今回のテーマ
「町内の自転車利用率を時間帯別に調査して、通学時間における自転車活用の可能性を提案してみよう」
この自由研究は、皆さんが住んでいる「町内の自転車利用の現状」を時間帯別にデータとして集め、分析する実践的な調査です。特に、朝の「通学・通勤時間帯」に焦点を当て、自転車がどれだけ使われているかを調べます。集めたデータをもとに、町の交通の課題を解決したり、もっと便利で安全な町にするための「自転車活用アイデア」を提案することを目指します。
自由研究の目的
町の交通を「デザイン」する視点
あなたは毎日、通学路を歩き、町内の道路を見ています。この研究は、「自分の目で見たこと」を「客観的なデータ」に変え、町の交通問題を解決する「都市計画家」のような視点を養うことができます。
データ分析と論理的思考力
「なんとなく自転車が多い」ではなく、「朝7時半から8時までに○○地点を通過した自転車は150台で、そのうちヘルメット着用は30%だった」のように、具体的な数字で事実を捉え、論理的に考える力が身につきます。これは将来、どんな仕事に就くにも役立つ大切なスキルです。
自由研究のゴール
- レベル1 基本の調査と集計 設定した観察地点で、時間帯別の自転車台数を正確にカウントし、グラフにまとめる。
- レベル2 要因分析と考察 集計結果から、「なぜこの時間帯に自転車が多い(少ない)のか?」「特定の道路だけ利用が多いのはなぜか?」など、利用率の傾向と原因を考察する。
- レベル3 具体的な提案 分析結果に基づき、「通学路を安全にするための駐輪場設置場所」や「自転車利用を増やすための時間帯別キャンペーン」など、町内の人たちが実践できる具体的な**「自転車活用計画」**を提案する。
具体的な研究事例
事例 オランダ・アムステルダム
世界で最も自転車活用が進んでいる国の一つがオランダです。首都アムステルダムでは、都市設計の初期段階から「いかに自転車を優先するか」を考えています。例えば、
- 自転車専用道路の整備 車道とは完全に分離された、幅の広い専用レーンがある。
- 巨大な駐輪場 駅の地下や水上に、何千台もの自転車が停められる大規模な駐輪場がある。
- 「自転車が優先」のルール 交通ルールで自転車が車よりも優先される場面が多い。
彼らは、自転車の利用率を単に増やすだけでなく、「安全で快適で楽しい」移動手段として町全体で支えることで、渋滞の解消、環境負荷の低減に成功しています。あなたの町の研究も、将来アムステルダムのような素晴らしい町づくりの第一歩になるかもしれません。
研究を進めるうえで、以下のポイントに注目しよう!
- 調査場所の選定 ただ自転車が多い場所を選ぶだけでなく、「通学路の曲がり角」「駅前の駐輪場」「大きなスーパーの入口」など、利用目的が推測できる地点を複数選ぶと、分析に深みが出ます。
- 調査時間帯の設定 「通学・通勤ピーク(7:30~8:30)」と「日中の利用(14:00~15:00)」、「夕方の買い物・帰宅(17:00~18:00)」など、意図的に異なる時間帯を設定しましょう。これが「時間帯別調査」の鍵です。
- 観察項目の工夫 単に台数を数えるだけでなく、「ヘルメット着用率」「二人乗りの有無」「荷物の持ち方」「年代(大人か子どもか)」など、安全や利用状況に関わる項目を加えると、提案内容がより具体的になります。
自由研究の進め方
ステップ1 調査計画の立案
- 目的設定 「○○通りで通学時間帯の自転車利用の実態を明らかにし、安全性を高める提案をする」など、具体的な目的を定める。
- 調査地点と時間の設定 調査地点を3~5ヶ所選び、調査する曜日と時間帯を明確に決める(例:平日午前7:30-8:00)。
- 記録シートの作成 観察項目(台数、ヘルメット、年代など)を記録するための簡単なチェックシートを作成する。
ステップ2 データ収集(実地調査)
- 決めた時間に決めた場所へ行き、カウントと記録を行う。
- 注意点 交通の邪魔にならない安全な場所で、静かに観察しましょう。写真撮影は、人が特定されないように遠くから風景として撮るか、自転車自体にピントが合わないように注意して行いましょう。
ステップ3 データ分析と可視化
- 集計したデータを、時間帯別、場所別などで棒グラフや円グラフにまとめる。
- グラフを見て、一番利用率が高い(または低い)場所や時間帯はどこかを分析する。
ステップ4 考察と提案の作成
- 「なぜこの結果になったのか」を自分の体験や知識と結びつけて深く考える。
- 分析結果から見つかった課題(例:ヘルメット着用率の低さ、危険な運転が多い時間帯)を解決するための具体的な「自転車活用アイデア」を考え、まとめて発表資料を作成する。
自由研究から発見したアイデア
発見した課題 ヘルメット着用率の低さ
「シェアサイクルにヘルメットを組み込む」アイデア。町内の主要な駐輪場に、利用者が自由に使えるデザイン性の高いヘルメットレンタルステーションを設置し、安全とファッション性を両立させる。
発見した課題:危険な駐輪場所の多さ(特に駅前)
「時間帯別で変化するポップアップ駐輪場」アイデア。朝のピーク時だけ、駅前の広場の一部を一時的な自転車専用レーンと駐輪スペースとして区切り、安全な導線と混雑解消を両立させる。
発見した課題:日中の利用者の少なさ
「健康促進サイクルマップ」の作成と配布。町内の公園や図書館を巡る、自転車で走りやすいルートを紹介する地図を作成し、健康維持や地域散策での利用を促す。
この自由研究に関連する仕事
- 都市計画家(まちづくりプランナー) 道路や交通、公園など、町全体の設計や改善計画をデータに基づいて行う仕事。
- 交通コンサルタント 特定の地域の交通渋滞や安全性の問題に対し、専門的なデータ分析で解決策を提案する仕事。
- データサイエンティスト 大量のデータ(この研究では自転車利用データ)を分析し、ビジネスや社会の課題解決に役立てる仕事。
- 製品デザイナー/モビリティ開発者 人々が「もっと使いたい」と思うような、新しい自転車や関連製品(アプリ、駐輪システムなど)を開発する仕事。
まとめ
この自由研究は、皆さんの周りにある「当たり前の風景」の中に潜む課題を見つけ出し、「データという武器」を使って解決策を生み出す、とても価値のある活動です。自転車の利用率を調べることは、単なる数字集めではありません。それは、「どうすれば自分の町をもっと住みやすく、安全にできるか」という未来への問いかけです。
あなたの鋭い観察力と分析力が、未来の町づくりを担う第一歩になるはずです。さあ、調査記録シートを持って、あなたの町へ飛び出しましょう!
関連書籍
身近な仕事について考えてみよう!
- 仕事のことを通じて学んだこと、楽しかったこと、難しかったことを書いてみましょう。
- テーマについての新しい発見や、自分が感じたことをまとめます。
- 今後、さらに調べてみたいことや、他の人に教えたいことがあれば、それも書いてみましょう。





