もっと便利なデジタル政府をデザインしてみよう!
現代社会ではスマートフォンやインターネットが当たり前になり、私たちの生活はデジタル化によって大きく便利になってきました。しかし、日本における行政サービスのデジタル化は、他国と比べて遅れていると言われています。オンラインでできるはずの手続きが窓口や郵送に依存していたり、各自治体ごとにバラバラのシステムで使いにくかったりするため、多くの時間や手間がかかってしまいます。そこで、本自由研究では「もっと便利なデジタル政府」をテーマに、現状の課題を調べ、子ども目線で改善アイデアを考えてみましょう。
- 身近な暮らしに直結しているから
住民票の取得や税金の申告など、私たちの生活には行政サービスが欠かせません。これらがスムーズに使えると、家族や学校、習い事の合間に書類手続きを済ませることができます。 - 未来の行政サービスをデザインする力を育むため
デジタル政府の改善にはIT技術だけでなく「ユーザーが本当に必要としていること」を理解する力が必要です。子どものうちから「誰のために、何を便利にすればよいか」を考える訓練をすることで、将来デザイナーやエンジニア、政策をつくる人として活躍できる可能性が広がります。 - 情報リテラシーを向上させるため
デジタル化の仕組みやセキュリティ、プライバシー保護などを調べることで、ネット上の情報を正しく理解し、自分や家族の個人情報を守る意識が身につきます。
自由研究のゴール
- 行政サービスのデジタル化の現状と課題を整理する
どんな手続きがオンライン化されているか、何がまだ紙や窓口で行われているのか、実際に調べてまとめる。 - ユーザー目線で「使いやすい」デジタル行政サービスの要素を理解する
実際に使った経験やインタビューをもとに、「どこがわかりにくかったか」「この機能があったら便利だ」と感じたポイントをリストアップする。 - 改善アイデアを提案し、簡単なデザインを作成する
ペーパープロトタイプや画面イメージ(ワイヤーフレーム)を描き、「もっと便利なデジタル政府」のモデルを考えてみる。
もっと便利なデジタル政府をデザインした例
マイナンバーカードとマイナポータル
マイナンバーカードは個人番号を使った身分証明のために全国で配布されていますが、実際には健康保険証や運転免許証としての活用がまだ十分とは言えません。また、「マイナポータル」というウェブサイトでは行政からの情報が確認できますが、操作が複雑でログインに時間がかかるという声があります。
e-Tax(確定申告のオンライン申請)
以前は紙の申告書を提出していた確定申告も、e-Taxを使えば自宅のパソコンやスマートフォンから申告できます。しかし、初回登録や電子証明書の取得が煩雑なため、使い始めるハードルが高いのが現状です。
自治体ごとのバラバラなオンラインサービス
各都道府県や市区町村ごとに独自の手続きサイトがあり、引っ越しや転校などで住民登録を移す際、住む地域によって手続き方法が違うため混乱しやすいです。
海外の先進例 エストニアのe‐Government
エストニアではオンラインでほぼすべての行政手続きが可能です。IDカードをスマホにかざすだけで住民票の取得から投票までできる仕組みが整っています。日本もこうした成功例から学ぶ点が多くあります。
研究を進めるうえで、以下のポイントに注目しよう!
- ユーザー体験(UX)の視点で見る
サイトやアプリを実際に使ってみて、「どこに何が書いてあるか見つけやすいか」「操作手順が直感的か」をチェックしましょう。子どもや高齢者など、さまざまな立場の人が使いやすいサービスを考えることが大切です。 - 情報のつながり(データ連携)の視点
各省庁・自治体が持っている情報をひとつにまとめることで、住民は何度も同じ情報を入力する手間を省けます。どのデータが連携されると便利か、リストアップしてみましょう。 - セキュリティとプライバシーの視点
個人情報を扱う以上、悪意ある第三者から守る仕組みが不可欠です。暗号化や二段階認証など、どんな仕組みを導入すれば安心かを調べ、まとめてみましょう。 - 多様なアクセス手段の視点
スマートフォンだけでなく、パソコンやタブレット、あるいは公共施設の端末からも利用できると、利用者の幅が広がります。子どもや高齢者も使いやすいUI(文字サイズや色使いなど)を工夫する方法を考えましょう。
自由研究の進め方
- 調査対象を決める
住民票発行、児童手当の申請、図書館の利用登録など「自分が興味を持てそうな行政手続き」をひとつ選びましょう。 - 現行サービスの利用体験をする
実際に手続きを行ってみて、ログインや入力フォームの使いにくい点、必要書類の分かりにくさなどをメモします。家族や友達、高齢者の人にも協力してもらい、感想を聞きましょう。 - 課題を整理する
