教育制度の特徴
マリの教育制度は、フランスの制度を基に作られています。基本的には、小学校6年間、中学校3年間、高校3年間の「6-3-3制」が採用されており、日本と似ています。
- 2つのサイクルからなる基礎教育 小学校と中学校にあたる合計9年間は「基礎教育」と呼ばれ、義務教育期間と定められています。この9年間は、さらに第一サイクル(1年生〜6年生)と第二サイクル(7年生〜9年生)に分かれています。
- 公用語はフランス語 学校での授業は、基本的に公用語であるフランス語で行われます。しかし、マリにはバンバラ語をはじめとする多くの現地語があり、家庭で話される言葉と学校で使われる言葉が違うため、子供たちが授業内容を理解するのが難しいという課題もあります。そのため、近年では現地の言葉も取り入れた教育が試みられています。
教育方法
マリの教室の風景は、日本の学校とは少し違います。
- 一斉授業と暗記中心の学び 多くの場合、先生が黒板に書いたことを生徒たちが一斉にノートに書き写し、それを覚えるという暗記中心の授業が主流です。これは、教員の数が不足しており、一人の先生が50人、時には100人以上の生徒を担当しなければならないことも影響しています。
- 教科書の不足 教材が十分に行き渡っていないのも大きな課題です。生徒全員が教科書を持っているわけではなく、数人で1冊の教科書を共有したり、先生が読み上げるのを聞いて学んだりすることも珍しくありません。このような環境でも、子供たちは熱心に学ぼうとしています。
- コーラン学校の存在 マリは国民の多くがイスラム教徒であるため、公立学校の他に「コーラン学校(マドラサ)」と呼ばれる、イスラム教の教えを学ぶ学校も多く存在します。そこでは、コーランの暗唱などを通して、宗教的な教えやアラビア語を学びます。
教育への取り組みや支援
マリ政府は教育の重要性を認識し、国の予算の多くを教育分野に充てています。しかし、国内の紛争や貧困などの影響で、国だけの力では全ての子供たちに十分な教育を届けるのが難しいのが現状です。
そこで、多くの国際機関や日本の団体が支援を行っています。
- ユニセフ(国連児童基金)の活動 紛争で破壊された学校の再建や、テントを使った仮設教室の設置、学用品の配布などを行っています。また、女の子や障害のある子など、学校に通うのが特に難しい子供たちへの支援にも力を入れています。
- JICA(国際協力機構)の支援 日本のJICAは、より質の高い教育を目指して「みんなの学校プロジェクト」と呼ばれる支援を行っています。これは、教員だけでなく、保護者や地域住民も学校運営に参加し、コミュニティ全体で子供たちの学びを支える仕組みを作る取り組みです。これにより、学校が地域にとってより身近で信頼できる場所になることを目指しています。
子供達の1日の過ごし方
マリの子供たちの多くは、早起きして一日をスタートさせます。
- 朝 水汲みと通学 特に地方の村では、学校に行く前に、家畜の世話をしたり、井戸まで水を汲みに行ったりと、家の重要な手伝いをします。長い道のりを歩いて学校に通う子も少なくありません。
- 昼 学校での学び 学校では、フランス語、算数、理科、地理などを学びます。給食制度はまだ十分に普及していないため、一度家に帰ってお昼ご飯を食べるか、お弁当を持ってこない子もいます。
- 放課後 再び家の手伝いと遊び 学校が終わると、また家の仕事を手伝います。女の子は食事の準備や妹や弟の世話、男の子は畑仕事や家畜の世話などを任されることが多いです。仕事が終わった後のわずかな時間に、友達とサッカーをしたり、おしゃべりをしたりして過ごします。テレビやゲーム機がある家庭は少なく、身の回りにあるもので遊びを工夫します。
教育と社会の関係
マリにおいて、教育を受けることは、子供たちの将来の可能性を広げるために非常に重要です。
- 識字率と貧困 文字の読み書きができる能力(識字率)は、安定した仕事を見つけたり、健康に関する正しい情報を得たり、社会的な手続きを行ったりするために不可欠です。マリの成人識字率は約31%(2021年時点)と世界的に見ても低い水準にあり、このことが貧困から抜け出せない一つの原因とも言われています。
