教育制度の特徴
ブータンの教育の最大の特徴は、「教育費が大学まで無料」であることです。これは「すべての子どもに平等な機会を」という国王の強い想いから来ています。制服や教科書、文房具、そして給食まで国が提供してくれるため、どんな家庭環境の子どもでも安心して学校に通うことができます。
学校制度は日本と似ていて、小学校から高校まで12年間です。ユニークなのは、学校の授業が基本的に英語で行われること。一方で、国の公用語であるゾンカ語の授業も毎日あり、自国の文化と国際社会で活躍するための両方を学べるようになっています。
教育方法
ブータンの教育の根幹にあるのは、もちろん「GNH(国民総幸福量)」の考え方です。単に知識を詰め込むのではなく、「人としてどう生きるか」「どうすれば幸せになれるか」を重視しています。
そのためのユニークな授業が「GNH教育」です。例えば、授業の始めと終わりには瞑想(めいそう)の時間があり、心を落ち着けて自分と向き合います。また、自然環境を守ることの大切さを学んだり、お年寄りを敬う心を育んだり、伝統的な弓のスポーツ「ダツェ」や民族舞踊を体験したりと、ブータンの文化や価値観を深く学びます。知識だけでなく、「感謝の心」「思いやりの心」「自然を愛する心」を育むことを目指しているのです。
教育への取り組みや支援
国を挙げた手厚い支援が、ブータンの教育を支えています。特に、山岳地帯に住んでいて学校まで歩いて通えない子どもたちのために、寄宿舎(寮)が無料で提供されています。子どもたちは平日は寮で生活し、週末に家に帰ることで、遠くに住んでいても教育の機会を得ることができます。
また、WFP(国連世界食糧計画)などの国際機関と協力し、栄養バランスの取れた給食を提供しています。この給食は、子どもたちの健康を支えるだけでなく、親の負担を軽くし、就学率の向上にも大きく貢献しています。
子供達の1日の過ごし方
ブータンの子どもたちの朝は早いです。学校へ行く前に、牛の世話や水汲み、食事の準備など、家の手伝いをする子も少なくありません。
学校では、午前中に国語(ゾンカ語)や算数、理科、英語などの主要科目を学びます。お昼は、みんなで給食を食べ、午後は社会や歴史、そして「GNH教育」に関する授業を受けます。掃除の時間も、みんなで協力して学校をきれいにします。
放課後は、友達とサッカーや鬼ごっこをして遊んだり、家に帰って農業や家事を手伝ったりして過ごします。都市部では塾に通う子もいますが、多くの農村部の子どもたちは、自然の中で遊びながら、家族の一員としての役割を果たしています。
教育と社会の関係
ブータンにおいて、教育は国の未来を担う子どもたちに「ブータン人としての誇り」と「GNHの心」を伝えるための、非常に重要な役割を担っています。
学校で伝統文化や国の歴史を学ぶことで、子どもたちは自分のルーツに誇りを持ちます。そして、環境保護や持続可能な開発について学ぶことで、国の豊かな自然を未来へ引き継ぐ責任感を育みます。教育が、急速な近代化の中でも「ブータンらしさ」を失わず、社会全体で幸福を追求していくための羅針盤の役割を果たしているのです。
国が抱える教育の課題と未来
多くの魅力があるブータンの教育ですが、課題も抱えています。険しい山岳地帯では、今も学校に通うのが困難な子どもたちがいます。また、大学を卒業した若者たちの就職先が少ないことや、都市部と農村部での教育の質の差(教育格差)も問題になっています。
こうした課題に対し、ブータン政府はICT(情報通信技術)を活用した遠隔授業を導入したり、職業技術を学べる専門学校を増やしたりと、未来に向けた新しい取り組みを進めています。伝統を守りながら、変化する社会に対応できる人材を育てようと挑戦を続けているのです。
教育と文化や価値観の関係
「家族と地域の強い絆」 ~助け合いの精神~
教育の中で「思いやり」や「感謝の心」を学ぶブータンの人々にとって、家族や地域社会は最も大切なものです。例えば、誰かが家を建てるときには、村中の人々が当たり前のように手伝いに集まります。これは「自分もいつか助けてもらう」という考えだけでなく、「隣人の喜びは自分の喜び」という価値観が共有されているからです。学校で学ぶ「相互扶助の精神」が、実社会での強いコミュニティ意識を育んでいます。
「すべての生命を敬う心」 ~環境保護と共存~
ブータンでは、憲法で「国土の60%以上を森林として維持する」と定められています。これは、自然を単なる資源ではなく、すべての生命が共存する神聖な場所と捉えているからです。学校では、ごみを拾う活動が日常的に行われ、自然環境が人間にとってどれほど大切かを学びます。この教えが、動物をむやみに殺生しない、森の木を大切にするといった、自然と共に生きる文化に繋がっています。
「伝統文化への誇り」 ~民族衣装『ゴ』と『キラ』~
ブータンの人々は、公式の場や学校へ行く際に、男性は「ゴ」、女性は「キラ」という美しい民族衣装を誇りを持って身につけます。これは、教育の中で自国の歴史や文化の素晴らしさを学び、「ブータン人であること」へのアイデンティティを育んでいるからです。近代化が進む中でも、人々が日常的に伝統衣装を着ている光景は、教育がいかに国の文化継承に貢献しているかを示す象-307-2680-2680徴と言えるでしょう。
「足るを知る心」 ~物質的な豊かさだけを追わない生き方~
「GNH教育」では、心の平穏や満足感を大切にすることを学びます。そのため、ブータンの人々は、他人と比べて高価な物を持つことや、贅沢をすることにあまり価値を見出しません。古いものを修理しながら大切に使い、家族や友人との時間を楽しむことに幸福を感じます。この「足るを知る」という価値観は、無限の消費を追い求めない、持続可能な社会の基盤となっています。
まとめ
ブータンの教育は、私たちに「本当の学びとは何か?」を問いかけているようです。テストで良い点を取ることや、たくさんの知識を覚えることだけが勉強ではありません。周りの人々や自然に感謝し、自分の心の豊かさを見つめ、社会の一員としてどう生きるかを考えること。それこそが、ブータンが目指す「GNH教育」のゴールです。
私たちの普段の生活や学校での学びと比べて、どんなところが似ていて、どんなところが違うでしょうか。ブータンの教育を知ることは、私たちが「幸せに生きる」とはどういうことかを見つめ直す、素晴らしいきっかけになるかもしれません
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