世界の教育|なぜコモロの子は二つの学校へ?インド洋の楽園で育まれる、多言語能力と助け合いの心の秘密

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教育制度の特徴

コモロの教育制度の最大の特徴は、「フランス式の現代教育」「イスラムの伝統的なコーラン教育」という、2つのタイプの学校が人々の生活に根付いていることです。

  • フランス式教育(公教育) 日本の学校制度と似ていて、小学校(6年間)、中学校(4年間)、高校(3年間)があります。授業は主にフランス語で行われ、国語、算数、理科、社会などの近代的な科目を学びます。国の公用語であるフランス語とコモロ語、そしてアラビア語も学びます。
  • コーラン教育 イスラム教の教えを学ぶための伝統的な学校です。モスク(イスラム教の礼拝堂)や個人の家で開かれ、聖典「コーラン」の暗唱やイスラムの教義、アラビア語の読み書きを学びます。こちらは宗教的な学びの場という側面が強いです.

多くの子どもたちは、この2つの学校を掛け持ちして、それぞれの知識や価値観を学んでいます。

教育方法

それぞれの学校で、学び方は大きく異なります。

フランス式の公立学校では、先生が黒板の前に立ち、教科書を使ってクラス全体に授業を進める一斉授業が基本です。しかし、教材が不足していることも多く、生徒たちは先生の話を一生懸命ノートに書き写して勉強します。

一方、コーラン学校での学びの中心は「暗唱」です。子どもたちは木の板に書かれたコーランの節を、独特の節回しで繰り返し声に出して読み、覚えていきます。年齢の違う子どもたちが一緒に学ぶことも多く、年上の子が年下の子に教える姿も見られます。

このように、コモロの子どもたちは、近代的な知識と伝統的な教えの両方を、異なる学習方法で吸収しているのです。

教育への取り組みや支援

コモロ政府は、国の発展のために教育が非常に重要であると考えており、「教育セクター計画(PSET)」といった目標を立てて、教育の質の向上に取り組んでいます。

しかし、国の力だけでは、校舎を建てたり、すべての教科書を揃えたりするのは大変です。そこで、ユニセフや世界銀行といった国際機関がコモロを支援しています。

具体的な支援には、以下のようなものがあります。

  • 校舎の建設や修復 子どもたちが安全で快適に学べる環境を整えます。
  • 教科書や学用品の提供 鉛筆やノートがなくて勉強できない子を減らします。
  • 教員の研修 先生たちがもっと分かりやすく、楽しい授業ができるようにトレーニングを行います。
  • 女子教育の推進 女の子も男の子と同じように学校に通い続けられるような活動をしています。

これらの支援によって、コモロの教育は少しずつ改善されています。

子供達の1日の過ごし方

コモロの子どもの一日は、とても忙しいです。ある男の子の一日を例に見てみましょう。

  • 朝6:00 起床。ニワトリの鳴き声とともに一日が始まります。学校へ行く前に、井戸へ水を汲みに行ったり、家畜のヤギの世話をしたりと、家の手伝いをします。
  • 朝7:30 フランス式の公立学校へ登校。友達とおしゃべりしながら歩いて向かいます。授業は午前中が中心です。
  • 昼12:00 いったん家に帰り、家族と昼食。コモロでは、バナナやイモ、お米、魚などをよく食べます。
  • 午後2:00 今度はコーラン学校へ。木の板を使って、コーランの勉強をします。
  • 夕方4:00 勉強が終わり、帰宅。再び家の手伝い(畑仕事や漁の手伝いなど)をしたり、友達とサッカーをしたりして過ごします。電気がない家も多いため、暗くなる前に夕食と宿題を済ませます。

