今回のテーマ
「近所の雨水排水口・側溝のごみ量/流れについて観察し、豪雨時の浸水リスクと改善策を考えてみよう」
この自由研究は、私たちの家の周りにある「雨水を流すための仕組み(排水口や側溝)」が、きちんと機能しているかを調査する活動です。 普段は気に留めない道端の金網(グレーチング)やコンクリートの溝ですが、その中が落ち葉やゴミで詰まっていると、大雨が降ったときに雨水が流れず、道路が川のようになってしまう「内水氾濫(ないすいはんらん)」の原因になります。 身近な場所の「詰まり具合」を調べることで、地域の防災力を診断してみましょう。
自由研究の目的
近年、地球温暖化の影響もあり、短時間に猛烈な雨が降る「ゲリラ豪雨」や「線状降水帯」の発生が増えています。 どれだけ立派な下水道が整備されていても、その入り口である「排水口」が塞がれていては、水は地下に流れていきません。 「なぜ道路が冠水してしまうのか?」という仕組みを知ることは、自分たちの命や家を守る「防災」の第一歩です。また、側溝のゴミは最終的に川や海へ流れるため、環境問題について考えるきっかけにもなります。
自由研究のゴール
- レベル1 家の周りにいくつの排水口があり、どれくらい汚れているかを知る。
- レベル2 「なぜここは詰まりやすいのか?(木が多いから? コンビニが近いから?)」という原因を突き止める。
- レベル3 「もし1時間に100ミリの雨が降ったらここは危険だ」というハザードマップを自作したり、ゴミを減らすための具体的なアイデアを提案したりする。
実際の調査事例
- 落ち葉のマット 秋から冬にかけて、公園や街路樹の近くの排水口が、濡れた落ち葉で完全に覆われているケース。これでは水が一滴も入りません。
- プラスチックゴミの堆積 自動販売機やコンビニの近くの側溝に、空き缶やビニール袋が溜まり、水の流れをせき止めているケース。
- 土砂の蓄積 畑や工事現場の近くで、雨と一緒に流れてきた土や砂が側溝の底に溜まり、水が流れるスペースが浅くなってしまっているケース。
研究を進めるうえで、以下のポイントに注目しよう!
この研究で最も大切なポイントは「水の入り口」と「水の出口」を意識することです。 雨水は高いところから低いところへ流れます。「家の前の溝」だけでなく、「その水はどこへ向かって流れていくのか?」という広い視点を持つことが重要です。 また、地図(ハザードマップ)と実際の景色を見比べることで、地図には載っていない「リアルな危険箇所」を発見することが、この研究の最大の価値です。
自由研究の進め方
- ステップ1 地図を用意する
自宅周辺の地図(インターネットの地図を印刷したものなど)を用意し、調査するルートを決めます。 - ステップ2 晴れた日に調査する 【重要】絶対に雨が降っている時や、増水している時には近づかないでください。
安全な晴れた日に、排水口の場所を地図に書き込み、スマホなどで写真を撮ります。 - ステップ3 ゴミの量と種類を記録する
排水口の中を覗き込み(暗い場合は懐中電灯を使用)、何が詰まっているか記録します。「落ち葉率80%」「土砂率50%」など数値化すると分かりやすいです。 - ステップ4 坂道をチェックする
水は低い場所に集まります。道路の坂道をビー玉などで確認し、水が集まってきそうな場所にある排水口が詰まっていないか重点的にチェックします。 - ステップ5 予想とまとめ
「もし大雨が降ったら、ここは水たまりになる」という予想を地図に書き込み、「自分たちのハザードマップ」を完成させます。
自由研究から発見したアイデア
- 「排水口アート」の提案 ゴミを捨てにくくするために、排水口の周りに綺麗な絵を描くプロジェクトを提案する。
- 「アダプト・プログラム」の導入 市民が「里親」となって特定の側溝を掃除する制度(アダプト・プログラム)を、自分の町内会でもできないか提案する。
- 「ゴミよけネット」の工夫 落ち葉は通さず、水だけを通すような簡単なフィルターの仕組みを発明・工作してみる。
この自由研究に関連する仕事
- 土木(どぼく)エンジニア 道路や下水道、堤防などを作り、街を災害から守る設計をする仕事です。
- 都市計画プランナー どのような街を作れば、災害に強く、人々が快適に暮らせるかを計画する仕事です。
- 環境保全エンジニア 都市から出る排水をどのように綺麗にして自然に返すか、水質や生態系を守る技術者です。
- 防災士(ぼうさいし) 地域の危険箇所を把握し、災害時に人々がどう逃げればよいかを指導・助言する専門家です。
まとめ
足元の小さな排水口を調べることは、街全体の安全を守る大きな活動につながっています。 「水が流れないとどうなるか?」を想像する力は、将来どんな仕事についても役に立つ「リスク管理能力」そのものです。 まずは天気の良い日に、お散歩がてら地面を見て歩くことから始めてみましょう。あなたの発見が、地域の浸水被害を防ぐかもしれません。
関連書籍
身近な仕事について考えてみよう!
- 仕事のことを通じて学んだこと、楽しかったこと、難しかったことを書いてみましょう。
- テーマについての新しい発見や、自分が感じたことをまとめます。
- 今後、さらに調べてみたいことや、他の人に教えたいことがあれば、それも書いてみましょう。





