教育制度の特徴
イエメンの教育制度は、本来は「基礎教育」の9年間(6歳~14歳)が義務教育で、その後3年間の「中等教育」へと続きます。日本の小学校と中学校を合わせた期間が義務教育となっており、原則として授業料は無料です。しかし、長年の紛争により多くの学校が破壊されたり、避難所として使われたりしているため、すべての子どもがこの制度通りに学校に通えるわけではないのが現状です。
教育方法
イエメンの学校での授業は、先生が黒板の前に立って話し、生徒たちが静かにそれを聞くという、伝統的なスタイルが中心です。先生が教科書の内容を説明し、生徒はそれをノートに書き写して覚えます。
しかし、紛争が続く中で、限られた資源と厳しい環境に適応するための新しい試みも始まっています。ユニセフなどの支援により、先生たちは子どもたちの心と体の健康を第一に考え、遊びや対話を取り入れた、より創造的で参加しやすい授業の方法を学ぶ研修を受けています。
教育への取り組みや支援
イエメンの教育を守るため、世界中の国々や組織が支援を続けています。ユニセフ(国連児童基金)やユネスコ(国連教育科学文化機関)といった国際機関は、その中心的な役割を担っています。
具体的な支援には、
- 壊れた学校の修理や、テントを使った臨時教室の設置
- 教科書やノート、鉛筆などの学用品の配布
- 先生たちへの研修や、給料の支払い支援
- 学校に通えなくなった子どもたちのための補習授業
などがあります。日本政府もユニセフを通じて資金を提供し、イエメンの子どもたちの学びの機会を支える重要なパートナーとなっています。これらの支援は、子どもたちが未来をあきらめないための大切な命綱です。
子供達の1日の過ごし方
イエメンの子どもたちの日常は、私たちが当たり前だと思っているものとは大きく異なります。紛争によって、450万人以上の子どもたちが学校に通えていません。
学校に通える子どもたちも、朝早く起きて、時には危険な道を歩いて学校へ向かいます。教室は生徒でぎゅうぎゅう詰めで、一つの机を3人や4人で使うことも珍しくありません。
学校が終わった後、多くの子どもたちは家族を助けるために働きます。水を運んだり、市場で小さなものを売ったりして家計を支えるのです。紛争は、子どもたちから安心して遊び、学ぶ時間を奪ってしまっています。それでも、友達とおしゃべりしたり、サッカーをしたりする時間は、彼らにとってかけがえのない宝物です。
教育と社会の関係
イエメン社会において、教育は単に知識を学ぶ場所以上の意味を持っています。紛争という過酷な現実の中で、学校は子どもたちに「日常」と「安心感」を与えてくれる数少ない場所の一つです。友達や先生と会える学校は、心の傷を癒し、社会とのつながりを保つための重要な空間なのです。
また、人々は教育が国の未来を築くと信じています。困難な状況でも読み書きや計算を学ぶことが、将来、国を復興させ、平和な社会を築くための力になると考えられています。
国が抱える教育の課題と未来
イエメンの教育が抱える最大の課題は、言うまでもなく「紛争」です。これにより、以下のような深刻な問題が起きています。
- 学校の破壊 5校に1校以上の学校が、壊されたり、別の目的で使われたりして使用不能です。
- 先生の不足 長年にわたり給料が支払われていない先生が多く、生活のために他の仕事を探さざるを得ない状況です。
- 貧困 多くの家庭が貧しく、子どもを学校に通わせるよりも働かせることを選ばざるを得ません。
しかし、そんな中でも未来への希望はあります。国内外の支援によって、少しずつ学校が再建され、子どもたちが学び続けられる環境が作られつつあります。また、若者たちが手に職をつけ、社会で自立できるように、技術や職業訓練(TVET)にも力が入れられています。平和が訪れた時、教育を受けた子どもたちが国の復興の担い手となることが期待されています。
教育と文化や価値観の関係
知識(イルム)への深い尊敬と、教師への敬意
教育の機会が限られ、学校に通うこと自体が困難なため、イエメンの人々は「知識(アラビア語で『イルム』)」そのものに非常に高い価値を置きます。読み書きができること、何かを学んでいることは、未来への希望の象徴です。そのため、給料が支払われなくても教え続ける教師は、地域社会から深く尊敬される存在となります。この教師への敬意は、知識人や賢者を尊ぶ文化的な土壌に繋がっています。
共同体(コミュニティ)の強い絆と助け合いの文化
公的な教育システムが十分に機能しない中で、教育は地域コミュニティの共同作業となります。例えば、近所の大人が子どもたちに勉強を教えたり、裕福な家が貧しい家庭の子どもの学用品を支援したりすることがあります。このように「自分たちの地域の子どもは、自分たちで育てる」という意識が、困難な状況を乗り越えるための強い連帯感と、イスラムの相互扶助の教え(タカフル)を実践する文化を育んでいます。
口承文化と伝統的な知恵の継承
教科書や本が不足しているため、文字による情報伝達だけでなく、「口伝え」で知識や物語を継承する文化が非常に重要になります。祖父母から孫へと語り継がれる昔話や詩、ことわざには、厳しい自然環境で生き抜くための知恵や道徳的な教えが凝縮されています。これは、文字情報だけに頼らない、記憶と語りの能力を重視する文化的な特徴に繋がっています。
幼い頃から育まれる強い責任感と実践力
多くの子どもたちが学校に通う傍ら、あるいは学校に通えず、家計を助けるために働かざるを得ない現実は、彼らに実践的なスキルと強い責任感を植え付けます。幼い頃から家族の一員として重要な役割を担うことで、精神的な自立が促され、年齢以上に大人びた、たくましい人間性が形成される一因となっています。
まとめ
イエメンでは、子どもたちと教育を取り巻く環境は非常に厳しく、数えきれないほどの困難があります。しかし、そのような中でも、子どもたちは学ぶことをあきらめず、先生たちは情熱を失わずに教壇に立ち続けています。そして、彼らを支えようとする世界中の人々の支援の輪があります。
教育が、紛争で傷ついた子どもたちの心を癒し、未来を照らす希望の光であり続けること。そして、一日も早く、すべての子どもが安心して学校に通える日が来ること。イエメンの現状を知ることは、私たちが享受している平和や教育のありがたさについて、改めて考えるきっかけを与えてくれるでしょう。
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