このように、勉強だけでなく、家族の一員としての役割もこなしながら、たくましく一日を過ごしています。

教育と社会の関係

コモロ社会において、教育は「より良い未来へのパスポート」だと考えられています。

読み書きや計算ができるようになれば、より良い仕事に就くチャンスが増え、貧困から抜け出すきっかけになります。特に、女の子が教育を受けることは、若すぎる結婚を防いだり、将来自分の子どもができた時に、健康や栄養に関する正しい知識を持てたりと、家族全体の生活を向上させる力を持っています。

しかし、高校や大学を卒業しても、国内に働く場所が少ないという問題もあります。そのため、学んだ知識を活かせる産業を国内で育てていくことが、今後の大きな課題となっています。

国が抱える教育の課題と未来

    多くの可能性を秘めるコモロの教育ですが、まだまだたくさんの課題を抱えています。

    • 教員の不足と質 先生の数が足りなかったり、十分なトレーニングを受けていなかったりすることがあります。
    • 施設の老朽化と教材不足 古くて壊れそうな校舎や、生徒の数に対して足りない教科書が問題となっています。
    • 高い中退率 家計を助けるために、学校を途中で辞めて働かなくてはならない子どもたちが多くいます。特に中学校に進学する割合はまだ高くありません。
    • 都市と地方の格差 都市部に比べて、地方の村では教育環境が整っていないことが多いです。

    しかし、コモロ政府と国際社会は、これらの課題を乗り越えようと協力し合っています。未来に向けて、すべての子どもたちが質の高い教育を受けられるように、そして学んだことを活かして国の未来を創っていけるように、努力が続けられています。

    教育と文化や価値観の関係

    強い共同体意識と相互扶助の精神

    コーラン学校は、同じ地域に住む様々な年齢の子どもたちが一緒に学ぶ場です。年上の子が年下の子に教えるのは当たり前の光景で、この経験を通して自然と共同体意識や助け合いの精神が育まれます。イスラムの教えに基づく「ウンマ(イスラム共同体)」という考え方も社会に根付いており、困っている人がいれば地域全体で支え合う文化につながっています。

    伝統と近代を両立させる柔軟な価値観

    午前はフランス式の学校で科学や民主主義を学び、午後はコーラン学校でイスラムの教えや伝統を学ぶ。この日常が、伝統的な価値観と近代的な価値観を自然に両立させるコモロ人ならではの柔軟性を生み出しています。例えば、日常生活ではスマートフォンを使いこなしながら、結婚式(グラン・マリアージュ)のような人生の節目では、イスラムの教えに則った古くからの盛大な儀式を何日もかけて行います。

    多言語が当たり前のコミュニケーション能力

    家庭ではコモロ語、公教育やビジネスではフランス語、宗教儀礼ではアラビア語と、多くの子どもたちが幼い頃から3つ以上の言語に触れて育ちます。これにより、複数の言語を巧みに操る高いコミュニケーション能力が養われます。これは異なる文化を持つ人々への寛容さにもつながり、アフリカ、ヨーロッパ、アラブ世界との交流の架け橋となる素地を育んでいます。

    「記憶」と「語り」を重んじる口承文化

    コーラン学校での「暗唱」を中心とした学習は、文字に頼るだけでなく、物事を正確に記憶し、声に出して伝える能力を非常に重要視します。この影響で、コモロでは歴史や家系の物語、教訓などを語り継ぐ「口承文化」が今も大切にされています。長老たちの語る言葉に重みがあり、人々がそれに熱心に耳を傾けるのも、こうした教育的背景が影響していると言えるでしょう。

    まとめ

    インド洋に浮かぶ島国コモロでは、子どもたちが「フランス式の現代教育」と「イスラムの伝統教育」という2つの学びをたくましく受け入れながら、日々を過ごしています。

    たくさんの課題を抱えながらも、より良い未来を信じて学ぶ彼らの姿は、私たちに多くのことを教えてくれます。私たちが当たり前だと思っている学習環境のありがたさや、世界には本当に多様な学びの形があるということを、この自由研究を通して感じてもらえたら嬉しいです。

    コモロという国をキーワードに、世界の教育についてさらに探求してみませんか?

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