEX

教育制度の特徴

ブルネイ・ダルサラーム国の教育制度は、イギリスの教育制度を基盤としており、初等教育から高等教育まで無償で提供されているのが最大の特徴です。これは、豊かなオイルマネーに支えられた国ならではの取り組みと言えるでしょう。教育の段階は、「幼稚園（2年間）」、「小学校（6年間）」、「中学校（3年間）」、「高校（2年間）」、そして高等教育機関へと続きます。識字率は非常に高く、国民全員に質の高い教育機会を提供することを目指しています。イスラム教国家であるため、宗教教育もカリキュラムの重要な一部として組み込まれています。

教育方法

ブルネイの学校では、英語とマレー語が主要な教授言語として使用されています。特に、小学校高学年からは理数科目が英語で教えられるなど、国際的な競争力を意識したバイリンガル教育が進められています。授業は、知識の習得だけでなく、批判的思考力や問題解決能力を育むことを重視しています。グループワークやプレゼンテーションなども取り入れられ、生徒たちが主体的に学ぶ機会が提供されています。また、ICT教育にも力を入れており、多くの学校でコンピューターやタブレットを活用した授業が行われています。

教育への取り組みや支援

ブルネイ政府は、教育の質の向上に非常に積極的です。教育省は「2035年国家ビジョン」の一環として、国民の教育水準とスキルを向上させることを重点目標に掲げています。具体的には、教員の研修プログラムの充実、最新の教育機材の導入、そして国内外での奨学金制度の提供などが挙げられます。優秀な学生には、海外の有名大学への留学を支援する「シェル奨学金」などの制度も充実しており、高度な専門知識を持った人材の育成に力を入れています。また、特別支援教育の充実にも取り組んでおり、多様な学習ニーズを持つ子どもたちへの支援も行われています。

子供達の1日の過ごし方

ブルネイの子どもたちは、平均して午前7時30分頃に登校し、午後1時頃に授業が終わることが多いです。学校では、マレー語や英語、算数、理科、社会、イスラム教の授業のほか、体育や美術、音楽といった科目も学びます。昼食は自宅に戻って食べるか、学校の食堂を利用する生徒もいます。放課後は、スポーツクラブや宗教のクラスに参加したり、友達と遊んだり、自宅で宿題をしたりして過ごします。家族との時間を大切にする文化があり、夕食は家族全員で食卓を囲むことが一般的です。金曜日はイスラム教の集団礼拝があるため、学校が早く終わったり、授業がない日となることもあります。

教育と社会の関係

ブルネイでは、教育が個人の成功だけでなく、国家の発展に不可欠であると強く認識されています。政府は、高度な教育を受けた人材を育成することで、石油・ガス依存型経済からの脱却と、経済の多角化を目指しています。そのため、高等教育機関では、石油・ガス産業だけでなく、観光、IT、金融などの分野で活躍できる人材の育成にも力を入れています。また、イスラム教の価値観が社会の基盤となっているため、教育は単なる学力向上だけでなく、道徳心や倫理観、そして国家への忠誠心を育む上でも重要な役割を担っています。

国が抱える教育の課題と未来

ブルネイの教育が抱える主な課題の一つは、グローバル化する社会に対応できる実践的なスキルの育成です。豊富な天然資源に恵まれているゆえに、若者のentrepreneurship（起業家精神）や、民間セクターでの就職への意識を高めることが求められています。また、経済の多角化を進める上で、特定の産業に偏らない幅広い分野での専門人材の育成も課題です。しかし、政府はこれらの課題に対し、職業訓練の強化、高等教育カリキュラムの見直し、国際的なパートナーシップの推進など、積極的な取り組みを進めています。未来に向けて、ブルネイは質の高い教育を通じて、持続可能な社会と経済を築くことを目指しています。

教育と文化や価値観の関係

家族と共同体を重んじる心

ブルネイでは、教育が無償であることに加え、国民への医療費補助や住宅支援なども手厚く行われています。これにより、国民は経済的な心配が少なく、家族の絆や共同体との繋がりを非常に大切にする価値観が育まれています。教育を通して得た知識やスキルを、個人の成功だけでなく、家族やコミュニティ、ひいては国家の発展のために役立てようという意識が強いです。例えば、海外留学で学んだ若者が、その経験を故郷に還元するために戻ってくるケースが多く見られます。

宗教的・道徳的価値観の尊重

イスラム教が国教であるブルネイでは、幼い頃から宗教教育がカリキュラムに深く組み込まれています。これにより、子どもたちは学業と共に、イスラムの教えに基づく道徳心や倫理観、そして敬虔な信仰心を育みます。これは、日々の生活における振る舞いや、目上の人への敬意、公共の場でのマナーなど、ブルネイ社会全体の文化や価値観の基盤となっています。モスクが生活の中心にあり、金曜日の集団礼拝を大切にする文化も、教育によって培われる信仰心と密接に結びついています。

国家への忠誠心と社会貢献意識

教育が無償で提供されることは、国民が国からの恩恵を直接的に感じ、国家への強い忠誠心と感謝の念を育む要因となります。学校教育では、ブルネイの歴史や文化、国王への敬意が教えられ、国の発展に貢献することの重要性が強調されます。これにより、若者たちは将来のキャリア選択においても、公務員や国有企業など、国に奉仕する職を選ぶ傾向が見られます。これは、国家が提供する質の高い教育が、国民の社会貢献意識を高め、国の安定と発展に繋がる好循環を生み出していると言えるでしょう。

英語とマレー語のバイリンガル文化

教育現場での英語とマレー語のバイリンガル教育は、ブルネイならではの文化を形成しています。国民は幼い頃から二つの言語に触れることで、国際的なコミュニケーション能力を身につける一方で、自国の言語と文化への誇りも持ち合わせています。これにより、多様な文化が共存する国際社会において、自国のアイデンティティを保ちつつも、オープンに他文化を受け入れる柔軟な価値観が育まれています。例えば、若者の間では、英語のポップカルチャーを楽しみつつも、伝統的なマレー文化や習慣を大切にする傾向が見られます。

まとめ

ブルネイの教育は、潤沢な国家予算に支えられた無償教育と、イギリス式の高い水準を誇るカリキュラムが特徴です。バイリンガル教育やICT教育の推進、そして手厚い奨学金制度は、ブルネイの子どもたちが将来、国際社会で活躍できる力を身につけるための重要な土台となっています。石油依存からの脱却という国家的な目標に向けて、教育は社会と経済の多角化を推進する要として、その役割をますます大きくしています。ブルネイの教育は、子どもたちの個性を尊重しつつ、国家全体の未来を明るく照らす、希望に満ちた取り組みと言えるでしょう。

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