- 女子教育の重要性 特に女の子が教育を受けることは、社会全体に良い影響を与えると考えられています。教育を受けた女性は、若すぎる結婚や出産を避け、より健康的な子供を育てられる傾向があります。また、得た知識を活かして家庭の収入を増やしたり、子供の教育に熱心になったりするため、貧困の連鎖を断ち切る鍵とされています。
しかし、「女の子は早く結婚して家庭に入るべきだ」という伝統的な考えが根強く残っている地域もあり、女の子が教育の機会を奪われることも少なくありません。
国が抱える教育の課題と未来
マリの教育は、希望の光が見える一方で、多くの深刻な課題に直面しています。
- 最大の課題 紛争と安全 マリ北部や中部では、長引く紛争により多くの学校が破壊されたり、閉鎖に追い込まれたりしています。先生や子供たちが攻撃の標的になることもあり、安心して学べる環境が脅かされています。
- 慢性的な課題 インフラと教員の不足 安全な校舎や、机、椅子、トイレ、きれいな水といった基本的な設備が圧倒的に不足しています。また、専門的な訓練を受けた教員の数も足りておらず、教育の質を上げることが難しい状況です。
- 未来への希望 コミュニティの力と国際協力 このような困難な状況の中でも、マリの人々は教育の灯を消さまいと努力を続けています。地域住民が協力して学校を運営する「みんなの学校」のような取り組みは、厳しい環境下でも子供たちの学びの場を守るための大きな希望となっています。国際社会からの継続的な支援と、マリの人々自身の力が合わさることで、少しずつ未来は切り拓かれています。
教育と文化や価値観の関係
「聞く力」と「記憶する力」を重んじる口承文化
文字の読み書きができる人の割合(識字率)がまだ低く、誰もが本や新聞から情報を得るわけではありません。また、学校でも教科書が不足しているため、先生が話すことを集中して聞き、覚えることが重要な学習方法となっています。
この環境が、マリに古くから伝わる「口承文化」を今なおパワフルなものにしています。マリには「グリオ」と呼ばれる、歴史や物語、家系の伝説などを記憶し、音楽に乗せて語り継ぐ伝承者がいます。人々は文字で読む以上に、グリオの語りや長老の話に真剣に耳を傾け、大切な知識や教訓を心に刻みます。これは、「情報は読んで知るだけでなく、聞いて心で受け止めるもの」という価値観の表れと言えるでしょう。
「みんなで育てる」という共同体の意識
国の力だけでは、すべての子どもに学校教育を届けることが難しいのが現状です。そのため、JICA(国際協力機構)が支援する「みんなの学校」プロジェクトのように、保護者や地域の人々が協力して学校を建設したり、運営に参加したりすることが珍しくありません。
これは、「子どもは親だけでなく、地域コミュニティみんなの宝であり、責任をもって育てる」という強い共同体意識に繋がっています。困ったときはお互いに助け合う「相互扶助」の精神が根付いており、近所の人が自分の子どものように他の子をしかったり、面倒を見たりする光景が日常的に見られます。教育が、血縁を超えた社会全体の絆を強める役割を担っているのです。
イスラム教の教えが生活の土台となる価値観
公立学校とは別に、イスラム教の教えを学ぶ「コーラン学校(マドラサ)」が地域に深く根付いており、多くの子どもが幼いころから通います。そこでは、コーランの暗唱を通して、道徳や規律を学びます。
このため、人々の生活の隅々にイスラムの教えが浸透しています。1日に5回のお祈りの時間を大切にしたり、「インシャラー(神が望むなら)」という言葉をよく使ったりするように、日々の行動や判断の基準が信仰と密接に結びついています。教育が、社会全体の倫理観や道徳観を形成する上で大きな役割を果たしている例です。
まとめ
マリ共和国の教育について調べてみると、私たちが当たり前だと思っている「学校で学べる環境」が、決して世界共通ではないことが分かります。紛争の恐怖や貧困の中、教科書も十分にない教室で、それでも目を輝かせて学ぼうとするマリの子供たちの姿は、私たちに「学べることの価値」を改めて教えてくれます。
この自由研究を通して、マリという国を身近に感じ、そこに住む人々の暮らしや文化、そして彼らが直面する課題に関心を持つきっかけになれば嬉しいです。遠い国の問題を知り、自分に何ができるかを考えること。それが、より良い世界を作るための大切な一歩となるでしょう。
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