教育制度の特徴
人口が世界一となり、IT大国として急成長するインド。そのパワーの源である教育制度は、日本の「6-3-3制」とは少し違い、「10+2制」が基本です。これは、小学校から高校1年生にあたる期間が10年間、そして高校2・3年生にあたる「上級中等学校」が2年間という意味です。
6歳から14歳までが義務教育で、多くの子供たちが学校に通いますが、学校には大きく分けて2種類あります。一つは国や州が運営する「公立学校」。もう一つが、比較的裕福な家庭の子供たちが通う「私立学校」です。どちらの学校に通うかで、使っている教科書や教わる言語(英語か地域の言葉か)、そして受けられる教育の質に大きな差があるのが、インドの教育の大きな特徴です.
教育方法
インドの教育方法を語る上で欠かせないキーワードが「暗記」と「競争」です。テストで良い点を取ることが非常に重視されるため、授業では教科書の内容をひたすら覚え、それを正確に再現する「詰め込み型」の学習が主流です。
特に、インド工科大学(IIT)をはじめとする超難関大学への入学競争はすさまじく、多くの子供たちは学校の授業が終わった後、夜遅くまで「コーチング・クラス」と呼ばれる塾で受験勉強に励みます。学校のテストの順位が教室に張り出されることも珍しくなく、子供たちは常に厳しい競争のプレッシャーの中で学んでいます。
教育への取り組みや支援
激しい競争の一方で、すべての子供が教育を受けられるようにするための国の取り組みもあります。その代表が「ミッド・デイ・ミール(真昼の食事)」と呼ばれる給食プログラムです。貧しい家庭の子供たちがお腹を空かせることなく勉強に集中できるように、また、給食を目当てに学校へ来るように、温かい食事が無料で提供されます。これは子供たちの栄養状態を改善するだけでなく、学校に通う生徒の数を増やすことにも繋がっています。
また、近年ではIT大国らしく、スマートフォンやタブレットを使った「EdTech(エドテック)」と呼ばれる教育サービスが急速に普及しています。これにより、都市から離れた村に住む子供でも、インターネットを通じて質の高い授業を受けられるチャンスが生まれています。
子供達の1日の過ごし方
インドでは、住んでいる場所によって子供たちの生活が大きく異なります。
- 都市部に住むアキラくんの一日 朝早くにスクールバスで私立学校へ。授業はすべて英語で行われます。学校が終わると、バスでまっすぐ塾へ向かい、大学受験のための勉強をします。家に帰るのは夜9時過ぎ。そこから学校の宿題をこなし、寝るのは真夜中近く。休む暇もほとんどありません。
- 農村部に住むプリヤさんの一日 夜が明けると、井戸へ水を汲みに行き、家畜の世話をするのが日課です。それが終わってから公立学校へ。授業は地域の言葉で行われます。学校から帰ると、また畑仕事や料理など、家の手伝いが待っています。勉強の続きをしたくても、家には電気が通っていないこともあります。
教育と社会の関係
インド社会では、「良い教育を受ければ、良い仕事に就け、幸せな人生が送れる」という考えが非常に強く根付いています。そのため、親は子供の教育にとても熱心で、自分の収入の多くを子供の学費や塾の費用に充てることも少なくありません。
特に、ITエンジニアや医者は社会的な地位も高く、人気の職業です。その結果、算数や理科といった理数系の科目が重視される傾向にあります。教育は、個人の成功だけでなく、家族全体の未来を左右する一大事だと考えられているのです。
国が抱える教育の課題と未来
都市部と農村部での教育施設の差や、先生の数の不足といった「教育格差」が大きな問題です。また、女の子は家の手伝いを優先されたり、早くに結婚したりして、学校教育を最後まで受けられないケースもまだ多く残っています。
こうした課題を乗り越えるため、インド政府は2020年に新しい教育方針「NEP(国家教育政策)2020」を発表しました。これまでの暗記中心の教育から、物事を深く考え、創造する力を育てる教育への転換を目指しています。 14億人を超える人口の半分近くが25歳以下という「若者の国」インド。その若いパワーとITの力を掛け合わせ、教育の課題を解決した時、インドは今よりもさらに大きく飛躍する可能性を秘めています。
教育と文化や価値観の関係
「ジュガード(Jugaad)」の精神
ジュガードとは、「ありあわせのもので、なんとか工夫して問題を解決する」というインド独特の思考法です。限られた資源と厳しい競争の中で、ルールや常識にとらわれず、創造的なアイデアで目的を達成する能力は、まさにインドの教育環境が生んだサバイバル術と言えます。暗記で知識を詰め込む一方で、現実社会を生き抜くための柔軟な応用力が鍛えられています。
家族全体で挑む「教育熱」と強い絆
インドでは、子供の教育は個人の問題ではなく「家族全体のプロジェクト」です。一人の子供が良い教育を受けて成功すれば、家族や親戚一同が豊かになれると考えられています。そのため、家族は子供の教育のために一丸となって学費を援助し、生活を支えます。この経験が、家族や親族間の強い絆と、相互扶助の文化をより強固なものにしています。
議論好きで自己主張が明確な文化
常に競争にさらされ、自分の優秀さを証明しなくてはならない環境は、自分の意見をはっきりと主張し、相手を説得しようとする文化を育みます。一見、おとなしそうに見えても、議論の場になると自分の考えを論理的に(時には情熱的に)展開する人が多いのは、学校や社会で生き残るために自然と身についたスキルと言えるでしょう。
努力と成功への強い渇望
「教育が人生を変える唯一の手段」という共通認識があるため、インドの人々は努力に対して非常にポジティブです。苦しい勉強や競争を乗り越えた先には成功が待っているという強い信念が、国全体のダイナミズムを生み出しています。このハングリー精神が、シリコンバレーをはじめ世界中でインド出身者が目覚ましい活躍を見せる原動力となっています。
まとめ
インドの教育は、世界トップレベルの頭脳を生み出す激しい競争と、住む場所や性別によって生まれる大きな格差という、光と影の両面を持っています。しかし、どんな環境にいても「学びたい」という強いエネルギーと、国をより良くしようという未来への希望に満ちあふれているのも事実です。
常にプレッシャーの中で努力を続けるインドの子供たちの姿は、私たちに「学ぶこと」の意味を改めて問いかけてくれます。日本の恵まれた環境とインドのハングリー精神。この記事をきっかけに、自分たちの学び方や将来について、新しい視点で考えてみてはいかがでしょうか。
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