世界の仕事374|動物の行動やコミュニケーションを解明し、生態系や保護に役立てる研究者!動物行動学者の観察術

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生態系や保護に役立てる研究者!動物行動学者の観察術とは?

動物行動学者は、野生動物からペットに至るまで、あらゆる生き物の行動やコミュニケーションを科学的に研究し、「なぜ、その行動をとるのか?」という謎を解き明かす専門家です。彼らの研究は、生態系の保全や、人と動物がより良く共生するための知恵として、社会に大きく貢献しています。

この仕事の最大の魅力は、人間とは異なる動物の世界のルールや法則を、世界で初めて発見できることです。鳥が歌う理由、アリが正確に行列を作る秘密、犬の感情の動きなど、私たちが普段見過ごしている動物たちの「心の声」や「隠されたルール」を、粘り強い観察と実験、そして高度な分析を通じて解き明かします。この発見は、単なる知識に留まらず、絶滅の危機にある動物をどう守るか、人と動物がより良く共生するにはどうすれば良いかという、地球規模の課題解決に直結します。動物が好きという純粋な気持ちと知的好奇心が、大きなやりがいへとつながる、魅力あふれる仕事です。

動物行動学者の仕事とは?

動物行動学者の仕事は、主にフィールドワークと実験・分析の二つに分けられます。

  • フィールドワーク(野外調査) サバンナや熱帯雨林、または海など、動物が生息する現地に長期滞在し、動物の群れに溶け込みながら、彼らの行動を詳細に観察し記録します。アフリカでチンパンジーの群れを何年も追いかけ、彼らが道具を使う様子や社会的なルール、親子のコミュニケーションを記録します。このデータから、群れの生活を理解し、保護策に役立てます。
  • 実験室での研究・分析 大学の研究室や動物園、水族館などの施設で、行動のメカニズムを解明するための実験を行います。ミツバチが巣に戻った後に行う「ダンス」の動きを記録・分析し、そのダンスが蜜源の方向と距離を仲間に正確に伝えるための「言語」であることを科学的に証明するなど、行動と環境の関係を解明します。

また、得られた研究成果は、動物園の展示方法の改善、ペットのしつけや福祉の向上、環境アセスメント(開発が動物に与える影響調査)など、幅広く応用されます。

        動物行動学者の魅力!

        1. 未だ知られていない発見の喜び
          誰も知らない動物の秘密を世界で初めて発見できることが、何よりもエキサイティングな瞬間です。「この鳥が、仲間との挨拶で翼を振る回数は、実はその日の気分によって違う!」といった、小さな発見が人類の知識を広げる大きな一歩となります。
        2. 自然と深くつながるフィールドワーク
          熱帯雨林や極地など、世界中の現場で動物と向き合い、数日から数年にわたって観察を行います。動物たちと同じ場所で生活し、彼らの生態を間近で感じる経験は、何物にも代えがたい感動があります。
        3. 社会貢献と動物保護への貢献
          絶滅危惧種の行動を理解することで、より効果的な保護計画を立て、動物の種の未来を守る活動に直接貢献できます。パンダやコウノトリなどの繁殖や、自然に戻すための訓練に、あなたの知識が活かされます。
        4. 国際的な活躍のチャンス
          動物行動学は世界共通の学問です。海外の研究者と協力したり、国際学会で自分の研究を発表したりする機会が多く、世界を股にかけて活躍できます。論文が世界中で読まれ、地球規模の研究の一端を担うことができます。
        5. 平均的な年収・報酬
          日本の大学や公的な研究機関に所属する研究者としての平均的な年収は、経験や役職によりますが、約400万円〜600万円程度が目安とされています。専門的な知識と経験を積み、大学の教授や公的機関の責任者といった安定した地位を得ることで、高い報酬を得ることが可能です。

        動物行動学者になるには?

        ステップ1 動物の行動を深く観察する習慣をつけよう!

        「あなたが飼っているペットは、遊んでほしい時と眠い時で、体のどの部分の動きが一番違うかな?」まずは身近な動物から観察を始めましょう。彼らの行動を記録し、次に何をしようとしているかを予測する習慣が、動物行動学の第一歩です。

        ステップ2 大学・大学院で専門的な知識を身につけよう!

        「生物学、心理学、統計学の中で、どの学問分野に特に強い興味がある?」動物行動学は、生物学を基盤としますが、行動の背後にあるメカニズムを探るには、心理学や、大量のデータを扱うための統計学の知識が不可欠です。大学院(修士・博士課程)まで進学することが一般的です。

        ステップ3 研究室に飛び込み、実践的なスキルを磨こう!

        「どんな動物の、どんな行動に関する研究に、まず携わってみたいですか?」実際に大学の研究室に入り、指導教員のもとで、フィールドワークや実験の手法、論文の書き方など、専門的な技術を徹底的に学びます。これが研究者としてのキャリアをスタートさせる上で最も重要です。

        ステップ4 海外の研究や学会に積極的に参加しよう!

