世界の教育|サイレンの下でも学びは止めない!ウクライナの教育が育む、国の誇りと未来への希望を探る

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教育制度の特徴

ウクライナの教育制度は、2017年から「新しいウクライナの学校(New Ukrainian School)」という大きな改革を進めていました。これは、ソ連時代からの暗記中心の教育から、子どもたちの個性や創造性を伸ばす教育へと転換を目指すものです。

制度の基本は以下のようになっています。

  • 就学前教育(3歳〜6歳) 幼稚園や保育園で行われます。
  • 完全中等教育(6歳〜18歳) 全ての子どもが12年間の一貫した教育を受けます。これは3つの段階に分かれています。
    • 初等教育 1年生〜4年生
    • 基礎中等教育 5年生〜9年生
    • 高等中等教育 10年生〜12年生
  • 高等教育 大学など

この改革の大きな特徴は、単に知識を教えるだけでなく、自分で考える力、コミュニケーション能力、そして何より「ウクライナ国民としての誇り(アイデンティティ)」を育むことに重点を置いていた点です。しかし、2022年のロシアによる全面侵攻が、この新しい教育のあり方を根底から揺るがすことになりました。

教育方法

侵攻前のウクライナでは、グループワークやプロジェクト学習など、生徒が主体的に参加する授業が増えていました。

しかし現在、教育の方法は状況に応じて多様化しています。

  • オンライン学習 最も一般的な方法です。国内外に避難している子どもたちも、インターネットを通じて授業に参加します。先生たちは、画面越しに子どもたちの心に寄り添いながら授業を進めています。
  • 対面授業 比較的安全な地域では、学校での対面授業が行われています。ただし、空襲警報が鳴れば、授業を中断してすぐに防空壕へ避難しなければなりません。
  • ハイブリッド学習 オンラインと対面を組み合わせた方法です。
  • 地下鉄駅の教室 北東部の都市ハルキウなど、激しい攻撃にさらされる地域では、地下鉄の駅のホームを防音壁で仕切って教室を作り、授業を行っています。列車の音や振動の中でも、子どもたちの学ぶ声が響きます。

どんな状況でも学びを止めないよう、先生と生徒が一体となって工夫を凝らしているのが、今のウクライナの教育方法の最大の特徴です。

教育への取り組みや支援

ウクライナ政府は、戦争という非常事態にあっても「教育は国家の未来そのもの」と考え、学びを続けるための努力をしています。全国統一オンライン学習プラットフォームを整備し、どこにいても学べる環境を提供しています。

そして、その取り組みは国際社会からの力強い支援によって支えられています。

  • ユニセフ(国連児童基金) 教科書の印刷、ノートやペンなどの学用品の配布、教師への研修、そして何より、子どもたちの心の傷を癒やすための心理社会的サポートを行っています。
  • ユネスコ(国連教育科学文化機関) 破壊された学校の情報を収集し、復旧を支援しています。また、何百万人もの子どもたちにノートパソコンなどのデジタル機器を届ける活動も進めています。
  • 世界中の国々やNGO 日本を含め、多くの国が資金や物資の援助を行っています。

これらの支援は、ウクライナの子どもたちが未来への希望を失わないための、世界からのメッセージなのです。

子供達の1日の過ごし方

ウクライナの子どもたちの「一日」は、私たちが想像する以上に過酷なものです。

ある子どもの一日(例)

  • 朝 起床。オンライン授業の準備をする。
  • 午前 パソコンの前に座り、オンライン授業を受ける。突然、空襲警報のサイレンが鳴り響く。授業は中断され、家族と一緒に家の地下室や避難所へ急ぐ。
  • 警報解除後 授業が再開される。集中力を保つのはとても難しい。
  • 昼 簡単な昼食。
  • 午後 再び授業。停電でインターネットが切れてしまうこともある。
  • 放課後 以前のように友達と外で思いきり遊ぶことは難しい。家の中で過ごす時間が長い。爆撃で破壊された公園や遊び場も多い。
  • 夜 宿題をする。いつまた警報が鳴るか分からない不安の中で眠りにつく。

このように、彼らの日常は常に不安と隣り合わせです。しかし、そんな中でもオンラインで友達と顔を合わせる時間、先生との会話が、彼らにとってかけがえのない心の支えとなっています。

教育と社会の関係

ウクライナにとって、教育は単に知識を学ぶ場ではありません。それは「国のアイデンティティを守り、未来を築くための砦」です。

  • ウクライナ語と歴史の教育 ロシアは、占領した地域でウクライナ語の教科書を燃やし、ロシアの歴史観を押し付ける「ロシア化教育」を進めています。これに対し、ウクライナ政府は自国の言語、文化、歴史を正しく教えることを非常に重要視しています。これは、国の主権と尊厳を守る戦いでもあるのです。
  • 日常と希望の維持 戦争は子どもたちの心に深い傷を残します。学校や授業という「日常」があることで、子どもたちは心の安定を保ち、未来への希望を繋ぐことができます。教育は、社会の秩序と人々の精神を支えるインフラなのです。

