今回のテーマ
「地元の観光地で「インスタ映えスポット」を設置したら訪問者数に影響があるか実験してみよう」
この自由研究のテーマは、「地元の観光地に『インスタ映えスポット』を期間限定で設置したら、訪問者数はどれだけ増加するのか?」を実証的に探ることです。
現代の集客において、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の力は無視できません。特に写真や動画をメインとするInstagramなどのプラットフォームで「映える」コンテンツは、人々の行動を決定づける大きな要因となっています。本研究では、地元の少し地味な観光地や公共スペースを選び、若者や観光客が思わずカメラを向けたくなるようなフォトジェニックなスポットを自作・設置し、その前後の訪問者数やSNSでの反応をデータで比較分析する実験を提案します。
自由研究の目的
私たちがこのテーマを学ぶ意義は、現代のマーケティングと地域活性化の仕組みを実践的に理解できる点にあります。
- デジタル時代の集客術の理解 多くの人がスマートフォンを持ち、SNSで情報を発信する時代において、口コミや広告だけではなく、「体験の共有」が集客の鍵となっています。この研究を通じて、写真一枚が経済活動や人々の流れをどう変えるのか、というSNSの影響力を肌で感じることができます。
- 地域への貢献と課題発見 地元に埋もれている魅力を再発見し、「映え」という視点から新しい価値を付与するプロセスは、地域創生の一歩となります。なぜ地元の観光地に来る人が少ないのか、どうすれば良くなるのか、という課題解決の視点が養われます。
- データに基づく意思決定の重要性 単なる思いつきではなく、実際にデータを収集・分析することで、「映えスポット」が本当に効果があったのかどうかを客観的に判断する力が身につきます。これは、将来どのような仕事に就くとしても不可欠なロジカルシンキングの基礎となります。
自由研究のゴール
単に「人が増えたか減ったか」を調べるだけで終わらず、以下のレベルアップしたゴールを目指しましょう。
- レベル1 インスタ映えスポット設置前後の訪問者数の変化をグラフ化し、増減を報告する。
- レベル2 訪問者数に加え、SNSでの言及数や特定のハッシュタグの利用状況もデータ化し、相関関係を考察する。
- レベル3 訪問者やSNSユーザーへの簡易アンケートを実施し、「なぜそのスポットで写真を撮ったのか」「何に魅力を感じたのか」といった心理的要因も分析に加える。最終的に、地元の観光協会や自治体に対し、データに基づいた観光地活性化の具体的な提案書を作成する。
インスタ映えによる集客の成功事例
- チームラボのアート展示 デジタルアート集団チームラボの展示は、光と空間を巧みに使い、訪れた人が思わず作品の一部になったように写真を撮れる構造になっています。作品そのものがフォトスポットとなり、SNSでの拡散を前提とした設計がされています。
- 地域に突如現れた壁画アート 地方のシャッター街や道の駅の壁に、ポップで巨大な壁画やトリックアートが描かれた結果、そこが新たな写真スポットとなり、若者や家族連れの「目的地」として機能し始め、周辺店舗の売り上げにも貢献した例があります。
- 季節限定の非日常空間 特定の季節に開催されるイルミネーションや花畑、または風鈴祭りなど、期間限定で「非日常的」な空間を演出し、その美しさや特別感がSNSで急速にシェアされ、短期間で爆発的な集客に繋がっています。
これらの事例の共通点は、「写真に撮りたくなる美しい、面白い、特別な体験」を提供していることです。
研究を進めるうえで、以下のポイントに注目しよう!
