今回のテーマ
「家庭で使われる食品包装の素材ごと(プラスチック、紙、バイオ素材など)の分解速度を比較してみよう」
この自由研究のテーマは、私たちが普段何気なく捨てている「食品包装の素材」が、どれくらいの速さで自然に還るのかを比較することです。
具体的には、スーパーなどで手に入る石油由来のプラスチック(お弁当の容器、レジ袋など)、紙(パンの袋や箱)、そしてバイオマス素材や生分解性プラスチックなど、さまざまな食品包装素材を集めます。それらを同じ環境下(土の中など)で経過観察し、「分解」の速さを視覚的に確認します。分解とは、微生物などの働きによって、物質が水や二酸化炭素といった小さな分子レベルにまで変わっていくプロセスのことです。この実験を通じて、素材によって分解にかかる時間に大きな差があることを理解し、環境問題への意識を高めます。
自由研究の目的
地球規模で問題となっている海洋プラスチック問題や地球温暖化は、私たちが消費し、排出した「ゴミ」と深く関わっています。特に、食品包装のような使い捨てのプラスチックは、その多くが自然界で分解されにくく、数百年単位で残り続けると言われています。
この研究は、私たちが毎日行っている「消費」と「廃棄」の行動が、未来の地球にどのような影響を与えているのかを、実験を通してリアルに感じ、考えるきっかけを与えてくれます。素材ごとの分解速度を知ることは、私たちが環境に配慮した選択をするための、大切な知識となります。私たちが「選ぶ責任」を持つために、この研究は非常に重要です。
自由研究のゴール
- ステップ1 基本のゴール(初級)
まず、異なる素材、例えば石油由来プラスチックと紙を土の中に埋め、数週間の間に生じる物理的な変化(色、形、硬さなど)を記録・比較できるようにしましょう。そして、最も変化が大きかった素材と、ほとんど変化がなかった素材を特定し、その理由を推測することが目標です。
- ステップ2 チャレンジのゴール(中級)
次に、比較対象に「生分解性プラスチック」や「バイオマス素材」の包装を加えて、石油由来のプラスチックとの分解速度を比較してみましょう。さらに、分解を促進・抑制する環境要因(例として、湿度の高い場所と乾燥した場所)を変えて実験し、温度や湿度が分解速度にどう影響するかを考察できれば、一段階レベルアップです。
- ステップ3 究極のゴール(上級)
最終的に、観察結果と環境要因(温度、湿度など)をグラフ化し、論理的な分解メカニズムの仮説を立てることが目標です。分解された後の物質が、本当に水と二酸化炭素にまで分解されているのか(ただ細かくなっただけではないか)について、図書館やインターネットで科学的根拠を調べ、結論づけることができれば、究極のゴール達成です。
身の回りにある食品包装素材の例
- 紙(セルロース)の例としては、パンの袋の紙部分、お菓子の箱、牛乳パックの紙層などがあります。これらは比較的速く分解されやすいですが、水分と微生物の存在が鍵となります。
- 石油由来プラスチック(ポリエチレンなど)の例としては、お弁当のフタ、レジ袋、お菓子の外袋、ペットボトルなどがあります。これらは、自然界での分解は数十年から数百年単位と非常に遅いのが特徴です。
- バイオマスプラスチックや生分解性プラスチックは、一部のエコな卵パックやカトラリー、コンビニコーヒーのフタなどに使われています。バイオマスは植物由来の成分を含み、生分解性プラスチックは特定の条件(土中、コンポストなど)で微生物によって水と二酸化炭素に分解されることを目的に作られていますが、製品によって分解速度は大きく異なります。
- 複合素材の例としては、アルミホイルを使った袋(例:ポテトチップス)などがあります。これはプラスチックと金属など複数の素材が組み合わされているため、分解しにくい構造になっています。
研究を進めるうえで、以下のポイントに注目しよう!
