巨大な船を動かす航海士と船舶エンジニアとは?
航海士と船舶エンジニア(機関士)は、世界中の人々の暮らしや経済を支える巨大な船を動かす「海のプロ」です。航海士は航路を選び安全に船を導き、エンジニアは船の心臓であるエンジンや機械を守ります。二つの専門職が協力し、世界の安全な航海を担う、国際社会になくてはならない重要な仕事です。
この仕事の最大の魅力は、地球規模の壮大なスケールで活躍できることです。数ヶ月にわたる航海を通じて世界中の港に寄港し、ヨーロッパの歴史的な街並みやアジアの活気ある市場など、多様な文化や景色に出会うことができます。
また、現代の船は、衛星通信や自動操舵システム、高性能レーダーなど、最先端のハイテク技術の塊です。これらの機器を使いこなし、全長が東京タワーよりも長い巨大な船を思い通りに動かすダイナミズムは格別です。そして、航海の途中でトラブルが発生したとき、国籍や年齢が異なる仲間と協力して問題を解決したときには、最高のチームワークの達成感を得ることができます。
航海士と船舶エンジニアの仕事とは?
航海士と船舶エンジニアは、船の安全な運航のために、それぞれ異なる役割を担っています。
航海士(海の操縦士・計画者)
航海士は、船の運航計画を立て、実際に船を操縦する役割です。 具体的な仕事の例として、航海計画の立案があります。気象情報や海の状況(海象)をもとに、最も安全で効率的なルートを考え、航海の計画を立てます。また、航海当直では、GPSやレーダーなどの航海計器を使って船の位置や進路を常に監視し、他の船との衝突を避けるための操縦指示を出します。港に入るときや出るとき(出入港時)の船の操縦も担当します。
船舶エンジニア(機関士・海の技術者)
船舶エンジニアは、船の心臓部であるエンジンや、発電機、ボイラーなどの機械を管理し、常に正常に動くように守る役割です。 具体的な仕事の例としては、機関室内の機器の監視と整備があります。航海中は、エンジンなどの運転状況を監視し、音やにおい、温度など五感をフルに使って小さな異常も見逃さないようにします。また、燃料や油の管理、そして航海中のトラブル発生時には、原因を突き止め、船の航行を止めないように迅速に修理対応を行う、まさに「海のメカニック」です。
航海士と船舶エンジニアの魅力!
- 世界中があなたの職場になる!
数ヶ月の間に、アメリカ、ヨーロッパ、アジアなど、地球上のさまざまな場所を巡ります。これはまるで、仕事をしながら世界一周旅行をしているようなものです。仕事で世界中の文化に触れられるのは、この仕事ならではの特権です。 - 高い報酬と安定性
専門的な知識と高度な技術、そして長期間家を離れるという責任があるため、給料は一般的に高く設定されています。特に世界を股にかける外航船の場合、経験を積んだ航海士やエンジニアは、平均的な年収が1000万円以上になることも珍しくありません。これは、若いころから経済的に自立したい人にとって大きな魅力です。 - 巨大な船を動かすダイナミズム
全長300メートルを超えるような巨大な船を、レーダーや最新の機器を駆使して思い通りに操縦する。そのダイナミックな体験と、無事に目的地に着けた時の達成感は、他の仕事では味わえません。 - 未来の物流を支える誇り
私たちの生活に必要な石油、食料、スマートフォンや自動車の部品など、世界中の貿易の約9割は船で運ばれています。あなたが一隻の船を動かすことで、世界中の人々の生活を支えているという大きな社会貢献の誇りを感じることができます。 - 最先端の技術を駆使する
現代の船には、自動航行システムや、地球環境に配慮した省エネ型のエンジンなど、最新のIT技術や機械工学が詰め込まれています。常に新しい技術に触れ、学び続けることができる、知的好奇心を満たす仕事でもあります。
航海士と船舶エンジニアになるには?
「海のエキスパート」になるための学校を選ぶ!
この仕事に就くには、まず船を動かすための専門知識と技術を学ぶ必要があります。商船系の高等専門学校や大学など、海事教育機関への進学を考えましょう。「船の仕事について教えてくれる学校って、近くにあるのかな?」
国家資格「海技士免許」のための実習を積む!
学校での座学と並行して、実際に練習船に乗って海の上で働く「乗船実習」を行います。これが、船のプロになるために必要な「乗船履歴」を積むための重要なステップです。
海技士国家試験に合格する!
船の大きさや航行区域によって1級〜6級まである「海技士国家試験」に挑戦します。航海士は「海技士(航海)」、エンジニアは「海技士(機関)」の免許が必要です。「試験の勉強は、どんな科目を頑張る必要があるんだろう?」
海運会社などの採用試験に挑戦する!
