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今回のテーマ
「インクや野菜の色素成分を比較してみよう」
身の回りにあるインクや野菜の色が、実は単一の色ではなく、複数の色素が混ざり合ってできているって知っていましたか?今回の自由研究では、そんな「色の正体」を明らかにするクロマトグラフィーという科学の技術を体験してみましょう。
ろ紙と水を使って、インクや葉っぱの色素を分け、それぞれの成分がどうなっているかを観察します。特別な道具は必要なく、家にある身近なものでできる簡単な実験です。
自由研究の目的
クロマトグラフィーは、混ぜ合わさった物質を分離・分析するための重要な技術です。食品に含まれる添加物の検査や、薬の成分分析、さらには事件現場に残された微量な物質を調べる鑑識など、さまざまな分野で私たちの暮らしを支えています。
この実験を通じて、私たちの身の回りの物質が複雑な成分でできていることを知り、「見えているものが全てではない」という科学的な視点を養うことができます。また、実験を通して観察力や分析力が自然と身につきます。
自由研究のゴール
- レベル1(基本) 色鉛筆、ペン、野菜など、異なるサンプルで実験を行い、それぞれの色素が分離される様子を観察する。
- レベル2(発展) 葉の種類(例えば、緑の葉と赤紫の葉)や、インクの種類(水性ペンと油性ペン)を変えて実験し、分離される色素の種類や、分離のされ方に違いがあるか比較する。
- レベル3(探究) 使用する溶媒(水、エタノール、食塩水など)を変えてみて、溶媒の種類によって色素の分離のされ方がどう変わるか実験し、その理由を考察する。
自由研究事例
夏休みの自由研究でこのテーマに取り組んだ、ある小学生の事例を紹介します。
テーマ 野菜や植物の色素を調べてみよう!
- 実験方法 ホウレンソウの葉、ニンジンの皮、紫キャベツの葉をそれぞれすりつぶして色素を取り出し、ろ紙に付けてクロマトグラフィーを行った。
- 結果 ホウレンソウからは緑色以外に黄色の色素が、ニンジンからはオレンジ色以外に黄色の色素が、紫キャベツからは紫色以外に青やピンクの色素が分離された。
- 考察 ホウレンソウの緑はクロロフィルという色素だが、実はカロテンやキサントフィルといった黄色の色素も含まれていることがわかった。また、紫キャベツはアントシアニンという色素を含み、酸性やアルカリ性によって色が変化することから、ろ紙を伝わる水の性質によって分離されたのではないかと推測した。
研究を進めるうえで、以下のポイントに注目しよう!
- 観察の記録 実験前と後のろ紙の写真を撮ったり、分離された色素の色や高さを丁寧に記録しましょう。
- 比較と考察 一つのサンプルだけでなく、複数のサンプル(例えば、黒いインクでもメーカーを変えてみる)を比較することで、より深い発見が得られます。
- 「なぜ?」を考える 「なぜこの色素は高く上がったのかな?」「どうしてこの色だけ分離されなかったんだろう?」など、結果に対して疑問を持つことが大切です。
自由研究の進め方
準備するもの
- コーヒーフィルター(ろ紙の代わりになります)
- 水性ペン、マジックペン、または野菜(ホウレンソウ、紫キャベツなど)
- 透明なコップ
- 割り箸
- 水
- ハサミ、セロハンテープ
実験の手順
- コーヒーフィルターを細長い短冊形に切ります。
- フィルターの下端から2cmくらいのところに、水性ペンで点を描きます。
- コップに水を1cmほど入れます。
- フィルターの先端を水につけ、フィルターの上端を割り箸にテープで固定し、コップにかけます。水が点より上に来ないように注意してください。
- 水がフィルターを伝って上に上がっていく様子をじっくり観察しましょう。
- 色素が十分に分離されたら、フィルターを取り出して乾かし、結果を記録します。
自由研究から発見したアイデア
- 食品の色素を分離してみる お菓子やジュースの着色料をクロマトグラフィーで分離してみる。
- 葉っぱの色の変化を調べる 夏の緑の葉と、紅葉した葉っぱでクロマトグラフィーを行い、色素成分の違いを比較する。
- オリジナルのクロマトグラフィーアートを作ろう 食紅などを使って、分離された色素の模様を活かしたオリジナルの作品を作ってみる。
この自由研究に関連する仕事
- 研究者 物質の成分や性質を分析し、新しい物質や技術を開発します。
- 薬剤師 薬の成分を分析したり、品質を管理したりします。
- 鑑識官 犯罪現場に残された微量な物質を科学的に分析し、事件の真相を解明します。
- 食品開発者 食品の成分を分析し、より安全で美味しい食品を開発します。
まとめ
今回の自由研究では、身近なものが実はたくさんの成分でできているという驚きを体験できました。クロマトグラフィーは、一見複雑に見える世界を分解し、その仕組みを理解するための第一歩です。
この実験を通じて得た「なぜだろう?」という探究心は、将来にわたってあなたの大きな力になるはずです。ぜひ、身の回りの「色の正体」を探ってみてください。
関連書籍
身近な仕事について考えてみよう!
- 仕事のことを通じて学んだこと、楽しかったこと、難しかったことを書いてみましょう。
- テーマについての新しい発見や、自分が感じたことをまとめます。
- 今後、さらに調べてみたいことや、他の人に教えたいことがあれば、それも書いてみましょう。