- 比較対象の統一 必ず同じ大きさ・重さに切り分けた素材を実験に使用します。例えば、すべての素材を5cm角に切りそろえます。
- 環境条件の統一 すべての試料に同じ土(園芸用培養土など)を使い、観察期間中、すべての試料に同じ頻度・量の水を与え、湿度の条件を等しく保ちます。また、すべての試料を同じ場所に置き、温度や日光の条件もそろえることが重要です。
- 経過観察の定点化 観察する日を決め(例:3日ごと、1週間ごと)、必ず同じアングルで写真撮影と記録を行います。記録の際には、「カビの発生」「変色」「形状の変化(崩れ、ひび割れ)」「手で触った感触」などを詳細にメモしましょう。
自由研究の進め方
- 準備 土を入れる透明な容器(ペットボトルを半分に切るなど)、土、異なる種類の食品包装素材、記録用のノートとカメラ、定規を用意します。
- 仮説を立てる 「紙が一番早く分解し、石油プラスチックは分解しないだろう」など、研究を始める前に予想を立てて記録に残します。
- 試料の準備 比較する素材を、それぞれ同じ大きさに切りそろえます。例えば、すべてを5cm角にします。
- 実験の開始 容器の底に土を敷き、その上に素材を置くか、土の中に浅く埋めます。最後に土をかぶせ、水を均一に与えます。
- 定期的な観察と記録 1週間~1カ月程度の期間、定期的に観察を行います。写真で経過を記録し、「〇日目:色あせが始まった」「〇日目:紙の角が溶けてきた」など、具体的な変化を記述します。
- 結果の整理と分析 観察結果を一覧表やグラフにまとめます。特に、変化が大きかった素材と小さかった素材について、なぜそのような差が出たのかを分析します。
- 考察と結論 立てた仮説が正しかったか、なぜその結果になったのか、素材の化学的性質(例:高分子構造、セルロースの有無)を調べて科学的な根拠を付け加え、結論づけます。
自由研究から発見したアイデア
この研究で、プラスチックが分解に時間がかかることを知ったら、その問題を解決するための未来のアイデアを提案してみましょう。
- 家庭用「分解促進ボックス」の提案 生分解性プラスチックや紙ゴミを早く分解させるために、温度と湿度が一定に保たれた「分解専用コンポスト(生ゴミ処理機)」を、家庭や学校に設置するアイデアを提案します。研究で明らかにした効率的な分解条件を基に、具体的な設計図を描いてみましょう。
- 「賞味期限付き」包装のデザイン 食品の賞味期限に合わせて分解が始まるように、包装素材の分解開始時期をコントロールする技術を提案します。例えば、賞味期限を過ぎたら包装が脆くなり始め、廃棄後に自然に還りやすくなるような「分解タイマー付き素材」を考えます。
- 環境負荷の「見える化」マークの考案 商品パッケージに、分解にかかる時間の目安(例:「自然に還るまで500年」「自然に還るまで3カ月」)を示す「分解速度ラベル」をデザインし、消費者に行動を促す仕組みを提案します。
この自由研究に関連する仕事
- 素材開発エンジニア(化学メーカー) 石油由来プラスチックに代わる、高性能で環境に優しい「生分解性プラスチック」や「バイオマス素材」を研究・開発する仕事です。持続可能な社会の実現に不可欠な役割を担います。
- 環境コンサルタント 企業や自治体に対し、ゴミの削減やリサイクルの効率化、環境負荷の低い素材への切り替えなどをアドバイスする仕事です。廃棄物処理や環境法規の専門知識が活かされます。
- パッケージデザイナー 製品の保護だけでなく、「環境に配慮した素材」を選び、分解・リサイクルがしやすい形状をデザインする仕事です。美しさと環境性能を両立させることが求められます。
まとめ
今回の自由研究は、私たちの日常生活に最も身近な「食品包装」をテーマに、目に見えないところで進行している「環境負荷」を、科学的な実験を通して浮き彫りにするものです。
石油由来のプラスチックが「分解されない」のではなく、「極めて長い時間がかかる」ことを実感できたはずです。この事実を知ることは、単なる知識ではなく、「今日、どの商品を選ぶか」「どう捨てるか」という日々の行動を変えるための第一歩となります。
素材ごとの分解速度を理解し、地球に優しい素材を選ぶことこそが、未来の美しい地球を守るための小さな一歩となるでしょう。ぜひ、観察と考察を楽しみながら、あなただけの発見を空庭に教えてください!
関連書籍
身近な仕事について考えてみよう!
- 仕事のことを通じて学んだこと、楽しかったこと、難しかったことを書いてみましょう。
- テーマについての新しい発見や、自分が感じたことをまとめます。
- 今後、さらに調べてみたいことや、他の人に教えたいことがあれば、それも書いてみましょう。