教育制度の特徴
モザンビークの教育制度は、日本と少し似ている部分と、大きく違う部分があります。
学校体系 モザンビークの学校制度は、大きく分けて3つの段階で構成されています。
- 初等教育(7年間) 1年生から7年生まで。この7年間が義務教育とされています。しかし、様々な理由で学校に通えない子供もまだ多いのが現状です。
- 中等教育(5年間) 8年生から12年生まで。前期(3年間)と後期(2年間)に分かれています。
- 高等教育 大学や専門学校などです。
一番大きな特徴は、授業で使われる言葉が「ポルトガル語」であることです。モザンビークはかつてポルトガルの植民地だった歴史があり、ポルトガル語が公用語となっています。しかし、家では地域ごとの様々な言語を話している子供たちがほとんど。そのため、学校に入学した子供たちは、まずポルトガル語を学ぶことからスタートします。これは、勉強を進める上での一つの大きなハードルにもなっています。
教育方法
モザンビークの学校の授業風景を想像してみましょう。そこには、日本とは違ういくつかの光景が広がっています。
- たくさんのクラスメイト 1つの教室に50人、多いところでは100人以上の子供たちが一緒に勉強しています。教室が足りないため、先生は一人でたくさんの生徒を見なければならず、一人ひとりに合わせた指導が難しい状況です。
- 二部制・三部制の授業 学校の数が足りないため、多くの学校では二部制(午前と午後の入れ替え制)や、時には三部制をとっています。午前中に勉強するグループと、午後に勉強するグループに分かれているため、一人の子供が学校で過ごす時間は短くなります。
- 限られた教材 教科書やノート、鉛筆などの学用品が十分に行き渡っていません。教科書は数人で1冊を共有したり、先生が黒板に書いたことをひたすらノートに書き写したりして勉強します。中には、校庭の青空の下で授業を行う「青空教室」も見られます。
こうした環境の中でも、子供たちは目を輝かせながら、必死に先生の言葉に耳を傾けています。
教育への取り組みや支援
モザンビーク政府も、こうした状況を改善しようと様々な取り組みを行っています。また、世界中の国々がモザンビークの子供たちのために支援を続けています。
- モザンビーク政府の取り組み 国の予算の中で、教育に使うお金の割合を増やし、新しい学校の建設や教員の育成に力を入れています。また、子供たちが母語(家庭で話す言葉)で学んだあとに、スムーズにポルトガル語の学習に移行できるような「バイリンガル教育」の研究も進められています。
- 国際社会からの支援(日本の例) 日本も、JICA(国際協力機構)などを通じて、長年にわたりモザンビークの教育を支援しています。
- 学校建設 日本の支援によって、これまでにたくさんの小学校が建設されました。安全で快適な教室は、子供たちの学習意欲を高めています。
- 教員の育成 先生の質を高めるための研修(算数の指導法など)を行ったり、教員養成学校の運営をサポートしたりしています。質の高い先生が増えることは、教育全体のレベルアップにつながります。
- 教科書開発 子供たちが分かりやすい教科書の開発にも協力しています。
これらの支援は、モザンビークの子供たちの未来を創る大きな力となっています。
子供達の1日の過ごし方
モザンビークの子供たちは、毎日をどのように過ごしているのでしょうか。特に農村部に住む子供たちの一日を見てみましょう。
- 早朝 夜が明ける前に起き、学校へ行く準備をします。その前に、家族のための水汲みや、ヤギや鶏の世話など、家の手伝いをする子も少なくありません。
- 通学 学校まで何キロもの道のりを、1時間以上かけて歩いて通う子も珍しくありません。友達とおしゃべりしながら、長い道のりを歩きます。
- 午前(学校) 二部制の学校の場合、午前組は授業を受けます。お腹を空かせながらも、一生懸命勉強に集中します。
- 午後 授業が終わると、また長い道のりを歩いて家に帰ります。帰宅後は、畑仕事や食事の準備など、再び家の手伝いをします。
- 夜 電気が通っていない家も多いため、ろうそくやランプの灯りで宿題をします。そして、次の日に備えて早く眠りにつきます。
学校で勉強するだけでなく、家族の一員としてたくさんの仕事をこなしながら、たくましく生きているのです。
教育と社会の関係
教育は、一人の子供の人生だけでなく、国全体の未来を左右する、とても重要な役割を担っています。
- 貧困からの脱出 教育を受けることで、文字の読み書きや計算ができるようになります(これを識字と言います)。知識や技術を身につけることで、将来より良い仕事に就き、安定した収入を得て、貧困から抜け出すチャンスが生まれます。
- 社会の発展 教育を受けた人々が増えると、国の産業が発展したり、新しい技術が生まれたりします。また、保健や衛生に関する正しい知識が広まることで、病気の予防にもつながります。
