世界の教育|自由と平等が支える子供の学びと成長、未来を創るデンマーク教育の先進性に迫る

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教育制度の特徴

    デンマークでは、小学校から高等教育まで、公立学校教育は原則無料で受けられることが大きな特徴です。就学義務は6歳から16歳までと定められており、この10年間を「フォルケスコーレ(Folkeskole)」と呼ばれる基礎教育機関で学びます。フォルケスコーレでは、国が定めたカリキュラムに基づきながらも、各学校や地域の裁量が大きく、子どもたちの興味や特性を尊重した教育が行われる点が魅力です。また、高等学校(Gymnasium)や職業訓練校(Erhvervsskole)など、多様な進路を選べる柔軟性もデンマーク教育の大きな特徴となっています。

    教育方法

    デンマークの教育は、「子ども自身が学びたいことを主体的に探究できる環境」を重視します。たとえば、フォルケスコーレでは以下のような取り組みが一般的です。

    • プロジェクト型学習(PBL)
      数週間にわたってグループでテーマを決め、調べたり実験したりしながら完成させる授業スタイルです。たとえば「地元の生態系を調べる」「エネルギーの仕組みを実験で理解する」など、実生活に結びついたテーマが多く、「なぜ?どうして?」という疑問を自分たちで解決しようとする習慣が身に付きます。
    • 協働学習(グループワーク)
      少人数のグループで意見を出し合いながら課題に取り組むことで、コミュニケーション能力や協力する力を養います。教員はファシリテーターとして、子どもたちが自分で考えるサポートを行います。
    • 野外教育や体験学習
      自然豊かな環境を生かし、時には森やビーチに出かけての授業を行います。科学の授業では川の水質を調べたり、生物の観察をしたり、地域の歴史を学ぶ際は近隣の博物館を訪れることもあります。
    • デジタルツールの活用
      タブレットやパソコンを使った授業も盛んで、プログラミングやデジタルリテラシーを早い段階から学びます。オンライン教材を活用して、自分のペースで学習を進める形式も取り入れられています。

    教育への取り組みや支援

    デンマーク政府や自治体、地域社会が連携し、すべての子どもが安心して学べるようにさまざまな支援を行っています。

    1. アフタースクール・クラブ(SFO)
      フォルケスコーレの授業終了後、午後や長期休暇中に子どもを預かる「SFO(Skolefritidsordning)」という仕組みがあります。保護者が働いている間も子どもが安全に過ごせるだけでなく、自由遊びや簡単な宿題サポートを通して、自主性を育む場となっています。
    2. 特別支援教育
      学習に困難を抱える子どもや発達障害などを持つ子どもには、専門の教員やカウンセラーが配置され、個別支援計画に基づいて学習やソーシャルスキルをサポートします。必要に応じて少人数クラスに分けたり、補助機器を導入したりすることで、「できること」を増やす支援が行われます。
    3. 給食制度
      多くの学校では無料で給食を提供しています。栄養バランスを考えたメニューが用意され、地元産の食材を使うことも多いため、食育や地域活性化にもつながっています。
    4. 教員の研修・サポート
      デンマークでは、教員は公的大学院で免許を取得し、卒業後も定期的に研修を受けます。ICT教育や特別支援、最新の教育理論など、多様なテーマで継続的に学ぶ機会が整っており、現場でのノウハウ共有やチームティーチングにも力を入れています。
    5. 奨学金・留学支援
      高等教育(大学・短大・専門学校)では学費が無料ですが、生活費が必要な学生には国が給付する奨学金制度があります。また、交換留学プログラムやEU圏内の Erasmus(エラスムス)留学制度を活用し、海外で学ぶ機会も豊富に用意されています。

