世界の仕事368|限られた空間で作物を育てる!街の畑をデザインする都市農業コーディネーターの挑戦

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街の畑をデザインする都市農業コーディネーターとは?

都市農業コーディネーターは、都市のビル屋上、遊休地、または壁面などの限られた空間を有効活用し、食料生産を行う「都市農園」を計画・管理する仕事です。農地の設計だけでなく、地域の住民や企業、行政と協力し、都市に暮らす人々の食育やコミュニティ活動の場づくりも行います。農作物の栽培技術と都市計画、コミュニティマネジメントの知識が求められる、未来志向の仕事です。

この仕事の最大の魅力は、「無機質な都市空間」を「緑あふれる生産的な空間」へと変えるクリエイティブな挑戦ができることです。あなたがデザインした屋上菜園が、新鮮な野菜を供給するだけでなく、ビルを冷やし、環境負荷を減らす「都市の肺」のような役割を果たします。また、農業を通じて、地域の子供たちが土に触れ、食べ物の大切さを学ぶ「生きた教材」を提供できます。高層ビルの上で、土と向き合いながら、都市の風景と人々の生活を良い方向に変えていく。これは、普通の農業にはない、スケールの大きなやりがいと、都市の未来を創るという大きな使命感を与えてくれます。食料自給率の向上と、都市の環境改善の両方を実現できる、地球に優しい仕事です。

都市農業コーディネーターの仕事とは?

都市農業コーディネーターの仕事は、単に野菜を育てることにとどまりません。多岐にわたる役割を担います。

  • 農園の設計と技術指導 企業ビルの屋上に、建物の強度や日照条件に合わせた軽量な土壌を使った水耕栽培や土耕栽培のシステムを設計します。また、そこで働くスタッフやボランティアに対して、病害虫対策や収穫方法などの技術指導を行います。
  • コミュニティの形成と食育活動 都市農園を住民に開放し、親子で参加できる収穫体験イベントや料理教室を企画・運営します。これにより、食への関心を高めるとともに、農園を中心とした地域の交流の場を作り出します。
  • ビジネスモデルの構築と行政との連携 収穫した野菜を、そのビル内のレストランや地域のスーパーに販売する流通ルートを構築します。また、都市計画の一部として農業を取り入れてもらうために、行政の担当者に対して企画や提案を行います。

        都市農業コーディネーターの魅力!

        1. クリエイティブな「畑のデザイン」ができる
          公園の片隅やビルの屋上など、限られた空間でどうすれば効率よく、美しく作物を育てられるかを考えるのは、まるでパズルのようです。たとえば、「壁を畑にする(垂直農法)」など、未来の農業技術を駆使する面白さがあります。
        2. 環境に貢献し、地球を守れる 都市の緑が増えることで、ヒートアイランド現象(都市の気温が上がること)を和らげたり、二酸化炭素を吸収したりできます。あなたがデザインした小さな畑が、地域全体の空気と温度を良くするヒーローになります。
        3. 食べ物の大切さを直接教えられる あなたが作った農園で、初めて土に触れた子供たちに、野菜が育つ過程を教えることができます。スーパーで売られている野菜が、「どこから来たか」を教える、食育の先生にもなれます。
        4. 多様なプロフェッショナルとチームを組める 都市計画家、建築家、企業の経営者、地域の主婦、そしてもちろん農家など、さまざまな専門家と協力します。一つの農園を作る過程で、多くの人の「すごいスキル」を間近で見ることができます。
        5. 平均的な年収や報酬(スキルと経験による)
          この仕事はまだ新しい専門職ですが、都市開発や環境コンサルティングの分野に近いです。企業やNPO、自治体などで働く場合、スキルや経験によって幅がありますが、平均的な年収は350万円から600万円程度が目安です。高度な専門知識やビジネス設計能力があれば、年収1000万円を超えるフリーランスのコンサルタントとして活躍することも可能です。

        都市農業コーディネーターになるには?

            1. 【農業の基本を学ぶ】まずは「土」と「種」の先生になろう!
              家庭菜園から始めて、土の作り方や水のやり方など、作物を育てる楽しさと難しさを学びます。農業高校や大学で専門知識を身につけるのも良いでしょう。
              育てている野菜の病気のサインに、すぐに気づくことができますか?
            2. 【都市計画の視点を養う】街づくりに興味を持とう!
              建築や都市計画、環境科学など、都市の仕組みやルールを学びます。どのようにして都市の限られたスペースを有効活用できるか、アイデアを膨らませます。
              もし、あなたの学校の屋上が空いていたら、どんな畑をデザインしますか?
            3. 【コミュニケーション能力を磨く】地域の「つなぎ役」になろう!
              地域のボランティア活動やイベント運営に参加し、さまざまな年齢や考え方を持つ人たちと協力する経験を積みます。農園の計画には、住民の理解が不可欠です。
              自分のアイデアを、知らない大人にも分かりやすく説明できますか?
            4. 【資格や専門知識を習得する】知識という武器を持とう!
              農業関連の資格(農業経営士など)や、造園、環境教育関連の知識を学びます。ビジネスとして成立させるためのマーケティングや経営の知識も重要です。
              あなたが提案する畑が、本当にビジネスとして成り立つか、計算できますか?
            5. 【実践の場に飛び込む】都市農業の現場で経験を積む!
              地域の市民農園や、都市農業に取り組むNPO、企業のCSR部門などでインターンシップやボランティアとして働き、実際のコーディネート業務を経験します。

