未来の建築をつくる!サステナブル建材開発者とは?
サステナブル建材開発者は、地球環境に優しく、持続可能な社会を支える新しい建築材料の研究・開発・実用化を目指す仕事です。地球温暖化の原因となるCO2排出量を抑えたり、廃棄物や再生可能な資源を有効活用したりする素材を生み出します。未来の都市やインフラを「素材」から支える、科学とものづくりの最前線に立つ、非常に重要な役割を担っています。
この仕事の最大の魅力は、地球規模の課題解決に直接貢献できることです。現代の建築は大量のCO2を排出し、多くの天然資源を消費しています。サステナブル建材開発者は、この問題を解決する「鍵」を握っています。例えば、CO2を閉じ込めるコンクリート、廃棄プラスチックから生まれた高強度パネル、植林された木材を最先端技術で強化した新素材など、革新的なアイデアを形にしていきます。
自分の研究室や工場で開発した小さなサンプルが、やがて世界中の建物や橋、道路に使われ、何十年、何百年と未来の景色を作り続けることは、何物にも代えがたい大きなやりがいです。科学、工学、デザイン、環境保護など、幅広い知識を駆使し、不可能を可能にする創造性と達成感を得られる、夢のある仕事です
サステナブル建材開発者とは?
サステナブル建材開発者は、単に「環境に良い」材料を作るだけでなく、「性能が高い」材料を作ることを目指します。具体的な仕事は、主に以下の3つのパターンに分かれます。
- 既存材料の革新(例:CO2コンクリート)
最も使われている建材であるコンクリートは、製造時に大量のCO2を排出します。開発者は、排出されたCO2を材料のなかに閉じ込めて固める「CO2固定化コンクリート」を研究しています。これは、建材が逆にCO2を減らす役割を果たすという、画期的な逆転の発想です。 - 再生可能資源の高性能化(例:強化木材)
木材や竹は再生可能な資源ですが、火に弱く、強度や耐久性に課題がありました。開発者は、木材を特殊な樹脂やナノテクノロジーで加工し、鉄骨のように強く、コンクリートのように燃えにくい、ハイブリッドな高性能木材を生み出しています。 - 廃棄物・副産物の再利用(例:アップサイクル建材)
建設現場から出るゴミや、工場の副産物(例:製鉄所のスラグ)を、そのまま捨てるのではなく、新しい断熱材や内装材、タイルなどに加工し直します。ゴミを高付加価値な資源へと変える、資源循環の仕組みを作っています。
サステナブル建材開発者の魅力!
- 地球規模の課題解決に貢献できる
地球温暖化や資源の枯渇は、世界中の人が取り組むべき大きな課題です。サステナブル建材開発者の仕事は、この課題を解決する手段そのものであり、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に直接貢献します。あなたは、未来の子供たちが安心して暮らせる環境を残すための、正真正銘のヒーローなのです。 - 革新的なアイデアを形にする創造性
「世界にまだ存在しない素材」を発明するのが、この仕事の醍醐味です。誰もが諦めていた廃材を使って、誰もが驚くほど美しいタイルを生み出したり、生きている微生物の力でひび割れを自ら直すコンクリートを作ったり。あなたの自由な発想が、科学技術と結びつき、世界をあっと言わせるイノベーションになります。 - 専門職としての高い年収と報酬
サステナブルな開発は、世界的なトレンドであり、企業や国からの投資が活発です。高度な専門知識と技術が求められるため、一般的な職業に比べて高い年収が期待できます。日本の大手建設材料メーカーや研究機関の研究開発職の場合、経験や専門性によりますが、平均年収は600万円から1,000万円以上になることも珍しくありません。また、海外のグローバル企業で活躍すれば、さらに高額な報酬を得るチャンスもあります。 - 自分の「作品」が未来に残る
ファッションデザイナーが服を作るように、建材開発者は「都市の服」を作ります。あなたが開発した建材が使われた建物は、何十年、何百年と街に残ります。例えば、新国立競技場や地域の新しい図書館など、多くの人々の生活を支えるランドマークに、あなたの発明が組み込まれる可能性があります。 - 世界の専門家と協力するグローバルな活躍の場
気候変動の問題は、一国だけで解決できるものではありません。常に世界の研究者や建築家と協力し、知識を交換します。海外の国際会議で自分の研究を発表したり、途上国のニーズに合わせて材料を改良したりと、グローバルな視点とコミュニケーション能力が磨かれる仕事です。
サステナブル建材開発者になるには?
ステップ1 好奇心を育てる
科学やものづくりへの興味を深め、身の回りの「素材」に疑問を持つ習慣をつけましょう。なぜこのコップは透明なのか? このブロックはなぜこんなに硬いのか? を考えることから始まります。
身の回りにある「すごい素材」を見つけて、どうやって作られているか調べてみませんか?
ステップ2 理系科目を徹底的に学ぶ
中学校・高校では、化学、物理、数学をしっかりと学びましょう。特に「化学」と「物理」は、新しい材料の性能や構造を理解するための土台となります。
ステップ3 大学で専門を究める
大学では、材料工学、化学、応用化学、建築学などの学科に進学します。特に材料工学は、金属、セラミックス、高分子(プラスチックなど)など、幅広い素材について専門的に学べます。
ステップ4 研究室と実践で経験を積む
大学4年生や大学院では、興味のある研究室に入り、実際に材料開発の実験に取り組みます。企業のインターンシップに参加し、現場での開発プロセスを学ぶことも大切です。
今、世界で最も注目されている「サステナブルな素材」は何だと思いますか?