    子供達の1日の過ごし方

      以下は、フォルケスコーレに通う10歳前後の子ども(小学4〜5年生)が平日に過ごす一例です。

      1. 朝の登校(8:00〜8:15)
        学校では、教室に入る前にみんなで「おはようございます」と挨拶。子どもたちは自転車や徒歩で通学し、途中で友達と話しながら登校することが多いです。
      2. 授業(8:15〜10:00)
        朝イチで国語や数学を行うことは少なく、まずはアイスブレイクや簡単なストレッチ、全体でのミーティングからスタート。今日のスケジュールや目標をみんなで共有し、自由に意見を出し合います。
      3. 休憩(10:00〜10:15)
        廊下や校庭で自由に遊ぶ時間。シュートを決めるためにサッカーをしたり、鬼ごっこをしたり、外遊びを楽しみます。
      4. 授業(10:15〜12:00)
        プロジェクト型学習の時間。現在は「地域の水質調査プロジェクト」を行っており、グループに分かれて川へサンプルを取りに行く計画を立てる子もいます。教員はサポート役として、必要な機材(ビーカーや試験紙など)を準備しています。
      5. 昼食(12:00〜13:00)
        学校で提供される給食をみんなで一緒に食べます。野菜たっぷりのスープや全粒粉のパン、地元農家の乳製品を使ったメニューが人気です。食後は教室に戻り、自分たちで後片付けをします。
      6. 午後の授業(13:00〜15:00)
        体育、音楽、アートなどクリエイティブな科目が多めです。天気が良い日は体育の授業で外の運動場を使い、サッカーやバスケットボールに夢中になります。
      7. アフタースクール(15:00〜17:00)
        授業が終わると、そのままSFOに残る子もいれば、放課後クラブで図書館を利用する子もいます。宿題をそこですませたり、自習スペースで自由に絵を描いたり、友達とおしゃべりをしたりして過ごします。
      8. 帰宅(17:00〜)
        保護者の仕事の都合に合わせて順次帰宅。夕食後は家族でリラックスタイム。子どもたちは翌日の準備をしながら、宿題の続きを進めることもあります。

      教育と社会の関係

      デンマークでは、「教育」は社会全体で支えるべき公共財産と考えられています。国民の高い税負担率は、質の高い教育を維持するための土台となり、誰もが平等に学ぶ権利を保障しています。

      • 福祉国家との連携
        教育システムは、幼児期から高齢期まで生活の各フェーズをサポートするデンマーク福祉モデルと密接に結びついています。子どもが健康的に育つための保育や医療、教育後の就職支援や再教育など、ライフステージに応じた包括的サポートが社会全体で実現されています。
      • 地域コミュニティの協力
        フォルケスコーレは地域コミュニティの中核となっており、保護者、自治体、NPO、地元企業などが連携して子どもたちの学びを支えます。地域行事やボランティア講師の招へいを通じて、子どもたちは学校外の大人とも触れ合い、多様な価値観を学びます。
      • 就労と教育の連携
        職業訓練校では地元の企業が教育プログラムに協力し、インターンや実務経験の機会を提供します。これにより、若者は早い段階から産業界が求めるスキルを学び、卒業後すぐに就職しやすい環境が整っています。その結果、若年失業率が低く、社会全体の生産性も高く保たれています。

      国が抱える教育の課題と未来

      課題

      • 移民・難民の子どもたちの統合支援
        デンマークには多くの移民や難民の家庭があり、母語がデンマーク語でない子どもも増えています。言語習得や文化の違いによる学習格差を埋めるための特別プログラムや個別支援が求められていますが、十分な教員数や予算確保が課題となっています。
      • 地方部の学校統合と過疎化
        人口減少が進む地方では、生徒数が少なくなった結果、複数の学校を統合しなければならないケースがあります。これにより、通学時間が長くなったり、地域コミュニティが弱まったりする影響が懸念されています。
      • 教員不足と待遇問題
        近年、教員志望者の減少や離職率の上昇が見られ、特に特別支援や外国語教員などの専門職教員の不足が深刻化しています。給料や勤務環境の改善、研修制度の強化が急務です。