- 特に重要な女子教育 女の子が教育を受けることは、特に重要だと考えられています。教育を受けた女性は、将来母親になった時に、子供の健康や栄養、教育に関心を持つ傾向が強く、それが次の世代の成長へとつながるからです。女子教育は、社会全体を良くする「賢い投資」なのです。
国が抱える教育の課題と未来
モザンビークの教育は、少しずつ改善されていますが、まだまだ大きな課題を抱えています。
- 高い中退率・留年率 貧困による家の手伝いや、授業についていけないなどの理由で、途中で学校を辞めてしまう(中退)子供や、進級できない(留年)子供がたくさんいます。
- 教育格差 都市部と農村部では、学校の施設や教員の質に大きな差があります。
- 自然災害や紛争の影響 モザンビークはサイクロンなどの自然災害が多く、そのたびに学校が壊されてしまいます。また、一部の地域では紛争が続いており、子供たちが安心して学校に通えない状況があります。
- 未来への展望 こうした課題に対し、モザンビーク政府や国際社会は、解決に向けて努力を続けています。 将来的には、ICT(情報通信技術)を活用した教育の導入も期待されています。例えば、タブレット端末を使った学習や、インターネット経由での遠隔授業などが実現すれば、地方にいても質の高い教育を受けられるようになり、教育格差の解消につながるかもしれません。
困難は多くありますが、学びたいと願う子供たちの強い意志が、モザンビークの教育の未来を切り拓く最大の力です。
教育と文化や価値観の関係
多様性を受け入れる「ポルトガル語」という共通基盤
モザンビーク国内には40以上の異なる言語が存在します。もし地域ごとの言語だけで教育が行われれば、国内でのコミュニケーションは非常に難しくなります。公用語であるポルトガル語で教育を受けることで、子供たちは出身部族や地域が違っても意思疎通ができる「共通の土台」を持つことになります。これは、多様な民族が「モザンビーク国民」としての一体感を持ち、互いの文化を尊重し合う価値観につながっています。音楽や文学などの創作活動も、ポルトガル語で行われることで国全体、さらにはブラジルやアンゴラなど他のポルトガル語圏の国々とも文化的な交流が生まれています。
「分かち合い」と「助け合い」の精神
1つの教室に100人近い生徒が学び、数人で1冊の教科書を共有する環境は、必然的に「協力」しなければ成り立ちません。わからないところを教え合ったり、ノートを見せ合ったりするのは日常茶飯事です。このような学校生活を通じて、個人で競い合うこと以上に、集団で目標を達成することの大切さや、持っているものを分かち合う「助け合いの精神」が自然と育まれます。これは、もともと地域コミュニティの絆が強いモザンビークの文化を、さらに強固にする役割を果たしています。
創意工夫と学びへの強い渇望
十分な教材や設備がない中で学ぶ子供たちは、与えられたもので最大限の効果を生み出す「創意工夫の力」に長けています。地面をノート代わりにして計算したり、身の回りにあるもので実験器具を作ったりと、たくましさを持っています。また、長い道のりを歩いて学校に通い、家の手伝いをしながら勉強時間を確保するという経験は、「学べること」そのものへの強い感謝と渇望を生み出します。教育の機会がいかに貴重であるかを肌で感じているため、知識を得ることへの情熱は非常に強いものがあります。
口承文化と文字文化の共存
識字率が向上する過程にあるモザンビークでは、文字で記録された歴史や情報だけでなく、長老から若者へ物語や歌、踊りを通じて知識や教えを伝える「口承文化」が今もなお非常に大切にされています。学校教育で文字文化を学びながらも、家庭や地域では口承文化に触れて育つことで、両方の良さを理解した豊かな感性が育まれます。話を聞く力、記憶する力、そして表現する力が、日々の生活の中で自然と鍛えられています。
まとめ
今回は、モザンビークの教育について探ってきました。たくさんの生徒が学ぶにぎやかな教室、教科書を共有しながら学ぶ姿、そして何キロも歩いて学校に通う子供たちの力強さ。私たちが当たり前だと思っている学習環境が、決して世界共通ではないことに気づかされたのではないでしょうか。
モザンビークの子供たちは、多くの困難を抱えながらも、教育が自分の未来、そして国の未来を明るく照らす光であることを知っています。だからこそ、彼らは学ぶことを決して諦めません。
この自由研究をきっかけに、モザンビークという国や、世界が抱える教育問題に少しでも興味を持ってもらえたら嬉しいです。そして、私たちがいる恵まれた環境に感謝し、自分たちに何ができるのかを考えてみる。それが、世界中の子供たちと共に生きる社会を作るための、大切な第一歩になるはずです。
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