ステップ5 専門職として開発チームに参加
卒業後、建築材料メーカー、化学メーカー、大手建設会社の研究開発部門、または公的な研究機関などに就職します。最初は先輩のもとで経験を積み、やがてあなたがリーダーとして新しい素材のプロジェクトを率いることになります。
この分野で有名なプロフェッショナル
Dr. Henk Jonkers(ヘンク・ヨンカース博士)
サステナブル建材開発の分野で世界的に有名な一人が、オランダのデルフト工科大学のヘンク・ヨンカース博士です。彼の最も偉大な功績は、「自己修復コンクリート(Self-Healing Concrete)」の発明です。
ヨンカース博士は、コンクリートのひび割れが建物の劣化を早め、メンテナンスに多大な費用と資源がかかるという問題に注目しました。そこで彼は、コンクリートの材料に、特殊なバクテリアと、バクテリアの「食料」となる栄養剤(カプセル)を混ぜ込むことを考案しました。コンクリートにひびが入ると、雨などの水分が侵入し、それがきっかけでバクテリアが目を覚まします。バクテリアは栄養剤を食べ、その過程で石灰石を生成します。この石灰石が、まるで絆創膏のようにひび割れを自ら埋めて塞ぐのです。
この画期的な素材は、建物の寿命を大幅に延ばし、世界中のインフラの維持管理を変える可能性を秘めています。ヨンカース博士の挑戦は、サステナブルな未来は「化学と生物学の融合」によってもたらされることを証明しました。
マーケィングの観点から見ると?
サステナブル建材開発者の仕事は、将来的に世界のあり方を根本から変える力を持っています。
まず、途上国や貧困地域の住宅問題を解決します。現地で簡単に手に入る自然素材や、リサイクル素材を使って、安価で、しかも耐久性が高く、夏涼しく冬暖かい建材が開発できれば、世界中の人々が安全で快適な住居を手に入れられるようになります。
次に、気候変動対策の最前線となります。もし、すべての建材が「CO2を排出する」ものではなく、「CO2を吸収する」ものになれば、建物を建てる行為そのものが、地球環境を改善する行為に変わります。巨大都市全体が、二酸化炭素を吸収する巨大な森のような役割を果たすようになるのです。
さらに視野を広げると、この技術は宇宙開発にも応用されます。月面基地や火星への移住を考えたとき、地球から材料を運ぶのは非現実的です。現地の土や資源(レゴリスなど)を使い、サステナブルな方法で建材を生み出す技術は、人類が宇宙に進出するための鍵となります。地球の未来だけでなく、人類の可能性そのものを広げる、夢と希望に満ちた仕事なのです。
自由研究の例
ステップ1 調べる
あなたの家、学校、近所の建物など、身の回りの建物に使われている素材(木、コンクリート、タイル、鉄など)を観察して記録しましょう。それぞれの素材が「どこから来て」「最後はどうなるか」を調べてみましょう。
あなたの家や学校に使われている建材は、どこから来たものですか?また、ゴミになった後、リサイクルできるか知っていますか?
ステップ2 問題をみつける
ステップ1で調べた素材について、「CO2をたくさん出す」「ゴミが増える」「暑さを防げない」など、環境や生活にとって困る点を見つけ、ノートに書き出しましょう。
ステップ3 アイデアを出す
ステップ2で見つけた問題を解決するために、新しい「未来の建材」のアイデアを考えましょう。例えば、地元の特産品(米ぬか、海の貝殻など)を材料に使ってみてはどうでしょうか。アイデアをスケッチしたり、小さな模型(粘土や段ボールなど)を作ってみましょう。
もしあなたが建材を発明するなら、どんな「特別な能力」(水を吸って涼しくなる、光って電気を作るなど)を持たせたいですか?
ステップ4 まとめ・発表
調査結果と、あなたが考えた未来の建材のアイデアを、ポスターやレポートにまとめましょう。工夫した点、難しかった点、将来の目標などを発表してみましょう。
まとめ
サステナブル建材開発者とは、ただモノを作る人ではありません。それは、地球の未来をデザインし、形にする建築家です。温暖化が進む世界で、私たちはどう生きるべきか。限りある資源をどう使うべきか。その答えを、彼らはコンクリートや木材の一粒一粒に込めています。小さな研究室で生まれた一つのイノベーションが、世界中の街並みを変え、何世代にもわたる人々の暮らしをより豊かに、より安全にします。未来の建築と、地球の持続可能性は、あなたの好奇心と探求心にかかっています。今日から、身の回りの「素材」に目を向け、あなただけの未来の建材を発明する旅を始めてみませんか。
関連書籍
身近な仕事について考えてみよう!
- 仕事のことを通じて学んだこと、楽しかったこと、難しかったことを書いてみましょう。
- テーマについての新しい発見や、自分が感じたことをまとめます。
- 今後、さらに調べてみたいことや、他の人に教えたいことがあれば、それも書いてみましょう。