      未来に向けた取り組み

      • デジタル教育のさらなる推進
        タブレットやオンライン学習プラットフォームを活用し、自宅学習や遠隔地の子どもにも質の高い授業を届ける仕組みを強化します。AIを活用した個別最適化学習も研究段階にあり、将来的には学習進度や理解度に応じて教材が自動で選ばれる可能性があります。
      • 包摂的教育(インクルージョン)の拡大
        難民や障がいのある子どもが地域の学校で共に学べるインクルーシブ教育をさらに進めるため、特別支援教員や通訳ボランティアの増員、保護者向け説明会やコミュニティワークショップの開催が計画されています。
      • 持続可能な学校づくり
        環境意識が高いデンマークでは、学校建築や運営にも再生可能エネルギーの活用、エネルギー効率の高い設備導入が進められています。子どもたちが実際にソーラーパネルや省エネ設備を使いながら学ぶことで、地球環境への関心が自然に育まれる仕組みが整いつつあります。

      教育と文化や価値観の関係

      フラットな関係性と「ヒュッゲ(Hygge)」文化

      フォルケスコーレの授業では教師と生徒の間に上下関係を強調せず、対話を重視します。教室内で生徒が意見を自由に発言し、教師も同じ目線で応じるスタイルは、家庭や地域社会にも浸透し、みんなでくつろぎを共有する「ヒュッゲ」の精神(居心地の良さ、心地よい雰囲気を大切にする価値観)につながっています。

      協働学習が育む「フレム(Fællesskab)」=共同体意識

      プロジェクト学習やグループワークを通じて、子どもたちは他者と協力して課題を解決する経験をします。こうした教育体験が、大人になっても「みんなで助け合う」「相手の意見を尊重する」社会風土を支えています。実際、デンマーク社会では地域行事や自治活動などで住民同士が積極的に協力し合う機会が多く、幼少期から身についた協働の姿勢が文化に根付いています。

      ジェンダー平等とリベラルな価値観

      幼い頃から男女混合のグループ活動や体育の授業で男女の隔たりなく一緒に学ぶことで、「男女は同じように尊重されるべき」という考えが自然と育ちます。その結果、デンマークでは社会全体で男女平等意識が高く、育児休暇やワークライフバランスの取り組みも進んでいます。教育で体験した「お互いの違いを尊重する姿勢」が、そのまま社会文化として継承されています。

      自然や環境を大切にする価値観

      野外授業や体験学習を通じて、子どもたちは自然の中で「地球の一部として生きる」感覚を体験します。この学びが、成人後のサイクリング文化やリサイクルの徹底、再生可能エネルギーへの親しみなど、環境に配慮したライフスタイルへとつながっています。結果として、街の景観には自転車道が整備され、地域のコミュニティガーデンやエコビレッジなどが盛んに活動しています。

      コミュニケーション重視で育むオープンマインド

      授業でペアワークやディスカッションを頻繁に行うため、子どもたちは「自分の意見を伝え、相手の意見を受け止める」訓練を幼い頃から積みます。この経験が、外国からの移民や留学生を受け入れる際のオープンさにつながり、「異文化理解」や「多文化共生」といった価値観が日常的に共有される文化風土を形成しています。

      まとめ

      デンマークの教育は、「誰も取り残さない」ことを大切にする福祉国家の理念と、「個人の主体性」を尊重する教育文化が融合した、ユニークかつ先進的なシステムです。フォルケスコーレでは、子どもたちが自分で考え、協力し、失敗を恐れずに挑戦する力を育みます。さらに、無償の教育や充実した支援制度、地域社会との連携によって、すべての子どもが安心して学べる環境が整えられています。これからも移民・難民の統合支援やデジタル教育の推進など、新たな挑戦に取り組みながら、持続可能で公平な教育の未来を築いていくことでしょう。デンマークの教育に触れることで、私たちも「学びの本質」や「社会と教育のつながり」を再考し、自分たちの学びをより豊かにしていくヒントが得られるはずです。

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