体験した中で「なぜ使いにくいのか」「どの場面でストレスを感じたか」を箇条書きにまとめてみましょう。例えば「登録時に本人確認書類を郵送しなければならない」「ワンタイムパスワードを毎回入力するのが面倒」など、具体的に書き出します。 - 海外や他の自治体の先進事例を調べる
インターネットや図書館で、エストニアや韓国、デンマークなどのデジタル政府事例を調べ、どんな技術や仕組みを使っているかをまとめます。日本のどこに応用できそうかを考えてみましょう。 - 改善アイデアのスケッチを作成する
ペンと紙、あるいはパソコンで簡単な画面イメージ(ワイヤーフレーム)を描きましょう。ログイン画面や入力フォーム、問い合わせ窓口のチャット機能など、思いついた機能を自由に配置してみます。 - プロトタイプをテストする
家族や友達に「この画面を使ってほしい」とお願いし、操作してもらいましょう。そのときに「ここはわかりにくい」「もっと大きく文字を見たい」などの感想を聞いて、さらにブラッシュアップします。 - レポートにまとめる
調査の目的、現状の課題、改善アイデアのポイント、テスト結果などをまとめて、自由研究レポートとして仕上げましょう。
自由研究から発見したアイデア
- ワンストップのデジタルポータル
現在、各省庁や自治体ごとにバラバラなサイトが存在しますが、すべての行政手続きをここひとつで完結できるポータルサイトを提案します。ログインはマイナンバーカードを使い、申請書類のデータは一度登録すれば以降自動入力されるようにします。 - チャットボット+音声入力で手続きサポート
小学生にも使いやすいように、わからない言葉はチャットボットに質問すると回答が返ってきたり、音声で「住民票を取りたい」と話しかけると自動で該当ページに飛ぶ機能を入れます。 - 地域コミュニティと連携した「デジタルサポート窓口」
高齢者やインターネットが苦手な人向けに、地域の公民館や市民センターにデジタルサポート窓口を設置。ボランティアや職員が対面で手続きをサポートし、その場でスマホやタブレットを使わせてもらいながら教えてもらえる仕組みを作ります。 - ブロックチェーンを活用した安心のデータ管理
個人情報や申請手続きの履歴はブロックチェーンで管理することで、改ざんが難しくなり、安心してオンライン手続きができるようになります。
この自由研究に関連する仕事
- UX/UIデザイナー(ユーザーエクスペリエンス・デザイナー)
行政サービスのWEBサイトやアプリを設計し、誰にとっても使いやすく分かりやすい画面をデザインする仕事です。ユーザーテストを行い、改善を重ねることで市民の利便性を向上させます。
- ITプロジェクトマネージャー(行政システム担当)
政府や自治体が導入するITシステムの企画・開発・導入を全体的にコントロールする役割です。要件定義やベンダー選定、スケジュール管理などを行い、予算や納期を守りながらプロジェクトを成功に導きます。
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- 行政政策プランナー(デジタル改革担当)
中央省庁や自治体の職員として、デジタル政府推進の政策を企画立案します。法律や制度の観点から必要な改正を検討し、予算配分やガイドラインを作成。将来の行政ビジョンを描く役割です。
- セキュリティエンジニア(公的機関向け)
オンラインでやりとりされる個人情報を守るため、システムの脆弱性をチェックし、暗号化や認証技術を導入する仕事です。不正アクセスや情報漏えいを防ぐための対策を企画・実行します。
- データサイエンティスト(行政オープンデータ担当)
政府・自治体が保有するビッグデータを分析し、市民サービスの改善や新たな政策提案につなげる役割です。交通流や住民の相談内容など、さまざまなデータを活用して地域課題を可視化します。
自由研究のまとめ
デジタル政府の実現は、私たち市民の暮らしをより便利で安全にし、行政の効率化や透明性向上にもつながります。本自由研究では、現状の課題を体験や調査から整理し、海外や他地域の先進事例を参考にしながら、子どもならではの発想で改善アイデアを提案しました。UXの視点やセキュリティ、データ連携など、多角的に考えることで、単なる「便利さ」だけでなく、「安心・安全」「公平性」といった要素も大切だと気づいたはずです。将来、行政システムを支えるエンジニアや政策を立案する人材として活躍するための第一歩として、この自由研究をぜひ役立ててください。
参考リンク
- 厚生労働省「児童虐待の現状について」
- 全国児童相談所長会「児童相談所の仕組み」
- 児童虐待防止全国ネットワーク「子どもの虐待防止に向けて」
関連書籍
身近な仕事について考えてみよう!
- 仕事のことを通じて学んだこと、楽しかったこと、難しかったことを書いてみましょう。
- テーマについての新しい発見や、自分が感じたことをまとめます。
- 今後、さらに調べてみたいことや、他の人に教えたいことがあれば、それも書いてみましょう。