教育制度の特徴
チリの教育制度は、義務教育が小学6年間(6~12歳)と中学4年間(12~16歳)の計10年間で構成され、公立校・私立補助校・完全私立校が並立しています。義務教育を監督するのは文部省(Ministerio de Educación)で、地域による教育格差を是正するための法律改正や支援策が近年進められています。高校卒業後は大学進学を目指す生徒や、職業訓練校(CFT)・技術専門学校(IP)へ進学する生徒など、多様な進路が選択可能です。
教育方法
授業は主に教師中心の講義形式が基本ですが、近年はプロジェクト型学習(PBL)やアクティブラーニングも取り入れられています。特に英語教育やICT(情報通信技術)を活用した授業が拡大中で、タブレットや電子黒板を使ったグループワークを行う学校も増えています。また、学校評価制度の一環として定期的な到達度テスト(SIMCE)が行われ、結果をもとにカリキュラム改善が図られています。
教育への取り組みや支援
- 奨学金・助成金制度 大学入学試験(PSU)で成績優秀な生徒への国家奨学金「Beca Excelencia Académica」や、低所得家庭向けの「Beca Presidente de la República」など、多様な支援が用意されています。
- 給食・栄養プログラム JUNAEB(全国学生食糧支援庁)が、全国の公立校で給食提供や栄養指導を行い、貧困家庭の子どもたちの学習環境を整えています。
- 放課後プログラム 特に都市部では、スポーツや芸術、IT教室などを無料または低額で提供する地域センターが増え、学習機会を広げています。
子供達の1日の過ごし方
- 朝(7:30~8:00) 保護者と一緒に家を出て、徒歩やスクールバスで登校。
- 午前(8:00~12:30) 国語、数学、理科、社会などの主要教科を座学で学ぶ。
- 昼休み(12:30~13:30) JUNAEBの給食を食べ、校庭で友達と遊ぶ。
- 午後(13:30~16:00) 英語や体育、音楽、美術など選択教科。放課後は部活動や放課後教室でプログラミングやダンスを楽しむ生徒も。
- 夕方以降 宿題や復習をしつつ、家族と夕食。週末は図書館や地域センターで自習や課外活動に参加します。
教育と社会の関係
チリでは教育が社会的流動性の鍵とされ、良質な教育を受けることが経済的成功につながると信じられています。しかし、所得格差によって通える学校の質や家庭の学習環境に差が生じるため、教育は格差拡大の要因にもなり得ます。2019年の社会運動(エスタリード・ソシアル)では、教育の公平性を求める声が大きく、教育改革は社会全体の課題として注目を浴びました。
国が抱える教育の課題と未来
- 地域格差の是正 遠隔地や先住民族地域の学校では教員不足や施設老朽化が深刻。
- 教員の処遇改善 他国に比べて教員給与が低く、若手教員の確保が困難。
- デジタル格差 農村部ではICT機器の整備・通信環境が遅れており、オンライン学習への対応が急務です。
今後は、地方自治体との連携強化、教員研修の充実、国際ベンチマーク(PISA)結果を踏まえたカリキュラム改革が進むことで、より質の高い教育機会の均等化が期待されます。
教育と文化や価値観の関係
市民参加意識の醸成
公民教育で学ぶ「民主主義」や「権利・義務」の授業を通じて、子供の頃から地域の意思決定や社会運動に関心を持つようになります。2006年の「ペインティナ(高校生運動)」や2019年の大規模デモへの若者の参加も、学校で育まれた市民意識の表れです。
環境保護への高い関心
地理・生物の授業でパタゴニアやアタカマ砂漠など多様な自然環境を学ぶことで、エコツーリズムや自然保護活動が盛んな文化が育まれます。卒業研究で地域の水資源を調査し、地元コミュニティと連携して清掃活動を行う学生も少なくありません。
多文化共生の尊重
マプチェ先住民の歴史や文化を学ぶ授業は、公立校のカリキュラムにも組み込まれています。その結果、伝統舞踊「アラウカーナ」やマプチェ語ワークショップが学校行事に登場し、異なる文化を尊重する姿勢が日常化しています。
音楽・芸術への親しみ
学校音楽教育で「キュエカ」やフォルクローレを学ぶ時間があり、地方の祭りや文化イベントで子供たち自身が演奏・舞踊を披露します。この経験が、チリの音楽フェスやストリートパフォーマンス文化につながっています。
連帯感とチームワーク
年に一度行われる「スポーツ・デー(インターコレヒアル)」やグループプロジェクトでは、異なる学年・学校同士で競い合いながら協力することで、共同体としての強い連帯感を育みます。これがコミュニティ単位での結束力や助け合い精神を支える基盤に。
実践的学びから生まれる起業マインド
科学フェアやビジネスコンテストを通じて、自分で課題を設定し解決策をプレゼンする経験が、若い起業家文化やスタートアップ精神の土壌となっています。高校生が開発したアプリが現地メディアで紹介される例もあります。
まとめ
チリの教育は、義務教育10年制を軸に多様な進路選択と公的支援が整えられていますが、所得や地域による格差是正が最大のテーマです。プロジェクト型学習やICT活用といった新しい教育方法が導入されつつ、政府と地域社会が協力して教育環境を改善。未来のチリを担う子どもたちが、より平等で質の高い学びを得られるよう、今後の改革に注目が集まっています。
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