教育制度の特徴
カーボベルデの教育は、アフリカの中でも高い水準にあると言われています。その大きな特徴は、義務教育の徹底です。
- 義務教育 6歳から14歳までの8年間が義務教育で、そのうち6歳から12歳までの初等教育は無料で受けられます。
- 高い就学率 国民の教育への関心は非常に高く、初等教育の就学率は90%近くに達しています。
- 識字率の高さ 国民全体の識字率も90%以上と、アフリカ諸国の中でもトップクラスです。
- 女子教育の推進 女子の教育にも力を入れており、大学では卒業生の3分の2を女性が占めるというデータもあります。
旧ポルトガル領だった歴史から、教育制度もポルトガルの影響を強く受けており、ヨーロッパとアフリカの文化が融合した独自の教育システムを築いています。
教育方法
カーボベルデの教育は、伝統的に「座学」が中心でした。先生が黒板に書いたことを生徒がノートに書き写す、という日本の昔の授業風景に似ているかもしれません。しかし、近年では子どもたちの創造性を育むため、新しい教育方法も取り入れられ始めています。
- STEAM教育の導入 科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、芸術(Art)、数学(Mathematics)を統合的に学ぶ「STEAM教育」に力を入れています。ロボットキットを使ったり、プログラミングを学んだりする機会を通じて、子どもたちが自らのアイデアを形にする力を養っています。
- 文化教育 首都プライアにあるジャン・ピアジェ大学は、単なる大学ではなく、地域の文化センターとしての役割も担っています。博物館や文化センターでは、カーボベルデの歴史や文化を学ぶワークショップが開かれ、子どもたちは自国のルーツに触れる機会を得ています。
教育への取り組みや支援
カーボベルデ政府は、教育の質の向上と機会の平等のために、様々な国や機関からの支援を受けながら取り組みを進めています。
- 国際協力
- ブラジル 初の公立大学設立にあたり、ブラジルから教授陣が派遣され、現地の教員へのトレーニングが行われました。
- 日本 日本政府は、視覚障害を持つ子どもたちのための点字機材の整備を支援するなど、特別なニーズを持つ子どもたちへの教育支援も行っています。
- ICT教育の推進 インターネット環境の整備も進んでおり、国民の70%がインターネットにアクセス可能です。このインフラを活用し、都市部と地方の教育格差をなくすための遠隔教育なども視野に入れています。
子供達の1日の過ごし方
カーボベルデの子どもたちは、学校での勉強はもちろん、放課後も様々な活動をして過ごします。
- 午前/午後 学校の授業を受けます。
- 放課後
- 家庭の手伝い 特に女の子は、家の水汲みや幼い兄弟の面倒を見るなど、母親の手伝いをすることが期待されています。
- 文化活動 首都などでは、文化センターで伝統的なダンスや太鼓のワークショップに参加することもあります。
- 自然とのふれあい 美しいビーチで遊んだり、起伏に富んだ内陸部を散歩したりと、豊かな自然の中で過ごす時間もたくさんあります。
- 博物館めぐり 民族学博物館や考古学博物館で、自分たちの国の歴史や文化について学びます。
教育と社会の関係
教育は、カーボベルデの社会を支え、未来を形作る上で非常に重要な役割を担っています。
- 人材育成と経済発展 高い教育水準は、国の経済発展を支える人材を育成する土台となります。特に、観光業が主要産業であるカーボベルデにとって、外国語能力やホスピタリティ精神を身につけた人材は不可欠です。
- 社会的格差の是正 政府は、教育を通じて貧困の連鎖を断ち切り、すべての国民が平等な機会を得られる社会を目指しています。
- 民主主義の基盤 国民が高い識字率と教育水準を持つことは、安定した民主主義国家を維持するための重要な基盤となっています。
国が抱える教育の課題と未来
高い教育水準を誇るカーボベルデですが、いくつかの課題も抱えています。
- インフラの不足