国が抱える教育の課題と未来

    ウクライナの教育は、多くの深刻な課題に直面しています。

    • 学校の破壊 何千もの学校が爆撃によって破壊・損傷しました。
    • 人材の流出 多くの子どもたちと先生が、安全を求めて国内外へ避難しています。
    • 教育格差 インターネット環境やデジタル機器の有無が、学習の機会に差を生んでいます。
    • 心のケア 戦争を経験した子どもたちの心理的トラウマは計り知れず、専門的なケアが急務です。
    • 学習の遅れ 不安定な状況は、子どもたちの学力にも影響を与えています。

    これらの課題を乗り越えた先に、ウクライナの教育の新しい未来が見えてきます。

    • デジタル教育の先進国へ 戦時下の経験をバネに、世界最先端のオンライン教育システムを構築する可能性があります。
    • 強靭な教育システムの構築 どんな危機にも対応できる、しなやかで強い教育インフラの再建が進められるでしょう。
    • 平和を築く教育 戦争の痛みを知る世代が、平和の尊さを世界に伝える新しい教育を創造していくはずです。

    復興への道のりは長く険しいものですが、教育こそがその原動力となります。

    教育と文化や価値観の関係

    「不屈の精神」と歴史教育

    ウクライナの歴史は、他国からの支配や圧迫に抵抗し、独立を守り抜いてきた苦難の連続でした。特に、ソ連時代に意図的に引き起こされた大飢饉「ホロドモール」や、詩人タラス・シェフチェンコのような国民的英雄の弾圧の歴史は、教育の中で非常に重要視されています。これらの歴史を学ぶことは、「いかなる困難にも屈しない」という強い意志と、自由と独立への渇望を育みます。現在の危機的状況下で国全体が示す驚異的な抵抗力(レジリエンス)の根底には、この歴史教育によって培われた価値観があります。

    「ヴィシヴァンカ(刺繍シャツ)」に象徴される郷土愛と芸術教育

    ウクライナの伝統的な刺繍シャツ「ヴィシヴァンカ」は、地方ごとに異なる模様や色があり、それぞれが魔除けや家族の繁栄といった意味を持つ「言葉を着る」文化です。学校の美術や家庭科の授業では、こうした伝統工芸に触れる機会が多くあります。これは、子どもたちが自らのルーツや地域の文化に誇りを持ち、多様性を尊重する心を育むことに繋がっています。国の祝日や記念日に多くの人々がヴィシヴァンカを身につける光景は、教育によって育まれた郷土愛と共同体意識の表れと言えるでしょう。

    「連帯と助け合い」の文化と市民教育

    2004年のオレンジ革命や2014年のマイダン革命(尊厳の革命)など、ウクライナの現代史は市民が主体となって国を動かしてきた歴史でもあります。近年の「新しいウクライナの学校」改革では、ボランティア活動への参加を促すなど、社会の一員としての責任を自覚させる市民教育に力が入れられてきました。この教育が、現在の戦争下において、国内避難民を助けたり、兵士を支援したりといった、国民全体の自発的な助け合いや連帯の文化をさらに強固なものにしています。

    「創造性とIT立国」の背景にある理数・情報教育

    ウクライナは、世界的に見ても優秀なITエンジニアを多く輩出する「IT立国」として知られています。その背景には、ソ連時代から続くレベルの高い理数教育の伝統と、独立後の教育改革による創造性や起業家精神の育成があります。困難な状況でも新しいものを生み出そうとする姿勢や、デジタル技術を駆使して国内外と繋がり、国の現状を発信する力は、こうした教育の賜物です。

    まとめ

    私たちは、ウクライナの子どもたちが置かれている厳しい現実と、それでもなお失われない「学びへの情熱」を知りました。地下鉄の駅で、避難先の見知らぬ部屋で、彼らは教科書を開き、未来の自分を、そして祖国の未来を思い描いています。

    教育とは、暗闇を照らす希望の光です。ウクライナの子どもたちと先生たちの姿は、私たちに当たり前の日常や学べることのありがたさを教えてくれます。

    この自由研究をきっかけに、ウクライナの状況に関心を持ち続け、私たちに何ができるのかを考えてみませんか。遠い国の出来事だと切り離すのではなく、同じ時代を生きる仲間として、彼らの未来を応援し、平和な世界を共に築いていくことが、今、私たち一人ひとりに求められています。

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