今回のテーマ
「eSportsを街で開催したら地域経済にどれだけ波及効果があるか予測モデル化してみよう」
このテーマは、eSports(エレクトロニック・スポーツ)の大会をあなたの住む街で開催したら、地域の経済がどれくらい元気になり、お金が動くかを「数字とデータ」を使って予測・分析するものです。ゲームというエンターテイメントが、地域活性化の新しい手段になるかを、経済学の考え方を使って科学的に探究します。これは、未来のスマートシティをデザインするための重要なステップです。
自由研究の目的
- 未来予測のスキルを身につける 複雑な現実の出来事(この場合はeSportsイベント)を、数学的なモデルを使ってシンプルにし、未来を予測する力を養います。これは、あらゆる仕事で役立つ、最も価値のあるスキルの一つです。
- 身近な地域を見る目が変わる 普段見慣れた街のホテルやレストラン、交通機関が、イベントによってどのように動くかを理解することで、地域経済の仕組みが見えてきます。
- 社会課題解決への貢献 地方の活気を取り戻す「地域創生」は大きな社会課題です。ゲームという新しいアイデアが、この課題を解決する切り札になるかを、自分の力で検証できます。
自由研究のゴール
- レベル1 eSportsイベントの直接的な経済効果(来場者が使うお金の総額)を計算できるようになる。
- レベル2 イベント誘致による地域の課題と魅力を見つけ、具体的なイベント開催場所や規模を提案できるようになる。
- レベル3 産業連関表の考え方を応用し、イベントによる波及効果(間接的な効果)を仮説として立てられるようになる。
eSportsイベントが地域経済に貢献した事例
- 韓国ソウルやアメリカ・ロサンゼルス 大規模な国際大会が開催されると、世界中からファンが訪れ、大会期間中は周辺のホテルが満室になったり、地元の飲食店が一時的に大幅な売上増を達成したりする事例が報告されています。
- 事例の分析 これらの都市では、eSportsイベントを単なる「ゲーム大会」としてではなく、「国際観光誘致イベント」として位置づけています。大会のチケット代収入だけでなく、遠方からの来場者による宿泊・飲食・交通・観光といった周辺産業への消費が、経済効果の大部分を占めています。これにより、地域は一時的な賑わいだけでなく、「eSportsに強い街」としてのブランドイメージも獲得しています。
研究を進めるうえで、以下のポイントに注目しよう!
- 予測モデルの設計 街の経済を理解するために、使うお金の種類(宿泊費、飲食費など)と、そのお金を使う人(地元、市外、県外、海外など)を細かく分けて考えます。
- データ集めの工夫 「来場者はどこから来るか」「どれくらいの期間滞在するか」といった仮説を立てるために、インターネットで過去の類似イベント(音楽ライブ、スポーツ大会など)のデータを調べ、参考にします。
- 計算の単純化 経済の波及効果を厳密に計算するのは難しいので、「使われたお金の半分は地元の他の産業に使われる」など、分かりやすいルール(ルールを決めることが重要)を決めて計算を進めます。
自由研究の進め方
ステップ1 イベントの基本ルールを設定しよう
まず、大会の「もしも」の条件を決めます。
| 項目 | 設定する内容 | 調べる場所やヒント |
| 場所(会場) | あなたの街で一番大きな体育館やイベントホールを選びます。 | 市のホームページ、施設のウェブサイトで収容人数を調べます。 |
| 規模(観客数) | 収容人数の80%が来場したと仮定しましょう。 | (会場の収容人数) ×0.8 で計算します。 |
| 期間 | 週末の2日間(土・日)など、具体的な日数を決めます。 |
例: 収容人数3,000人のホールを選んだ場合、観客数は3,000×0.8 = 2,400人、開催期間は2日間と設定します。
ステップ2 来場者をグループ分けして消費を予測しよう
観客を「どこから来たか」でグループ分けし、それぞれが大会期間中にお金を使う額(一人あたりの消費額)を仮定します。