- 学校施設の不足 特に中学校や高校の数がまだ少なく、遠くの学校に通わなければならない子どもたちがいます。通学のための交通手段や寄宿舎の不足も問題です。
- 衛生設備 すべての学校に清潔なトイレや水道が完備されているわけではありません。
- 教育の質の地域格差 多くの島からなる国のため、都市部と地方、島ごとの教育環境に差があります。教員の質や教科書の普及率なども課題の一つです。
- 経済的な問題 義務教育は無料ですが、制服代や学用品、遠距離通学の交通費などが家計の負担となり、学校に通えなくなる子どももいます。
- 若年妊娠による退学 若くして妊娠・出産した女子生徒が学校を辞めてしまうケースもありますが、政府は妊娠中の生徒が学業を続けられるような支援にも取り組んでいます。
これらの課題に対し、カーボベルデはICT(情報通信技術)の活用や国際社会との連携を強化することで、より質の高い、公平な教育の実現を目指しています。安定した政治と高い教育レベルを武器に、西アフリカの「テックハブ」となる可能性も秘めているのです。
教育と文化や価値観の関係
「ソダーデ(Sodade)」の共有と音楽文化の継承
カーボベルデの音楽「モルナ」の根底には、「ソダーデ」という言葉に表される独特の感情があります。これは、遠い故郷や離れた恋人を思う「郷愁」「思慕」「憧憬」といった複雑な感情です。歴史的に多くの国民が移民として国を離れざるを得なかった背景から生まれました。教育の中で自国の歴史や文学、音楽を学ぶことで、子どもたちはこの「ソダーデ」の感覚を共有し、国民としてのアイデンティティを形成します。歌手セザリア・エヴォラが世界に広めたこの感情は、教育を通じて世代から世代へと受け継がれる国民的な文化遺産となっています。
クレオール文化への誇りと国際性の両立
公用語はポルトガル語ですが、人々の日常会話ではアフリカの言語とポルトガル語が融合した「カーボベルデ・クレオール語」が使われます。学校教育ではポルトガル語を学びながらも、家庭や地域ではクレオール語で育ちます。この二言語環境が、自分たちはアフリカとヨーロッパの文化が交わる場所にいるという独自のアイデンティティを育みます。教育によって世界標準の知識(ポルトガル語)を身につけ、海外でも活躍できる国際性を持ちながら、クレオール文化という自分たちのルーツに強い誇りを持つ、しなやかな国民性を形作っています。
「ディアスポラ(離散した民)」としてのグローバルな連帯感
人口よりも多くのカーボベルデ人が海外(アメリカ、ポルトガル、フランスなど)で暮らしており、彼らは「ディアスポラ」と呼ばれます。高い教育を受けた人材が海外で成功し、母国に送金することで経済を支える重要な役割を担っています。教育は、海外で成功するための「パスポート」であると同時に、離れていても「自分はカーボベルデ人である」という強い絆を保つための基盤となります。国を離れていても母国を思い、貢献しようとする価値観は、教育によって育まれた郷土愛の表れと言えるでしょう。
女性の自立と社会進出を尊ぶ価値観
歴史的に男性が漁や移民で家を空けることが多かったため、カーボベルデでは女性が家庭と地域社会の中心的な役割を担ってきました。この伝統的な背景に加え、国が女子教育を推進してきた結果、大学卒業生の多くを女性が占めるなど、女性の社会進出が非常に進んでいます。教育を受けた女性が社会の様々な分野でリーダーシップを発揮することは、国全体の価値観として自然に受け入れられており、男女間の格差が少ない社会の実現につながっています。
まとめ
大西洋の島国カーボベルデは、「教育こそが国の未来を作る」という強い意志のもと、国全体で教育の発展に取り組んでいます。豊かな自然と多様な文化に囲まれながら、子どもたちは未来への夢を育んでいます。私たちも、カーボベルデの挑戦から、教育の大切さや、困難を乗り越えて未来を切り拓くことの重要性を学ぶことができるのではないでしょうか。
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