無事に免許を取得したら、貨物船やタンカーなどを運航する海運会社、または客船会社などの採用試験に合格し、プロとしての一歩を踏み出します。
船に乗り込み、経験を積み重ねてトップを目指す!
働き始めたら、三等航海士から二等、一等へとステップアップし、最終的には船全体の最高責任者である「船長(キャプテン)」や、機関部を統括する「機関長」を目指して経験を積んでいきます。
この分野で有名なプロフェッショナル
フェルディナンド・マゼラン
航海士の歴史を語る上で欠かせないのが、ポルトガル出身の探検家、フェルディナンド・マゼラン(Ferdinand Magellan)です。彼は16世紀の初め、スペイン国王の支援を受けて、香辛料の島々を目指し、ヨーロッパから西回りでアジアへ向かうという、当時の常識を覆す壮大な航海計画を立てました。
1519年に5隻の船団を率いて出航したマゼランは、南米大陸の南端にある海峡(後にマゼラン海峡と名付けられる)を通過し、それまで誰も知らなかった広大な海に到達しました。その海が穏やかであったことから、彼はその海を「太平洋(Pacific Ocean)」と名付けました。マゼラン自身は航海途中のフィリピンで亡くなってしまいましたが、彼の残した船団の一つが航海を続け、史上初となる世界一周を成し遂げました。彼の偉業は、地球が丸いことを証明し、世界の地理観を大きく変えたのです。
マーケィングの観点から見ると?
航海士と船舶エンジニアの仕事は、これからも世界の発展に欠かせない、未来を形作る仕事です。
グローバルな視点で見ると、海運は地球上の貿易の約9割を支える「大動脈」です。発展途上国が豊かになるためにも、エネルギーや食料を安定して運ぶ船の存在は不可欠です。
将来、この仕事は、AIやIoT(モノのインターネット)技術によって進化します。自動運転船の開発が進む一方で、航海士とエンジニアは、複雑な事態に対する最終的な判断や、最先端機器の管理・メンテナンスという、人間にしかできない高度な役割を担うようになります。
また、地球温暖化対策として、環境に優しい新しい燃料(水素、アンモニアなど)を使う船の開発が進んでいます。船舶エンジニアは、これらの次世代のエンジン技術を学び、船に導入し、クリーンな海運を実現する環境の守り手としての重要な役割も果たします。この仕事は、世界の経済と環境保護の両方を担う、サステナブルな未来のキーパーソンとなるでしょう。
自由研究の例
自由研究テーマ 「巨大な船はなぜ沈まない? 海のプロの秘密を探る!」
ステップ1 船の種類を図鑑やインターネットで調べてみよう!
- 「世界にはどれくらいの種類の船があって、それぞれどんなものを運んでいるんだろう?」
- コンテナ船、タンカー、豪華客船など、運ぶものや目的によって船の形や仕組みがどう違うのかを絵や図にしてまとめましょう。
ステップ2 自分の生活と船のつながりを見つけよう!
- 「身の回りにある『外国から来たもの』を5つ見つけて、どんな船で運ばれてきたか予想できるかな?」
- スマートフォンや服の材料、バナナなどの食べ物など、身近なものが海を渡ってきている証拠を探し、もし船が動かなくなったら私たちの暮らしはどうなるかを想像してレポートにしてみましょう。
ステップ3 航海の道具と浮力の秘密を調べよう!
- 「GPSやレーダーがなかった時代、航海士はどうやって広い海で道に迷わなかったんだろう?」
- 航海士が使う「海図」や、星の位置から場所を測る「六分儀(ろくぶんぎ)」などの道具について調べましょう。また、小さな船は浮くのに、鉄でできた巨大な船が浮く「浮力の秘密」を、水に浮かぶおもちゃを使って実験してみるのも面白いです。
まとめ
航海士と船舶エンジニアの仕事は、スケールの大きな夢と、世界を支える責任を同時に感じられる、地球上で最もダイナミックな仕事の一つです。船の上では、広い海原を舞台に最先端の技術を駆使し、国籍を超えた仲間と共に、数々の困難を乗り越えていきます。もしあなたが、機械いじりが好きで、新しい世界を見てみたい、そして人々の生活を支える大きな役割を担いたいという情熱を持っているなら、この「海のプロ」という道は、あなたを最高の冒険へと導いてくれるでしょう。世界と未来をつなぐ、壮大な航海に出発してみませんか?
関連書籍
身近な仕事について考えてみよう!
- 仕事のことを通じて学んだこと、楽しかったこと、難しかったことを書いてみましょう。
- テーマについての新しい発見や、自分が感じたことをまとめます。
- 今後、さらに調べてみたいことや、他の人に教えたいことがあれば、それも書いてみましょう。