今回のテーマ
「レシート記載のポイント制度(たとえば電子マネーのポイント還元)で購買行動が変わるか実地調査してみよう」
ポイント還元は、私たちの行動を操る魔法でしょうか?あなたがスーパーやコンビニで買い物をする時、レジで「ポイントカードはお持ちですか?」と聞かれることがありますね。このポイント制度(電子マネーのポイント還元や店舗独自のポイントなど)は、私たちの毎日の買い物のレシートに必ず記載されています。この研究テーマでは、レシートに記載されたポイント還元情報が、本当に私たちの「何を買うか」「いつ買うか」という購買行動に影響を与えているのかを、実際に調査し、分析します。ポイントがどれだけ魅力的だと、人は行動を変えるのでしょうか?
自由研究の目的
ポイント制度は、企業が「お客様にもっと買ってほしい」と考え、私たちの購買意欲を高めるために考えた仕組みです。これは、私たちが日々の生活で無意識に行っている「行動」を、経済学や心理学の視点から理解する最高の教材になります。
まず、企業目線で考えれば、企業がなぜ特定の商品のポイントを増やしたり、特定の日にポイントアップキャンペーンをしたりするのか、その戦略がわかります。次に、消費者目線で考えれば、私たちが「おトクだ!」と感じる感情の裏側にある心理的なカラクリを知ることができます。この研究を通じて、あなたはレシートを見る目が変わり、経済の動きと人間の心がどのように結びついているのかを発見できるでしょう。
自由研究のゴール
- レベル 1 ポイントが付く商品と付かない商品で、自分の家族の購買頻度がどう違うかをレシートから読み取ることを目指します。
- レベル 2 複数店舗のポイント制度や還元率を比較し、ポイントの高い店舗を選ぶという「友人の行動変化」を具体的なデータで証明するレベルに挑戦します。
- レベル 3 調査結果から「人が購買行動を変えるために必要な最低ポイント還元率」を推定し、企業への新しい販促アイデアとして提案することを目指しましょう。
日常にある具体的な事例
- 「ポイント5倍デー」を狙う行動 普段は火曜日に買い物をする人も、「水曜日はポイントが5倍だから」とあえて水曜日に買い物を済ませる。これはポイントが「いつ買うか」というタイミングを変えている事例です。
- 高ポイント商品へのシフト いつもの商品ではなく、「今月はA社の洗剤がポイント20%還元だ」と知って、普段買わない商品に切り替える。これはポイントが「何を買うか」という商品選択を変えている事例です。
- あと少しの「ついで買い」 「あと100円でポイントが2倍になる」というレシートを見て、買う予定のなかったお菓子をカゴに入れる。これはポイントが「どれだけ買うか」という購入量を変えている事例です。
研究を進めるうえで、以下のポイントに注目しよう!
この研究を成功させるためのポイントは、「ポイントがある時」と「ポイントがない時」の購買行動を比較することです。単に「ポイントが付く」という事実だけでなく、「1%還元」なのか「10%還元」なのかという具体的な数字(還元率)に着目して分析することで、より深い洞察が得られます。
また、この研究では「購買行動が変わる」ということを、次の3つに定義しましょう。一つ目は購入する商品が変わること、二つ目は購入するタイミングが変わること、三つ目は購入量が変わることです。レシートを単なる紙ではなく、「ポイント還元率」「購入日」「商品カテゴリ」といったデータとして整理し、グラフ化することが分析の鍵になります。
自由研究の進め方
Step 1 調査対象と期間の決定
家族の買い物や、協力してもらえる友人・知人のレシートを収集します。調査期間は最低2週間から1ヶ月とし、調査店舗(例:スーパーA、ドラッグストアB)を決めます。比較のため、「ポイント5倍デーを最低2回は含む期間にした方が良いでしょうか?」と、あらかじめ期間を意識して設定しましょう。
Step 2 データの収集と記録
収集したレシートを一覧表(スプレッドシートなど)に記録します。記録する項目は、「商品名」「価格」「獲得ポイント」「還元率」「購入日」です。ここで、「ポイントアップ対象外の商品も、比較対象として記録すべきでしょうか?」と疑問を持ち、対象外の商品が「通常の商品」の購買傾向を示す重要なデータになることを理解しましょう。
Step 3 行動変容の分析
記録したデータから、以下の3つの行動変化をチェックします。「ポイントが高い商品Aを、通常時よりも多く買っているか?」「ポイントデーのために、他の曜日の買い物を減らしているか?」などを細かく分析します。特に、「ポイント還元の対象商品の購入頻度は、通常時の何%増えていれば『行動が変わった』と言えるでしょうか?」という自分なりの基準を作って分析しましょう。
Step 4 結果のグラフ化と考察
曜日別・商品カテゴリ別の購買金額を棒グラフなどで作成し、ポイント還元による変化を視覚化します。最後に、なぜその行動変化が起きたのかを心理学の視点(例:損をしたくないという「損失回避」の心理)で考察します。
自由研究から発見したアイデア
もしあなたの調査から、「人は○%の還元率から行動を変える」という発見があったら、その発見を元に社会を良くするためのアイデアを提案してみましょう。
- 社会貢献ポイント制度 特定のエコバッグ利用や、プラスチックフリーの商品購入など、環境に優しい行動をした時だけポイントを高還元にする制度を提案してみましょう。人々はポイントのために、環境に配慮した行動を無意識に取るようになるかもしれません。
- 健康促進ポイント制度 野菜や魚介類など、健康に良い食品のポイント還元率を高く設定する制度を提案します。ポイントがおトクだから、と自然と健康的な食生活を選ぶようになるかもしれません。
この自由研究に関連する仕事
- マーケティングリサーチャー 消費者の購買行動をデータから分析し、企業が「何を」「いつ」「どう売るか」の戦略を考える仕事です。
- データサイエンティスト/アナリスト レシートのような大量のデータを統計的に分析し、未来の消費行動を予測する仕事です。
- 小売業のバイヤー・経営企画 ポイント制度のような販売促進(販促)戦略を企画し、お店の売り上げを最大化する仕組みを作る仕事です。
まとめ
レシートの片隅に書かれたポイントは、単なるおまけではなく、私たちの行動や感情を動かす強力なツールであることがわかりました。この自由研究は、あなたが日常の買い物から一歩踏み出し、経済の戦略と人間の心理を科学的に分析する力を養う素晴らしい機会です。
この研究を終える頃には、あなたは単なる消費者ではなく、経済の動きを読み解ける分析者になっているでしょう。行動経済学の魔法を解き明かし、未来のマーケティング戦略を考える研究に、ぜひ挑戦してみてください!
関連書籍
身近な仕事について考えてみよう!
- 仕事のことを通じて学んだこと、楽しかったこと、難しかったことを書いてみましょう。
- テーマについての新しい発見や、自分が感じたことをまとめます。
- 今後、さらに調べてみたいことや、他の人に教えたいことがあれば、それも書いてみましょう。