        「英語などの外国語で、あなたの研究の面白さを世界の人に説明できるかな?」国際学会で自分の研究を発表したり、海外の大学に短期留学したりして、世界の研究者とネットワークを築きましょう。国際的な視点と発信力が求められます。

        ステップ5 論文を発表し、専門家としてのキャリアを確立しよう!

        「あなたの研究は、世界で初めての発見ですか?その根拠は何ですか?」自分の研究成果を査読付きの学術雑誌に発表し、専門家としての実績を積み重ねます。この実績と評価が、大学や研究機関の専任ポスト(職)を得るための鍵となります。

        この分野で有名なプロフェッショナル

        コンラート・ローレンツ博士

        世界的な動物行動学の発展に最も大きな影響を与えた人物の一人に、オーストリアのコンラート・ローレンツ博士(1903-1989)がいます。彼は、ガチョウやカモのヒナが、卵から孵化して最初に見た動くものを親として認識し、追いかけるようになる現象、「刷り込み(インプリンティング)」を発見したことで有名です。ローレンツ博士は、ヒナたちに親代わりとして慕われる自身の姿を、ユーモアを交えながら『ソロモンの指環』などの著書で紹介し、動物行動学を一般の人々にも広く紹介しました。彼の研究は、動物の行動が生まれつき持っている部分(本能)と、生まれてからの学習による部分に分けられることを科学的に示し、1973年にはニコラス・ティンバーゲン、カール・フォン・フリッシュと共にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。

        マーケィングの観点から見ると?

        動物行動学者は、将来的に「地球の未来の管理者」としての役割を担います。地球温暖化や環境破壊が進む中、多くの動物が絶滅の危機に瀕しており、国境を越えた協力が不可欠です。この学問の知見がなければ、人間は絶滅危惧種の行動や生態を理解できず、効果的な保護策を講じることはできません。

        例えば、動物の群れの行動パターンを解析する技術は、近年、AIやロボット技術と融合し、災害時の避難誘導システムや、自動運転車の交通制御など、人間社会の新しいシステム作りにも応用され始めています。動物の知恵から学び、地球環境と人類の生活をより豊かにする、非常にグローバルで希望に満ちた仕事です。

        自由研究の例

        動物行動学者の仕事をもっと知りたいあなたに、こんな自由研究はいかが?

        テーマ  「うちのペット(または近所の鳥)の行動の記録係になろう!」

        ステップ1 観察する動物と行動を決める!

        「あなたは、誰のどんな行動を一番知りたいですか?(例:犬の尻尾の動き、ベランダに来るスズメの鳴き声)」対象を一つに絞り、「遊んでいる時」「ご飯を食べている時」「知らない人が来た時」など、観察する状況も明確にしましょう。

        ステップ2 観察ノート(エトグラム)を作ろう!

        「動物の行動を『客観的』に記録するために、どんな項目が必要ですか?」「行動の時刻・状況」「動物の体の動き(具体的な描写)」「聞こえた音(具体的な描写)」の3つをセットにして、見たままを記録します。「喜んでいる」ではなく、「尻尾を左右に素早く振った」と書くのがプロの技です。

        ステップ3 行動に「意味」があるか仮説を立ててみよう!

        「その行動の直後に、動物や周りの環境にどんな変化が起きましたか?」記録を分析して、「あの高い鳴き声は、いつも猫が窓の外を見た直後に出ている!」といった法則性を見つけ、「〜という行動は、〜という目的のために行われるのではないか」という仮説を立ててみましょう。

        ステップ4 実験で仮説を試してみよう!

        「その行動を引き起こす『原因』と思われるものを少し変えたら、行動は変わりますか?」例:「いつも同じおもちゃにだけ興奮する」という仮説があれば、色や形だけが違う新しいおもちゃを試してみましょう。結果を記録し、仮説が正しかったか検証します。

        まとめ

        動物行動学者は、世界中の生き物たちが持つ「命の哲学」を解読する探偵のような存在です。彼らの地道で粘り強い観察と高度な分析から生まれる知識は、動物たちの未来を守る保全に役立つだけでなく、私たち人間が、群れで生きる上での社会性や、環境との関わり方を再認識する助けにもなります。もしあなたが、小さな生き物の動きに「どうして?」という疑問を感じたり、動物と話ができたらと考えたりすることがあるなら、動物行動学者の仕事はまさにあなたにぴったりの道かもしれません。さあ、あなたも「観察」という最高の道具を手に、動物たちの驚くべき世界を解き明かす旅に出かけましょう!

         

        関連書籍

         

        身近な仕事について考えてみよう!

        • 仕事のことを通じて学んだこと、楽しかったこと、難しかったことを書いてみましょう。
        • テーマについての新しい発見や、自分が感じたことをまとめます。
        • 今後、さらに調べてみたいことや、他の人に教えたいことがあれば、それも書いてみましょう。

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