| グループ | 街での行動の予想 | 割合の仮定 | 一人あたりの消費額(仮定) |
| 地元の人 | 宿泊はしない。交通費と軽食代が中心。 | 観客全体の50% | 1,000円(2日間合計) |
| 近隣エリア | 宿泊はしないが、食事や少しのお土産を買う。 | 観客全体の40% | 5,000円(2日間合計) |
| 遠方(宿泊者) | ホテルに泊まり、食事や観光、お土産に多く使う。 | 観客全体の10% | 20,000円(2日間合計) |
ステップ3 直接的な経済効果を計算しよう
ステップ1で決めた観客数と、ステップ2の消費額を使って、大会が直接もたらすお金の合計(直接的な経済効果)を計算します。
観客数×0.50×1,000円
+
直接的な経済効果= 観客数×0.40×5,000円
+
観客数×0.10×20,000円
例:観客数2,400人の場合(2,400×0.5×1,000円)+(2,400×0.4×5,000円)+(2,400×0.1×20,000円)を
計算しましょう。
ステップ4 波及効果(間接的な効果)の仮説と計算をしよう
直接使われたお金が、街の中で巡り巡ってさらにどれだけ増えるか(波及効果)を考えます。
- 波及率の仮説 直接的な経済効果で儲かったお店(ホテル、飲食店など)は、その売上の一部を、仕入れや人件費として街の他の人やお店に使います。この「巡っていく割合」を波及率として仮定します。今回は分かりやすく50%と仮定しましょう。
- 波及効果の計算 波及効果=ステップ3の直接的な経済効果×0.50
- 全体の経済効果 全体の経済効果=直接的な経済効果+波及効果
ステップ5 結論と考察をまとめる
計算結果に基づき、以下の問いに答えて研究をまとめます。
- 発見したこと eSports大会を開催することで、あなたの街に「合計〇〇円」の経済効果があることがわかりました。
- 考察 一番効果が大きかったのは、どのグループ(地元、近隣、遠方)の消費ですか?なぜですか?
- 提案 もし効果を上げるなら、宿泊者が増えるように「夜のイベント」を企画するなど、どんなアイデアが必要か提案しましょう。
自由研究から発見したアイデア
- 地域限定ゲームグルメの開発 イベント来場者向けに、地元産の食材を使った特別な「ゲーム飯」を開発し、来場者にお金を使ってもらうための具体的な企画を提案する。
- eSports経済圏の循環システム 大会チケットと地元の飲食店で使える割引クーポンをセットにするなど、お金が地域内を確実に循環するための新しい仕組み(システム)を提案する。
- デジタルインフラ投資の提案 eSports大会は高速インターネットが必須です。大会誘致をきっかけに、「街全体のインターネット環境を整備すべき」という未来への投資の提案をする。
この自由研究に関連する仕事
- データサイエンティスト 複雑なデータを分析し、未来の傾向やビジネス戦略を予測する専門家。
- 経済コンサルタント 企業や自治体に対し、経済的な成長戦略や投資効果をアドバイスする専門家。
- 都市計画・地域振興プランナー 交通、インフラ、イベントなどを設計し、持続可能な街づくりを計画する専門家。
まとめ
この自由研究は、あなたが普段楽しんでいるeSportsというコンテンツが、実は社会を動かす大きな力を持っていることを発見するための冒険です。単なるゲーム好きで終わらず、「ゲームを社会の力に変える」方法を、データと論理で解き明かすことは、未来のあなたのキャリアを形作る貴重な経験になるはずです。さあ、あなたも未来の街づくりエコノミストとして、eSportsの力を最大限に引き出す予測モデルを設計してみましょう!
関連書籍
身近な仕事について考えてみよう!
- 仕事のことを通じて学んだこと、楽しかったこと、難しかったことを書いてみましょう。
- テーマについての新しい発見や、自分が感じたことをまとめます。
- 今後、さらに調べてみたいことや、他の人に教えたいことがあれば、それも書いてみましょう。