              この分野で有名なプロフェッショナル

              セヴ・ヴァンドーウェ(Steven Dring)とリチャード・バルラウ(Richard Ballard)

              都市農業の分野で世界的な注目を集めているのが、イギリス・ロンドンを拠点とするスタートアップ「Growing Underground」の創設者である、セヴ・ヴァンドーウェとリチャード・バルラウです。彼らは、第二次世界大戦中に使われていた地下鉄のトンネルという、都市の地下空間を再利用して、環境制御型の農場(垂直農場)を設立しました。LED照明を使って水耕栽培で野菜を育て、収穫したての新鮮なハーブや野菜をロンドン市内のレストランや小売店に供給しています。輸送にかかるエネルギーを大幅に削減し、天候に左右されない安定した生産を実現した彼らの挑戦は、食料安全保障と持続可能な都市のあり方を世界に示しました。都市の未利用空間に「食料革命」を起こしたパイオニアとして知られています。

              マーケィングの観点から見ると?

              都市農業コーディネーターは、将来的に地球規模の課題解決に不可欠な仕事になります。

              グローバルな視点で見ると、世界中の人口は都市に集中し続けており、食料の輸送距離が長くなることによる環境負荷や、災害時の食料供給不安が深刻な問題です。

              都市農業コーディネーターは、この課題に対して、都市の真ん中で食料を生産する「食のサプライチェーン(供給の仕組み)の短縮」という解決策を提供します。これは、地球温暖化の原因となるCO2排出量を減らす「カーボンニュートラル」な社会の実現に貢献します。さらに、気候変動で従来の農地が使えなくなるリスクが高まる中で、屋内や垂直農場といった「環境制御型の農業技術」の普及を担うことで、食料の安定供給に貢献する「未来の食料安全保障の専門家」となります。

              この仕事は、都市の緑化、環境保全、コミュニティの活性化、そして食料問題の解決という、SDGs(持続可能な開発目標)の多くの目標達成に貢献する、非常に素晴らしい仕事なのです。

              自由研究の例

              都市農業コーディネーターの仕事をもっと知りたいあなたに、こんな自由研究はいかが?

              ステップ1 あなたの街の「空いているスペース」を見つけてみよう!

              • 通学路や家の周りで、「ここ、何か作れそうだな」と思う空き地や屋上はありますか?
              • その場所の広さ、日当たり、水の確保のしやすさを調査し、地図や写真に記録して、どんな野菜を育てられそうか考えてみよう。

              ステップ2 世界の「変な場所の畑」を調べてみよう!

              • ビルの屋上や地下以外に、驚くような場所で農業をしている事例を他に知っていますか?
              •  海外の垂直農場(タワー型農場)や、廃墟を利用した農園など、ユニークな事例を3つ調べ、なぜその場所を選んだのか理由を考察しよう。

              ステップ3 「採れたて野菜」の環境効果を計算してみよう!

              • もし、あなたの家の食卓の野菜が全て、学校の屋上で採れたものだったら、どれくらい環境に優しいと思う?
              • スーパーで買った野菜の「産地」を調べ、家までの輸送距離を地図で測ろう。もし、その野菜があなたの家の近くで採れた場合と比べて、どれくらいCO2(二酸化炭素)の排出量が減るかを比較してみよう。

              ステップ4 未来の都市農業をデザインしよう!

              • あなたが10年後に住んでいる街は、どんな形をしているだろう?
              • 段ボールや粘土、またはデジタルツールを使って、ビルと畑が一体化した未来の都市の模型やイラストを作成し、その街での人々の生活を想像してレポートにまとめよう。

              まとめ

              都市農業コーディネーターは、私たちが住む都市と、私たちの食べる「食」を結びつける、未来のスペシャリストです。彼らは、単に作物を育てるだけでなく、都市に暮らす人々の生活に「緑」と「つながり」をもたらし、環境問題の解決に貢献します。もしあなたが、街の風景を変えるクリエイティブな仕事に興味があり、食べ物のことや地球の未来について熱い想いを持っているなら、この仕事はぴったりです。まずは、身近なプランターで種をまき、野菜を育てることから始めてみましょう。小さな一歩が、いつか都市全体を緑でいっぱいにする、壮大なプロジェクトにつながるかもしれません。あなたの手で、未来の街の「おいしい景色」をデザインしてください。

               

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              身近な仕事について考えてみよう!

              • 仕事のことを通じて学んだこと、楽しかったこと、難しかったことを書いてみましょう。
              • テーマについての新しい発見や、自分が感じたことをまとめます。
              • 今後、さらに調べてみたいことや、他の人に教えたいことがあれば、それも書いてみましょう。

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