- 比較対象(コントロール群)の設定 インスタ映えスポットを設置する観光地(実験群)だけでなく、スポットを設置しないが、環境や季節が似ている別の地元の観光地(コントロール群)の訪問者数も同時に記録しましょう。これにより、スポット設置とは関係のない「他の要因(例:週末の天候、近隣イベント)」による影響を排除し、純粋なスポットの効果を測定できます。
- データ収集の客観性 訪問者数は、定点カメラや目視でのカウント、あるいは協力者によるカウンターで、毎日・時間帯ごとに客観的に記録します。主観的な「感覚」ではなく、数値で語れるようにすることが重要です。
- 倫理的配慮と協力 観光地の管理者(自治体や観光協会)に事前に計画を説明し、許可を得ることが必須です。また、人が写り込む写真や個人情報の取り扱いには最大限の注意を払いましょう。
自由研究の進め方
ステップ1 計画と準備
- 場所選定と交渉 実験場所(地元の観光地)を選び、管理者(観光協会、自治体など)に研究の目的を説明し、設置とデータ収集の許可を得ます。
- スポットデザイン SNSで人気のデザインや色彩を参考に、予算内で制作できる「映え」スポットの設計図を作成します。安全に配慮した撤去しやすい構造が必須です。
- データ収集計画 設置前の訪問者数・SNS投稿数のベースラインデータを1週間~10日間程度記録します。
ステップ2 実行とデータ収集
- スポット設置 許可された場所にインスタ映えスポットを設置します。
- 広報活動 研究用アカウントやポスターなどで、特定のハッシュタグ(例:#〇〇研究映え)をつけて投稿するよう促します。
- データ記録 スポット設置期間中(例:2週間~1ヶ月)、以下のデータを毎日同時刻に記録します。
- 実験群・コントロール群の訪問者数
- 実験群で指定したハッシュタグ付きのSNS投稿数
- その日の天候(これも訪問者数に影響するため重要)
ステップ3 分析と考察
- データ整理 収集したデータをグラフ(棒グラフ、折れ線グラフなど)で可視化します。
- 比較分析 設置前後の訪問者数の変化、SNS投稿数との相関、コントロール群との差異などを統計的に比較し、「インスタ映えスポットは本当に効果があったのか?」を結論づけます。
- 要因考察 なぜ訪問者数が増減したのか、集まった写真にはどんな共通点があったのかなどを考察し、「成功する映えスポットの条件」を言語化します。
ステップ4 発表と提案
研究結果をまとめ、地元の観光協会や自治体にレポートとして提出・提案します。
自由研究から発見したアイデア
実験の結果、もし「映えスポット」が一定の効果を示した場合、その知見を応用した次のステップを提案しましょう。
- 消費を促す体験型スポットへの進化 単に写真が撮れるだけでなく、地元の特産品や伝統工芸品とコラボレーションした「映え」るアイテムを組み込み、その場で「買って帰りたい」と思わせる消費行動に直結する仕組みを提案する(例:映える器に盛られた限定スイーツ、体験しないと撮れない特別なアングルなど)。
- 季節やテーマの可変性 四季や地元のイベントに合わせて、スポットのデザインを定期的に変更し、「何度来ても新しい発見がある」というリピーターを増やす戦略を提案する。
- 地元住人との連携 地元の学生や高齢者グループに「映えスポットの企画・運営」を担ってもらい、地域全体を巻き込んだ「参加型の地域活性化プロジェクト」を立ち上げることを提言する。
この自由研究に関連する仕事
- 観光プロデューサー/観光コンサルタント 観光地の魅力を引き出し、集客戦略を立てる専門家。データに基づいた提案力が必要。
- 地域おこし協力隊/地域創生プランナー 地方自治体と連携し、地域の課題解決や活性化に取り組む仕事。実践的な企画力が求められます。
- SNSマーケター/デジタルプランナー 企業や商品のデジタル戦略を立て、SNSでの効果的な情報発信を担う仕事。トレンドの分析や効果測定のスキルが活かせます。
- データサイエンティスト 大量のデータから有用な情報を抽出し、ビジネスや社会の課題解決に役立てる仕事。本研究で行うデータ収集と分析の基礎が繋がります。
まとめ
この自由研究は、単なる工作や観察で終わらず、「社会のトレンド」と「地元が抱える課題」を「科学的な実験」によって結びつける、極めて実践的で価値のあるプロジェクトです。
私たちが何気なく見ているSNSの「いいね」の裏側には、人々の行動を動かす大きな力が隠されています。この実験を通じて、その力を数値で解明し、得られた知見を地元に還元することで、観光地の新しい未来を切り開くことができるかもしれません。
この夏の自由研究は、あなたの地元愛と未来の仕事に繋がる「実践的なマーケティング」を学ぶ最高の機会となるでしょう。
関連書籍
身近な仕事について考えてみよう!
- 仕事のことを通じて学んだこと、楽しかったこと、難しかったことを書いてみましょう。
- テーマについての新しい発見や、自分が感じたことをまとめます。
- 今後、さらに調べてみたいことや、他の人に教えたいことがあれば、それも書いてみましょう。